『ここにある』
百科事典はホコリをかぶり
児童文学は開かずの扉
暗闇にパソコンの光だけが生きて
私は珈琲を淹れている
強い孤独は飼いならされて
寂しいって感情は顔色をうかがう
家出をしたようにとっくに愛はいない
悲しいって涙は勝手に落ちる
生きてどうする?…… 同居の絶望
手応えが無くて壊したい衝動
愛されたかったゴミで埋まる台所
甘めのお菓子の無礼が好き
夜明けが近づき二杯目の珈琲
葬式みたいな静寂の湖
本当の自由はこの世には無くて
独房の理性が結局、強い
死んでどうする?…… 希望の先生
信じられぬ自分を好きにもなれなくて
語り合う相手がただ欲しいだけなのか?
ここにあるのか、私って存在は
『遠雷』
閉じこもる部屋を 一瞬…光らせ
遅れて轟音 カミナリが鳴る
気づかない愛も 衝撃のあとに
真実に触れ 心に鳴り響く
雨脚も強まり 世界は号泣
ガラスを叩いて 「たすけて」と言う
泣きわめく遠雷 時間差が…痛い
寄り添いたいのに あなたはとおい
窓を開け濡れる びゅって風も吹く
立ち昇る匂い 今日という場所
終わらない遠雷 わたしは見ていた
そして、駆け出した
無茶したい、愛がある
『君と飛び立つ』
不安な夜がある
孤独が辛くて寂しくて
テレビやスマホでは
埋めれぬ穴がここにある
優しい人がいる
一緒に食べる人もいる
話も聞いてくれる
でも一番は、ボクじゃない
欲張りなんだ
戦争や貧困やイジメもあるのに
逃れて生きてもめちゃくちゃ苦しい
求めてしまう
だれかの特別で一番になりたい
わがままなんだよ……愛されていたい
寝息の音だけで
かすかな体臭嗅ぐだけで
心が強くなる
そういうものに埋もれたい
生きてくことよりも
幸せになる方法(すべ)よりも
苦しい悲しいを
一緒に感じていたいんだ
欲張りなんだ
世界はだれかの犠牲でまわってる
それでも自分を優先したくて
求めてしまう
あまえてみたくて、ゆるされたくて
極限こえても頑張ってきたから
最愛のひとに
もし巡り会えたらゆっくり飛びたい
スピード合わせて地球をまわる
『きっと忘れない』
運命だとか
奇跡のようで
二人の今が
不思議でならない
愛することは
計算じゃない
だから戸惑う
変わって…いくことに
きっと忘れない
二人で交わした言葉の虹を
きっと忘れない
いろんな感情を抱きしめた夜を
これからだって
壁はあるだろう
けれど試練は
愛を強く…結ぶだろう
きっと忘れない
打ち明けてくれた告白の言葉
きっと忘れない
あなたの愛情を感じたよろこび
どれほど人は
愛せるのだろう
ぼくはあなたに
落ちてく…死ぬ時まで
『足音』
家族は足音で 誰かがわかった
季節の足音は 早朝に聴こえる
恋の足音は 心臓が知らせて
サヨナラの足音は 予感がノックする
耳をすませば 足音がする
時代が痛々しく 傷つけ合っている
あなたが帰ってきた 足音がした
その音だけで 心が弾む
わたしが愛した 足音がする
近づいているだけで キラキラと灯がともる
足音を聴いている 每日、待っている
もうすぐ秋になる 運命と約束……したように