1年後
「1年後また会おう…」窓から見える桜から目を離さずにそう言う君は翌年もうこの世界にはいない。
君も自分もわかっている。だってここは君の病室だから。君はもう1年も生きられない。なんなら明日死んだっておかしくはない。なのに君は、翌年もここに居たいと欲を言う。
そんなことを言いながら微笑む君に「当たり前だよ…じゃあ、また明日。」そう言いベッドの横のパイプ椅子から立ちドアの前で止まる。このときの僕はもうわかっていたのかもしれない。ふぅと息を吐き、君に振り返り
「明日も…」そう言って、病室を出る。
半年後
君の病室に向かった。君の母親から連絡があった。君の病室のベッドを見ると君はこの世から消えてしまった。そう儚く思う。当たり前だった君との日常は桜のように綺麗に散り、何も無かったように翌年を待っている。
君との日々を振り返っていると、ベッドのわきに淡いピンク色の折り紙が置いてあった。それを手にすると、とても綺麗とは言い難い桜の形をしていた。すると近くにいた看護師が
「あぁ〜、それあの子が頑張って作っていたんですよ。なんか、来年もあいつと桜を見るんだ!なんて言っててね。でも、あの子もわかっていたのかも…その紙2枚あるでしょ?多分それはあなたの分だよ。」
看護師に感謝をいい折り紙を持って、病室を出る。ドアの前で、視界が歪んだ。目から温かい涙が溢れてくる。
嗚咽を出しながら、君の名前を言い泣いた。
だから僕は君との約束を果たすために、僕は毎年桜の折り紙と共に君の病室から見えた桜を見ている。
優しくしないで
これ以上あなたといたら、私はダメになる。
あなたは優しいし、気さくだし、話もうまい。
そんな人を好きにならないはずがないでしょ?
私は解っている。あなたには、好きな人がいる。
ね?そうでしょ?
好きな人のことなんて、すぐにわかる。いや、分かりやすすぎる。
だってあなたは私と話しているときに、あの子を目で追いかけてるでしょ?
そう。私がどれだけ想っても、貴方にとって私はただの友達。
でもね、私はこの心に嘘はつきたくなくて…
貴方があの子を目で追いかけているときに、私はあなたの邪魔をしてしまう。
だけどあなたは私の方に向き直り眉毛を少しだけ上げて"ん?"とキョトン顔をしながら私の話を聞こうとしてくれる。促してくれる。
ただの友達なのに…と越えられない壁にまた気づき私は下唇を上の歯でキュッと噛む。
…"ねぇ?優しくしないで?"と口から溢れそうだったこの言葉をまたグッと呑み込む。
楽園
「おーい!!こっちこっち!早く来いよ…」
セミがミンミンうるさい季節に君が青春をくれた。
もう今年で最後の高校の夏休みに入ろうとしていた。今年までも、"高校生らしいことをせずに夏休みが終わるのかぁ"そんなことを考えていたら前の席の彼が私の方に振り返り
「高校生らしいことってなに?何をしたら、高校生らしいの?」と。心の声が漏れていたようだ。でも確かに高校生らしいことってなんだろうと頭を悩ませ私は
「う〜ん…なんか、いつもと少し違う何かが起きてほしい?みたいな?」というと
「いつもと少し違うってなんだよ…あっ!そうだ、夏休み予定空いてる?空いてるならさ、俺に付き合ってよ。できれば、夕方くらいからがいいんだけど。」と。
私は、なんで?という疑問と共に、スマホのカレンダーを見て一応何かが起きそうな感じがするので予定を言う。
「この日がいいかな。」それだけいうと、
「じゃあ、その日7時くらいに学校の生物室来て!」そう約束して彼は笑顔で去っていった。
約束の日
私は学校の校舎にこっそり入り、生物室へと急いだ。すると、生物室前で彼が座って待っていた。私は、小走りで
「ごめん。おまたせ。」そう言うと
「またせ過ぎだよ。よしっ!俺がいいって言うまで、廊下で待ってて!」そう言い、生物室に入っていった。私は、なぜこの時間帯に呼ばれたのかわからない。頭を抱えていると、
「いいよ!」
そう彼に言われて入ると、そこにはきれいな星たちが天井に散りばめられてた。そうか、彼は星がきれいに見える時間に予定を立てていたのかと思ったのと同時に思わず心の声が声に出ていた。
「綺麗…」そう言うと彼は照れ臭そうに、
「だろ?いやぁ、お前がいつもと違う高校生最後の夏休みがほしいとかいうからさ、確かに俺も最後くらい青春したいなと思って。」と。私は彼の話を聞きながら生物室で天体観測に夢中になっていた。すると彼も
「やっぱり、綺麗だ…」そう言った。その時の私は気づく事ができなかったが、彼の言葉は星に向けられた言葉ではなかった。
あの日から、私は天体観測にハマり夏休み後にも続いた。授業が終われば、私は急いで支度をし家に帰る。それから、夕方くらいに学校に忍び込む。本当は、この時間に生徒が校舎の中にいることは禁じられているが、このドキドキもまた楽しかった。生物室の近くの廊下に差し掛かると彼が生物室から顔を出し、
「おーい!!こっちこっち!早く来いよ…」と手招きをする。私は、
「うん!」と元気よく返事をして走る。
あの日から私は、生物室に行くのが凄く楽しみになった。あなたと一緒に見る星空はとても綺麗だった。その時だけは、生物室がまるで楽園のように感じた。
刹那
日常生活で、生きづらさを感じる。
我慢できないかもと、感じ睡眠薬を大量に飲む。
…
目を閉じたら一生現実に戻れない。
それを知っていても、私は目を閉じる。
今までの思い出が走馬灯のように蘇る。そうなれば、
刹那にも死にたくないな…そう思ってしまう。
「あなたが感じる刹那的瞬間はいつですか?」
善悪
私は、彼が好きだ。世界で一番…
…優しかった。
…男女問わず皆にモテた。
…運動も出来た。
…話もうまかった。
…料理が上手い。
…笑顔が素敵だ。
…人をまとめられる。
…頭もいいと思う。
…絵も上手い。
そんな、すべてを持ったあなたにイライラした。だけど…私はあなたに見惚れていた。だから私はあなたみたいになろうと努力した。努力すればするほど、あなたの事が頭から離れなかった。私は、告白をした。でも、振られた。どうしても嫌で何とか関係を持とうと思ったけど、無理だった。"しつこい。うるさいんだよ。視界に入るな。"と言われた。私は、どうすればいいのかわからなくなった。あなたに嫌われたくないし、あなたのことを諦められない。なのに、私のことを視界に入れたくないって…
気がつけば私は善悪が分からなくなり彼の背後に走りカッターナイフであなたを殺していた。笑みが止まらなかった。だって、
"これからずっと一緒だもん。"