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楽園
 
 「おーい!!こっちこっち!早く来いよ…」
セミがミンミンうるさい季節に君が青春をくれた。 
 もう今年で最後の高校の夏休みに入ろうとしていた。今年までも、"高校生らしいことをせずに夏休みが終わるのかぁ"そんなことを考えていたら前の席の彼が私の方に振り返り
「高校生らしいことってなに?何をしたら、高校生らしいの?」と。心の声が漏れていたようだ。でも確かに高校生らしいことってなんだろうと頭を悩ませ私は
「う〜ん…なんか、いつもと少し違う何かが起きてほしい?みたいな?」というと
「いつもと少し違うってなんだよ…あっ!そうだ、夏休み予定空いてる?空いてるならさ、俺に付き合ってよ。できれば、夕方くらいからがいいんだけど。」と。
私は、なんで?という疑問と共に、スマホのカレンダーを見て一応何かが起きそうな感じがするので予定を言う。
「この日がいいかな。」それだけいうと、
「じゃあ、その日7時くらいに学校の生物室来て!」そう約束して彼は笑顔で去っていった。
約束の日
私は学校の校舎にこっそり入り、生物室へと急いだ。すると、生物室前で彼が座って待っていた。私は、小走りで
「ごめん。おまたせ。」そう言うと
「またせ過ぎだよ。よしっ!俺がいいって言うまで、廊下で待ってて!」そう言い、生物室に入っていった。私は、なぜこの時間帯に呼ばれたのかわからない。頭を抱えていると、
「いいよ!」
そう彼に言われて入ると、そこにはきれいな星たちが天井に散りばめられてた。そうか、彼は星がきれいに見える時間に予定を立てていたのかと思ったのと同時に思わず心の声が声に出ていた。
「綺麗…」そう言うと彼は照れ臭そうに、
「だろ?いやぁ、お前がいつもと違う高校生最後の夏休みがほしいとかいうからさ、確かに俺も最後くらい青春したいなと思って。」と。私は彼の話を聞きながら生物室で天体観測に夢中になっていた。すると彼も
「やっぱり、綺麗だ…」そう言った。その時の私は気づく事ができなかったが、彼の言葉は星に向けられた言葉ではなかった。
あの日から、私は天体観測にハマり夏休み後にも続いた。授業が終われば、私は急いで支度をし家に帰る。それから、夕方くらいに学校に忍び込む。本当は、この時間に生徒が校舎の中にいることは禁じられているが、このドキドキもまた楽しかった。生物室の近くの廊下に差し掛かると彼が生物室から顔を出し、
「おーい!!こっちこっち!早く来いよ…」と手招きをする。私は、
「うん!」と元気よく返事をして走る。
あの日から私は、生物室に行くのが凄く楽しみになった。あなたと一緒に見る星空はとても綺麗だった。その時だけは、生物室がまるで楽園のように感じた。

4/30/2024, 11:51:12 AM