届かぬ想い
「どうして?…」と言いながら僕は、気を失った。
僕には彼女がいる。とても優しい。その彼女と付き合って10年が経とうとしている。もう少ししたら、彼女の誕生日だ。僕は、花屋に行って花を選んでいた。まだ、数週間早いけどまぁいっかという気持ちで花を選び購入した。そして、彼女の家に泊まったとき指を内緒で測って婚約指輪を作った。僕は、彼女にプロポーズをしようと思う。でも、今日は早めに花束だけを渡そうと決めた。彼女の家に向かった。
ピンポーン…ガチャ
「は〜い。あれっ?どうしたの?」と聞く彼女の目の前に僕は花束を差し出す。
「ちょっと早めの誕生日プレゼント!花束!」と僕。
「わぁ!綺麗!誕生日当日まで枯らさないようにしなくちゃっ!」というので、僕は嬉しかったし早く彼女の誕生日が来てほしいも思った。
「部屋上がってく?」というので、
「じゃあ少しだけお邪魔しようかな。」と言うと、
「ちょっと、待っててね!部屋片付けるから!」と言って部屋の中に姿を消した。15分程度待っていたら、
「おまたせ!」と彼女が言うので、僕は部屋の中に入った。
彼女の部屋に入ったのは久しぶりだった。ここ最近は、断られてばかりだったから。それから何時間かしたあとに、僕は彼女の部屋を出て家に帰った。
誕生日当日、僕は指輪を準備した。今日僕はプロポーズをしようと思う。この10年間彼女に尽くしてきた。だから、断られるはずがない。彼女の家につく。
ピンポーン…ガチャ
「いらっしゃい〜。」と彼女が言って、中に上がらせてくれた。
「お邪魔しまーす!」と僕が靴置き場の靴を整頓していると、明らかに僕ではない知らない男性の靴が一足あった。僕は、彼女のお父さんのかと思いそのときは気にとめなかった。だが、誕生日会が進むにつれて彼女の部屋に違和感を感じた。まず、エプロンが前は一個だったのに2個になってること。洗面台の歯ブラシが2個になっていること。さまざまな場所で僕ではない誰かを家に上げた形跡が残されていた。そんなことを考えながら彼女を見るとケータイばっか見ていた。家に来てからずっとケータイで何かやり取りしている。もしかして…そんなことを思いながら、彼女と何か話すきっかけを作ろうも思い
「ねぇねぇ!僕がプレゼントした花束って…」そこまで言うと彼女は、
「あぁ〜、枯れちゃった。だけど、ドライフラワーにして、飾ってあるよ。」と彼女が指を差した方を見ると飾られてた。嬉しかった。でも、嬉しい時間はつかの間だったドライフラワーを見に行こうと彼女に背を向けた瞬間。ドンッ!と鈍い音が鳴り、後ろを向くと知らない男がいた。彼が持っているバッドの先には血が付いてる。僕の頭から、温かいものが垂れる。血だった。
「どうして?…なんで?誰その人、せ…説明してよ。」と彼女に言うと、彼女は冷めた目をして、
「うるせぇんだよ。私はずっと我慢してきたの。好きでもない人から金だけとるために一緒にいたの気づかなかったの?ハハハッ。あなたに最初から好意なんてなかったのよ。」と言った。すると、僕のズボンの左ポケットから何かが出てきた。あぁ、そうだった。彼女にプロポーズをする予定だったんだ。
僕は、男性に首を縛られてる。彼女と目が合う。笑ってる。僕は、息ができなくてもがく。すると、上からドライフラワーが落ちてきた。
ドライフラワーのように色褪せた僕の届かぬ想いは、彼女に伝えられなかった。
神様へ
「神様へ
私は、思い出しました。父と母。そして、お兄さんを…」
朝、私が目を覚ますとそこは病院でした。周りには何もなく、私とベッドだけの部屋…私は、なぜ病院にいるのかわかりませんでした。病院に来る前の最後の記憶は私は"笑っていた"。ただ、それだけでした。
私がぼーっとしていると部屋に白衣を着た男の先生。そして、看護師さん。が並んで入ってきました。
