私は昔から、空をぼんやりと眺めるのが好きだった。
学校に行っている時も、とりあえずふらふらと歩く時も、家にいる時も、
…そして、今も
ふと、視線を感じた。
暖かいが、とても悲しい、視線。
私はその視線の正体を知っていた。
知っていたからこそ、わざと気づかないふりをして
ぼんやりと空を眺めた。
少しずつ流れていき、姿を変えていく空。
(…私は、あの時から何も変われてない…)
居た堪れなくなり、視線を無視しながら、家へと向かった。
『ただいま』
そう言っても何も返ってこない。
当たり前だろう。
あの人は、私のそばから静かにいなくなった。
私を庇って。
最後まで、優しい人だったんだ。
誰よりも私のことを理解していて、
誰よりも私のそばにいてくれた。
私はそんな彼を愛していた。
彼も、私を愛してくれた。
…でも、愛していたからこそ、彼は庇ってくれた。
唯一の報いだとすれば、彼が苦しまず、安らかに旅立ったことだろう。
(…死んだ人は、空へ昇るのかな…)
いつの間にか泣いてしまった私を見ているその目は、
とても、安らかな瞳をしていた。
私は静かにその場に崩れ落ちた。
どうか、幸せでーー。
3/14/2023, 1:07:42 PM