好き嫌い
君に四葉のクローバーを渡した。
だが、その場で君は手から離した。
その日から僕は君が嫌いだった。
手離したことじゃなく、僕の気持ちを受け取らなかったことが嫌だった。
僕は君から離れた。身も心も。
ある日、僕は君と再開をした。
君は、ほのかに赤い頬をしていて、目から雫が美しく頬をつたっていた。
君は僕を儚げに見つめる。
再開の印に君から花を受け取った。
それは、クリスマスローズ。
僕も、君に花を渡した。
ブバルディアを。
君が長い間痛感した思いは、芯にたどり着くための成長期間だったんだ。
君は、ブルバディアを好きでしょう?
僕はブルバディアは嫌いなんだ。
僕が好きなものは、エリカなんだ。
君もいつか理解してくれたら嬉しい。
それが僕にとっての好きであり、愛慕なんだ。
#06
街
久しぶりに目を覚ました。
変わり果てたそれは、跡形がなかった。
僕は崩れ始めた。
呼吸が上手く出来なくなった。
この街の空気は僕には合わない。
涅色のような空気は肺を痛めた。
空気が行き漂わないこの世界は臭い。
いや、臭いのは外の世界では無い。
臭いのは僕自身なのかもしれない。
1枚、また1枚と鱗が崩れていく。
最期は鉄臭く、僕の肺を痛めるものと良い相性になる。
誰か救ってはくれないだろうか。
僕を救う聖水をこの鱗に一滴垂らしてはくれないだろうか。
街は僕がいなければ完成しなかった。
#05
やりたいこと
愛する人が、消毒の匂いが染みる場所へ寝込んでしまった。
長い廊下を抜け、409号室前の扉に立った。
白く重い扉をノックすると、低く深い音が廊下に響いた。
今日、届ける花はスイートピーで貴方に似て優しく、甘い香りがする。
ガーベラ、カスミソウ、トルコキキョウ…
そうして毎週、花を貴方に届け続けた。
青白い肌が、ベビーピンクにはならないでほしい。
そのままの色が美しいのです。
早くその腕で私を強く抱きしめてほしい。
今日は、私がずっとしたかったことをします。
私は貴方にシクラメンを届けました。
#04
朝日の温もり
頬を照らすように、包むように、触れる、支子色。
僕に目を覚ませと言うように、朝日は目を照らしてくる。
眩しいので、髪で目を覆う。
少し臭うが、心地よいのは支子色の温もりのせいだろうか。
臭い。
パンの焼け焦げた匂いみたいだ。
僕が感じる温もりは、人と違うのだろうか。
心があたたかく、燃え尽きるような、そんな感覚だった。
白いベッドが黒焦げて灰になった。
それこそが僕に似合う朝日からの最後の温もりなんだ。
#03
岐路
今立っているここは、どこなのだろう。
真っ白くて、霧に満ちている。
そっと息を吹きかけると、二本の道筋が見えた。
僕に足りないものは、「愛」と「友情」だった。
どちらを優先、大切にするべきか分からなかった。
自分ではどちらかなんて決められない。
いや、そもそも選べないんだ。二つを大切にしなければいけないんだ。
自分で自分の真っ直ぐな道をつくる。
迷うことなんてない、岐路が気付かせてくれたんだ。
必要なものを。
#02