何のために生きているのか?親が私を生んだから。
生きている理由なんてただそれだけだし、それでいいと思っている。
何も失っていない、必要な物は大体目の前にある。日常生活でこれといった不満もない。
ならこの喪失感は何なのだろう。昔からこうだっただろうか? いつから私の手は、心は、こんなに冷たく熱を通さなくなってしまったのだろう。
知っているなら誰か教えてほしい
この隙間を埋めるにはどうしたらいい?
愛は金では買えないだなんてよく言ったものだ。
血色感が感じられない肌、ブラックホールのような今にも吸い込まれてしまいそうな瞳、薄い体、まばらに刻まれている偽りの愛、決して私1人には向けられていないプロの笑顔、
差し出された手を取ってしまったがもう最後、私の理性はどこへやらまるで踊るように一定のリズムをキープし、終盤に近づくにつれ音は乱れていく。
夢から覚めた。そうだ、踊っていたのではない、
彼の手の上で踊らされていた馬鹿な私がそこにいただけだ。
まず、何がどうなったら自分は不完全ではなくなるのかと考えた時、出た答えは「ロボットになる」しかなかった。自分でも現実味がないなとは思うが実際そう。
僕は永遠に不完全。僕が人間としてこの地球上に存在している限り、僕という存在は永遠に不完全で、僕というひとりの人間としての存在が消えた時こそ僕は完全になるのだ。
これは厨二病でも酔っているわけでもなく、完全にシラフの状態での考えだ。
僕はこれに気付いた時から、自分に期待をしなくなったし目標も理想も大方捨てた。すると今まで引きずっていた重い重い何かから解放されて一気に体が軽くなった。ほぼ無に近い。
それは僕が大事な何かが欠けている不完全な人間だからそう感じるのか、はたまた別の理由があるのか、
人間なんて皆不完全なのに。
「こうすい欲しいー!」
私は小さい頃から可愛い物やおしゃれをする事が大好きで、あれが欲しいこれが欲しいあの人になりたい!などと突拍子もなく言って両親を困らせたり、母の化粧道具を漁ってはよく怒られていたりした。
香水が欲しいというのも単なる憧れで、それをつけたら大人の女性になれると思っていたからである。
この手の話になると私は自分が納得するまでずっとわがままを言い続けるため、母には半分愛想を尽かされていたような気もする。
ある日、仕事から帰ってくるなりにやにやしながら私のところにやってきた父が
「今日は ちゃんに良い物がありま〜す!」
なんて言い出すのでその時点で私は高揚感に包まれ、目を輝かせながら父に注目した。
何か何かとワクワクしている内に頭に何かをつけられた感覚が、完全に私の頭の中はクエスチョンマークだらけ。
かと思えば、次の瞬間柔らかくて甘い香りが私の小さな体を包み込む。
「…!こうすい!」
父が差し出してくれた鏡を手に取りそこに映った自分を見てみると、金木犀の花がリボンと一緒にとめられていた。幼い私にとってはそれがすごく嬉しくて、「またひとつお姉さんになったな」と微笑む父の胸に勢いよく飛び込んだ。
かすかに母の匂いがした。
僕達の間に言葉なんかいらない。なぜならそんなものがなくたって心が通じあっているから。
愛し合っている者同士なら、わざわざ言葉にして伝えなくてもいいと思っていた。
ならなぜ人間には口がついているのだろう。
毎日君の笑顔を思い出す、思えば君は心の底から笑えていたのかな?
あの時、何も言わずに抱きしめていれば、そっと手を握ってあげていれば、未来は何か変わっていたのだろうか。未だに何が正解だったのかわからないんだ。
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私達の間に言葉なんかいらない。そんなものがなくたって心が通じあっているから。
愛し合っている者同士だから、きっと大丈夫だと思ってた。
日に日に募る不安を口にしたらあなたが離れていってしまう気がしたから、どんなときも笑顔でいた。決して悟られてはいけない。あなたの好きな私でいたい。
でもほんとは気づいてほしかった。何も言わずに抱きしめてほしかった。安心したかった。
最後くらいあなたの体温を感じていたかった。