あいまいな空
雲がかる空は、僕の気持ちみたい。
僕の気持ちを表現する。
白いキャンバスに白い絵の具を垂らす。
筆で軽快なリズムで跡をつける。
白に白でも色がそれぞれ違う、あいまいな色だ。
それは僕に似すぎている。
この雲は僕であり、雲は僕である。
雲の形は様々なんだ。
あいまいな空はない。
あいまいさは雲なんだ。
#08
あじさい
今年の紫陽花は、一つ一つの花が美しい、てまり咲き。
凛とし、縹色が疎らに弱かったり、強かったり。
その姿に魅入られた。
貴方にそっくりで。
紫光りする黒髪、涙で潤い曇りがない瞳、透き通る肌。
その全てに私は魅入られ、鼓動が高まった。
そんな、貴方が私の傍にいる。
美しすぎる貴方に触れられるだけで幸せだった。
人間は情が移るもの。
貴方は、私に振り向き続けなかった。
私だけの美しい貴方なんだ。
私だけの紫陽花になってはくれないだろうか。
手をひき、貴方に口付けをする。
息がすぅと抜け、てまり咲き。
雨の水滴が花弁につく。
ゆっくりと指先ですくい口にすると、しょっぱかった。
私は感動した。他にも、涙せず笑って欲しい。
もっと、それを見たいんだ。もっと。
今年の紫陽花は、貴方に似すぎている。
あじさいはこれからも美しく雨に濡れ、咲き誇る。
#07
好き嫌い
君に四葉のクローバーを渡した。
だが、その場で君は手から離した。
その日から僕は君が嫌いだった。
手離したことじゃなく、僕の気持ちを受け取らなかったことが嫌だった。
僕は君から離れた。身も心も。
ある日、僕は君と再開をした。
君は、ほのかに赤い頬をしていて、目から雫が美しく頬をつたっていた。
君は僕を儚げに見つめる。
再開の印に君から花を受け取った。
それは、クリスマスローズ。
僕も、君に花を渡した。
ブバルディアを。
君が長い間痛感した思いは、芯にたどり着くための成長期間だったんだ。
君は、ブルバディアを好きでしょう?
僕はブルバディアは嫌いなんだ。
僕が好きなものは、エリカなんだ。
君もいつか理解してくれたら嬉しい。
それが僕にとっての好きであり、愛慕なんだ。
#06
街
久しぶりに目を覚ました。
変わり果てたそれは、跡形がなかった。
僕は崩れ始めた。
呼吸が上手く出来なくなった。
この街の空気は僕には合わない。
涅色のような空気は肺を痛めた。
空気が行き漂わないこの世界は臭い。
いや、臭いのは外の世界では無い。
臭いのは僕自身なのかもしれない。
1枚、また1枚と鱗が崩れていく。
最期は鉄臭く、僕の肺を痛めるものと良い相性になる。
誰か救ってはくれないだろうか。
僕を救う聖水をこの鱗に一滴垂らしてはくれないだろうか。
街は僕がいなければ完成しなかった。
#05
やりたいこと
愛する人が、消毒の匂いが染みる場所へ寝込んでしまった。
長い廊下を抜け、409号室前の扉に立った。
白く重い扉をノックすると、低く深い音が廊下に響いた。
今日、届ける花はスイートピーで貴方に似て優しく、甘い香りがする。
ガーベラ、カスミソウ、トルコキキョウ…
そうして毎週、花を貴方に届け続けた。
青白い肌が、ベビーピンクにはならないでほしい。
そのままの色が美しいのです。
早くその腕で私を強く抱きしめてほしい。
今日は、私がずっとしたかったことをします。
私は貴方にシクラメンを届けました。
#04