「どうだい?体の調子は。何か、変なところはないかい?」と先生が言いました。私は
「大丈夫です。」そう一言だけ言いました。すると先生は真剣な顔をして私に
「ここに来る前の記憶はあるかい?」そう聞きました。なので、私は
「はい。あります。"笑っていました"。」と答えました。すると近くにいた看護師さんが顔を強張らせながら、
「"笑っていた?"」と。声を震わせながら言いました。
私は「はい。」笑顔で答えると、手で口を押さえ部屋を急いで出ていきました。どうしてだろう?そんなことを思っていると先生が「すまないね。緊張しているみたいだ。」そう言って、看護師さんのあとを追おうとしていたので急いで私は、
「先生っ!私の家族はどこですか?」そう言うと頭が少しだけズキッとし、こめかみを抑えていると先生はこちらに振り向きながら
「大丈夫。無理に思い出そうとしなくて。ゆっくりと思い出していこう。そうすれば、家族のことも思い出せるよ。」そう言って、去っていきました。
…私が廊下に出ると、少し遠くの方の椅子に看護師が顔を青ざめながら座っていた。
「大丈夫かい?」そう聞くと、
「大丈夫なわけないじゃないですか。聞きましたか?あの子…ここに来る前の記憶が"笑っていた"って。気持ちが悪いです。あんなの人間じゃない!自分の家族をみんな殺して、ついでにバラバラにして…警察が行ったときには、"笑いながら"お父さんの顔面をぐちゃぐちゃに…」そこまで言うと彼女は口元をまた押さえ逆流してくる胃物を我慢していた。私は
「あの子にも、心が壊れてしまう理由があったんだよ。あの子の体を見ただろう?傷だらけだったじゃないか。聞いただろう?警察から。家族から虐待されてたと…」苦しまぎれにそう言った。
…私に何があったんだろう。なぜ、家族が居なくなったんだろう?ゆっくりと思い出していたときに私はハッと息を呑んだ。そうだ。
「…私が殺したんだ。」
家族のあの怯え方、悲鳴、何もかもが私にとっての快感だった。そして、あのとき私はとても…
「楽しかった。」
気づけば私の口角は上がっていた。
快晴
パシャッ…パシャッ。シャッターの気持ちのいい音が屋上に広がる。
「今日も綺麗だな〜。」そんなことを呟きながら、僕は空の写真を撮る。シャッターを切るのに夢中になっていたら、同じクラスの女の子が泣きながら屋上に入ってきた。僕はびっくりしたがその顔に馴染みがあった。僕は、その子に近寄り
「だっ…大丈夫?なんかあったの?」とハンカチを差し出しながら聞いた。すると女の子は、驚きながらも僕のハンカチを受け取り涙を拭いながら
「大丈夫…大丈夫。ごめん。ありがとう。」と素っ気ない返事ではあったが、僕にお礼を言って去っていった。僕は気がつくと、何か彼女にあったのではないかと心配になった。だって彼女はいつも、笑顔で明るい人だから。
次の日
僕が学校に登校し、教室に入ると彼女は教室の窓側の席隅っこで俯いていた。僕は、不思議に思った。あれ?いつも一緒にいる子達がいない。なぜだろうと教室を見渡すと、廊下側の机に固まって彼女の悪口を言っていた。何かあったんだな…そう思った。
授業が終わり、僕はいつもの屋上に行った。屋上に着くと、カメラを準備し空を撮り始める。僕にとってこの時間は癒やしの時間でもあり、学校生活で唯一上を向ける時間だから僕はこの時間が大好きだ。今日も空に夢中になっていると、彼女が来た。服が汚れていた。僕は、彼女に駆け寄り
「ど…どうしたの?服が汚れてるよ?何かあったの?」そう聞くと、彼女は俯きながら泣き出した。僕はどうしていいかわからず、とりあえず彼女を抱きしめ
「ここは僕しかいないから、たくさん泣いていいよ。」そう言うと、彼女は僕の背中を掴みより一層大声で泣き出した。彼女が泣き止むと、ぽつりぽつりと僕に話だした。
