『雨と君』
雨が降っても 傘も差さずに
平気で濡れてて 気になったんだ
それで風邪ひき 寝込んじゃうけど
やっぱり雨に 濡れて帰ってた
雨に濡れるの 好きだ…と言った
一人ぼっちを 忘れられると
相合傘を 誘ってみたら
雨粒が可哀想 そう言っていた
雨が嫌われ 泣かないように
君は遊んで あげてたんだね
僕も一緒に 濡れてもいいかい?
遠慮を知らず 土砂降りになった
平凡だった 日常がガラリ
きらきら輝く 特別になった
雨と君との 世界は優しい
受け入れる事の 愛を知った
『誰もいない教室』
ふざけた声や 雑音もない
夕日に染まった 並んだ机
文字が残った 黒板を見つめ
校庭の野球部の かけ声を聞いた
いつからだろう 息苦しくて
恐怖の場所なのに 懐かしいんだね
友の名前を 見つけるたびに
会いたくなってく… ぽろりと涙
進路を決める 相談をする
遅れた先生が 謝っている
なんだか年老いた 未来にも感じる
隣の母だけが 変わらずにいる
これから私は どうなるのだろう
他人事みたいで 上の空だった
私は敗者で みんなは勝者
どうやって死のうか? それだけが希望
クラスメートの いない教室
取り残された 過去へとひとり
恋した事も 確かにあった
流れ込む水流 水槽に変わる
これから私は どうなるのだろう
帰り際無理矢理 笑ってみせた
しまった…とすぐに 後悔をした
愛されたかったなぁ 生きてるうちに
『ページをめくる』
瓶の蓋を回すように
固結びをほどくように
生き辛くて俯いては
人はやっと寝るのでしょう
箪笥の裏を掃除したり
野良を見つけエサをあげて
意味も無いのに微笑みながら
人はやっと泣くのでしょう
季節を感じる余裕は無くても
大型犬ほどぺろぺろ舐める
鬱陶しいけど季節と戯れ
人はやっとページをめくる
あなたを失いガラクタが残り
生きてく方法も忘れたけれど
スーパーに並ぶ見切り品みたいに
私はやっと時間を買った
『夏の忘れ物を探しに』
早朝の涼しさに 移りゆく時を知る
また1つ歳を取る 寂しさに似た…痛み
楽しんだ人もいる 何も無い僕もいる
でも夏は此処に居た その価値は同じ…重さ
まだ暑い残暑のなか しなかったことを思う
まだやれるだろうかと 悪戯に火をつける
恋という花火がある 愛という盆もある
夏らしい食べ物で 今夜は騒ぎたい
告白のようなもの それも君に届けたい
感謝だとかありがとう それだけでも伝えたい
忘れ物…探してる 夏が去るその前に
何かしたことだけが 生きていた跡になる
『心の中の景色は』
枯れている 井戸の水
壊れそうな 古い家
割れた窓 ぬけた床
こちら見る ネズミたち
照りつける 秋の陽に
寒々と 冬の河
こわごわと 春の花
殺すほど 強い夏
どこまでも 砂の粒
遠くには 北の海
舞い上がる 砂あらし
ヘビのごとく ぬらぬらと
心には 景色がある
日によって 様変わり
息苦しい 寂しさと
ぶんなぐる この…弱さ
心の中 しがみつく
手が延びる つかもうと
この景色 血みどろに
塗り変える 君宛に