透明の糖分

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「こうすい欲しいー!」
私は小さい頃から可愛い物やおしゃれをする事が大好きで、あれが欲しいこれが欲しいあの人になりたい!などと突拍子もなく言って両親を困らせたり、母の化粧道具を漁ってはよく怒られていたりした。

香水が欲しいというのも単なる憧れで、それをつけたら大人の女性になれると思っていたからである。
この手の話になると私は自分が納得するまでずっとわがままを言い続けるため、母には半分愛想を尽かされていたような気もする。

ある日、仕事から帰ってくるなりにやにやしながら私のところにやってきた父が
「今日は ちゃんに良い物がありま〜す!」
なんて言い出すのでその時点で私は高揚感に包まれ、目を輝かせながら父に注目した。

何か何かとワクワクしている内に頭に何かをつけられた感覚が、完全に私の頭の中はクエスチョンマークだらけ。
かと思えば、次の瞬間柔らかくて甘い香りが私の小さな体を包み込む。
「…!こうすい!」
父が差し出してくれた鏡を手に取りそこに映った自分を見てみると、金木犀の花がリボンと一緒にとめられていた。幼い私にとってはそれがすごく嬉しくて、「またひとつお姉さんになったな」と微笑む父の胸に勢いよく飛び込んだ。
かすかに母の匂いがした。

8/30/2023, 1:42:50 PM