「あの子達にいじめられてるんだ。いつも、私はあの子達に合わせてた。私、友達がいなかったから…」と彼女は、あの子達と今日に至るまでの話をしてくれた。しばらくして僕は、うつむいている彼女に話始めた。
「僕も中学生の時クラスの子からいじめられてたんだ。。だけど…ある女の子が僕をいじめるやつに仕返しをしてくれて、それから常に僕の側にいてくれるようになってね。ある日その子が"ねぇ!空をみて!綺麗だよ!"って言って僕も見上げたときの空に感動したんだ。雲一つない快晴の空がオレンジ色にグラデーションされていて。それが印象的でずっと、上を向いてあの子と見た空をもう一度見れるように、毎日、上を向いてシャッターを切ってるんだ…」そこまで言うと彼女は僕の方を見て目を丸くしていた。
「あのときのお返しだね。次は、僕が君を守るよ。」
そう言うと、彼女の表情は緩み微笑んでいた。
「ねぇ、空をみて!綺麗だよ。」と僕が言うと、彼女は上を向き
「私の真似しないでよ。」と笑いながら言ってきた。その時の彼女の表情と雲一つない快晴の空にオレンジ色にグラデーションされていて…
僕は思わずシャッターを切っていた。
遠くの空へ
「ねぇねぇ!聞こえてる?私の声!私は、一人でも大丈夫そう!心配しないで!」と遠くの空へ叫んだ。
「ねぇねぇ!なんの本読んでるの?」と、入学してから一番最初に声をかけてくれたのは黒髪がよく似合う活発な性格の女の子だった。声をかけてくれたときは、びっくりして口が動かなかったがそんな時でも彼女は
「ねぇねぇ!大丈夫?そんなにびっくりしなくても!」と可愛い笑い声で笑っていた。
「ご…ごめんなさい。き…緊張しちゃってて。」と私。
「ううん。こちらこそ驚かせてごめんね?ただ、その本の名前を知りたかっただけなの。私も、本が好きだから。」と微笑みながら話してくれた。
「本…好きなんだね?どんな本読むの?」と自然と口が開き自分から質問をしていた。すると彼女は、また元気になり「私はね…」と本の話をしてくれた。私と彼女の好きな本のジャンルが同じで話が合った。本の話をしたあとに彼女から
「ねぇねぇ!友達になってよ!あっ!でも、せっかく友達になるなら…親友になろうよ!!」と。眩しい笑顔と明るい声でそう言ってくれた。
入学してそうそう、私は友達なんていなかった。いや、出来なかったのだ。私のこの、暗い雰囲気が人を近づけさせなかったのかもしれない。私は、このまま3年間ずっと友達がいない高校生活を送らなければならないのか。と未来に嫌気が差していた。彼女が、私と親友になりたい。そう言ってくれて嬉しかった。とても。だから私は
「私で良ければ。」と笑顔で言った。彼女はとても嬉しそうに跳びはねていた。
それから1年、彼女と楽しい高校生活を送った。彼女といすぎて、口癖まで似てきた。そんな私は、彼女と出会って変わった。笑顔が増え、暗い雰囲気も消えた。彼女が私を変えてくれた。もう、1人での生活には戻れない。いや、戻りたくない。そう思っていた。
彼女と出会って2年が経とうとしていた頃、彼女は帰らぬ人となった。そう、母から聞かされた。交通事故だそうだ。私は泣き崩れた。つい昨日まで一緒にいて、楽しく本の話をしていたのに。来週は2人で遊園地に行こうねって。そう約束していたのに。私達の願いは叶わなかった。
彼女が亡くなってから2週間ずっと、家にひきこもっていた。彼女がいない高校生活は楽しくないだろうし、学校に私がいてもいなくても変わらないだろう。誰も心配なんて、しないだろう。そう思っていた。
翌日
先生に1度学校に来なさい。そう叱られてしまったので私は、登校することになった。学校へ着き、廊下を歩いていると、クラスの子が数人すれ違いざまに
