lily

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3/15/2023, 10:48:37 AM

星が溢れていた。
僕はそのあまりにも美しいこの星を誰にも見せたくないと思い、その星を優しく拭った。
その星はどんな星よりも美しく、
どんな星よりも輝いていた。
でも、



この『星』を零している君の笑顔は、
星よりも眩しくて、
太陽みたいだ。
思わず、
僕の目からも
星が溢れる。

3/14/2023, 1:07:42 PM

私は昔から、空をぼんやりと眺めるのが好きだった。
学校に行っている時も、とりあえずふらふらと歩く時も、家にいる時も、
…そして、今も

ふと、視線を感じた。
暖かいが、とても悲しい、視線。
私はその視線の正体を知っていた。
知っていたからこそ、わざと気づかないふりをして
ぼんやりと空を眺めた。
少しずつ流れていき、姿を変えていく空。
(…私は、あの時から何も変われてない…)
居た堪れなくなり、視線を無視しながら、家へと向かった。

『ただいま』
そう言っても何も返ってこない。
当たり前だろう。


あの人は、私のそばから静かにいなくなった。
私を庇って。
最後まで、優しい人だったんだ。
誰よりも私のことを理解していて、
誰よりも私のそばにいてくれた。
私はそんな彼を愛していた。
彼も、私を愛してくれた。
…でも、愛していたからこそ、彼は庇ってくれた。
唯一の報いだとすれば、彼が苦しまず、安らかに旅立ったことだろう。

(…死んだ人は、空へ昇るのかな…)
いつの間にか泣いてしまった私を見ているその目は、
とても、安らかな瞳をしていた。

私は静かにその場に崩れ落ちた。



どうか、幸せでーー。

3/13/2023, 11:07:48 AM

凛と美しく咲いている二輪のゆり。
たまに風に揺られ、寄り添うかのように優しく触れる。
「仲の良い」というよりは、「ずっと隣にいる存在」という安心感を感じる。
(きっと、このゆりが一本だったなら、寂しく感じたんだろうな)
誰だって、何だって、「ずっと隣にいる」という言葉は安心する言葉なんだろうな。
たまにふらりと現れるよりも、気づけばそこにいるような存在。
大体の人が、そんな人に救われるんだろう。
(人によるんだろうけれど)
多分、私みたいに。

「水樹(みずき)!おはよ!」
いつのまにか私の隣にいる美奈(みな)。
私が色々と悩んでいる時も、考えている時も、彼女は気づけば私の隣にいて、私を支えてくれた。
おそらく美奈は、そんなことなんて考えてないんだろうけれど。

…ずっと思っていた。
私も、このゆりのように美奈に寄り添いたいと。
彼女が私を支えてくれたように、私も支えたいと。
だから…

『美奈』
「なに?」
ずっと隣で、支えさせて。

3/12/2023, 10:53:15 AM

(今日もいる…)
ずっと前からこの何もない公園で何かを描いている男性がいた。
そして今日も、また何かを描いている。

私はこの何もない、自然を感じられるこの公園がとでも好きで、ほとんど毎日通っている。
でも、遊具が殆ど無いせいかここに来る人たちはほぼいない。むしろ、この公園を知っているのかさえ怪しい。
(…あの人も、この公園が好きなのかな…)
ずっと何かを真剣に見続けて、たまに手を止めながら何かを描いている。
(この公園の、何を描いてるんだろう…?)
少しでも気になったら行動に移してしまう私は、彼の邪魔にならないよう、静かに近づいた。
彼は集中してるのか、私に気がつくことなく、静かに自身の描いた絵を眺めていた。
少し時間が経ち、やっと私に気がついたのか「こんにちは」と挨拶をし合った。
『何を描いているんですか?』
「あぁ、これです」
その絵は上手いとも下手とも言えないのに、何故か心にグッとくる絵だった。
描かれていたのはこの公園に鮮やかに咲いてある、ハナマスだった。

『…なんだか心にグッとくる絵ですね』
「ありがとうございます。
…この公園、とても美しい花が咲いているんですよね
私はよく花の絵を描くんですが、花を描くとなったら毎回ここの公園に来てしまうんです。
人も少なくて、落ち着きますから」
『そうですよね…
実はここの公園、あまり、というか殆ど遊具が無いせいか人が全く来なくて…
私は、この公園が子供の頃から好きなんですが…』
「あぁ、そう言えば貴方、毎日この公園に来てますよね」
『気づいてたんですか⁈』
「ええ、ここってとても静かでしょう?
だから人が来るとすぐにわかるんです
…と、私はこれから少し仕事があるので
今日は、帰ります」
『…あの!
またよろしければお話ししませんか…?
全然、空いてる時間で大丈夫ですので!』
「もちろん、私でよければぜひ。
…では、また」

穏やかに、丁寧に笑い、この公園が好きだという彼。
また、会えたらもっといろんな話をしたい。
話している内に、もっと彼のことを知りたいと思った。
…私はどうやら、彼の絵にも、彼自身にも惹かれてしまったようだ。


次会えたらまたーー。

3/11/2023, 10:55:36 AM

俺は、自分の人生を、つまらないものだと思っていた。

『幸せな人生って、なんなんだろうな?』
「幸せな人生?」
『そう。幸せな人生。
お前頭いいからさ、わかるかなと思って』
「うーん…平穏な日々を送れることじゃない?」
『平穏な日々?』
「いつも通りのことができること、とか?」
『…?それって幸せって言うのか?
つまらないし、くだらない、ただの日常なのに?』
「そうだよね。つまらないのに、くだらないのに不思議な程に幸せだって思えてしまうんだ。
だって、いつ、どこでなにがあるかも分からないんだよ?もしかしたら、命さえ奪われるのかもしれない。
そう思えば、つまらない、くだらないことができることって、すごく幸せで、素敵なことだと思わない?」
『なるほどな…
じゃあ、今この話をしているのも、「つまらない、くだらないこと」なのかもな』
「ふふ、そうかもね」

大人になった今でも思い出す。
本当に、俺は幸せ者なのだと。
あの話をしてから俺は、いつも通り、普段の日常をあい変わらず送っていた。
変わったとすれば、そんな日常を今でも幸せだと思えるようになったこと、か。
…あいつも、平穏な日常を送れてるのかな?
最近は忙しくて、全く会えていなかった。
そんな時、スマホが鳴った。
慌てて鞄からスマホを取り出し、着信のあったラインを開いた。

お前の方が、忙しいくせに。
貴重な時間を俺に使うなんて。
でも、お前ならこんなことに時間を使うのにも、幸せだと、平穏だと言いそうだな。
…今日はいつもより仕事を早く終わらせよう。



「久しぶり、今日時間ある?
もしあれば、またあの頃と同じ、つまらない、くだらない話をしよう。」

あのつまらない、くだらない平穏な日常の話を。

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