「大丈夫?」、「無理しないでね!」、「相談いつでものるからね!」とひと声かけてくれたのだ。昔の自分だったら、絶対に声をかけてくれる人なんていなかっただろう。彼女が私を変えてくれたから今の私が居るんだ。
声をかけて去って行きそうだったクラスの子に私は振り向き、
「ありがとう!」そう一言大きな声で言った。
「全然!あの子の代わりにはなれないかもしれないけれど、似たような存在にはなれるように私達頑張るから、いつでも頼って!」と暖かい言葉を言ってくれた。
「ねぇねぇ!聞こえてる?私の声!私は、一人でも大丈夫そう!心配しないで!」遠くの空へ叫んだ。私の背中を押すように、風がふわっと吹いてきた。あなたなら大丈夫、そう彼女が言っているように私は思えた。
言葉にできない
最近私は、好きな人が出来た。その人はかっこよくて、背も高くて、話し上手であり、聞き上手だった。私の理想のすべてを持っている彼に恋をした…初恋だった。
そのことを彼氏がいる親友に相談すると
「えっ!嘘でしょ?!」と笑いながら言った。
もしかして、私が好きな人はもう相手がいるのか?彼に、いけない噂があるとか?この言葉は、どういう意味なんだろう。なんで笑っているんだろう?そんなことを考えていると親友が口を開いた。
「そうね。わかった!あなたの恋を応援する!私の"大切な"親友の初恋だもん!」と笑顔で言ってくれた。嬉しかった。この初恋を絶対に実らせ、1番に報告しよう。そう思った。
次の日から私は親友を通してだが、彼に好きなタイプや髪型、性格を聞いた。私なりに頑張って彼の理想に近づけた。
そんなある日、廊下で親友と話していると彼から話しかけてくれた。
「最近髪型変えたんだね。似合ってる。"可愛い"。」と。私は、顔が火照るのを感じた。頑張ったかいがあった。たった一言だったが、私は嬉しくて涙が出そうだった。近くにいた、親友の顔を見るとニコッと微笑んでいるように見え私は、
「嬉しい。ありがとう!」と言った。彼は、
「フッ。フハハハ。いいよいいよ!」と大笑いして、去っていった。私の反応が素直すぎて、子供のように思えておかしかったのな?困った反応を見せた私に親友は、
「ハハハッ。声大きすぎ。あぁ〜マジ笑える。」と。
私の声が大きすぎたみたいだった。恥ずかしい。笑われて当然だ。でも、彼は私の理想だった。もうこの人に告白をしてみよう!そう決めた。このことを親友に言うと
「あぁ〜。うん!頑張って!」そう言ってくれた。
次の日私は、彼に
「放課後、話したいことがあるから屋上に来てくれませんか?」と。すると彼は
「あぁ〜。いいよ。フッ。ごめん。昨日のこと思い出した。」私のことでまだ、笑っているみたいだ。恥ずかしいから、やめてほしい。いや、やめてほしくない。彼が私のことで笑ってくれている…私は幸せだ。
放課後
私は、少し遅れて行った。なぜなら彼に、先に屋上にいて欲しかったから。ふぅ、と息を吐く。大丈夫、自分なら。と思いながら、ドアを少し開けたとき声に聞き覚えのある二人が会話していた。
「…マジ笑えるよな〜!ちょっと可愛いって言ったくらいで顔赤くなってさ〜、声もバカデカかったし!あっ!でも、お前の"大切な"親友だっけ?言ってなかったの?俺らのこと」
「あぁ〜。うん。別に"大切"じゃないけどね。クラスでずっと一人で、あんた見てニヤニヤして。終いには、あんたの事が好きだって!告白するんだって!からかいたくもなるでしょ?ハハハッ。早く来ないかな〜!ネタバラシしたいよね〜。"私の彼氏"なんだけど…って。ハハッ。」
私は、涙が溢れた。彼は、最初から私に気がなかったのだ。終いには、"親友"は"親友"ではなかったようだし。最後の最後で、彼に想いを伝えられなかった…この気持ちは言葉にできなかった。