「ささやき」
痛いわ。
苦しいわ。
熱いわ。
なにか変な臭いがする。
ごめんね。
一緒にいられなくてごめんね。
大好きです。
愛しているわ。
私とあの人の可愛い息子。
私は死んだのかしら。
私の息子は元気?
分からない。
怖いわね。死んだのに実感がわかないわ。
あの子は今何をしているの?
私が死んでからどのくらいたったのかしら。
あの子は勇者になるみたい。
私とパパ、同じ孤児の女の子の敵をとりに旅にでるのね。
大丈夫かしら。心配ね。
...あの子も大きくなったのね。
あの子と夢で会ったわ。
あの子と久しぶりにお話をしたわ。
あの子は勇者になりたくないみたい。
そりゃそうよね。まだ小さいもの。
まだお酒も飲めない子供なのに、どうして命をかけさせるのかしら。最低な世界ね。
あの子だって、敵なんてとらないで良いのに。
辛いならもう辞めていいのに。
もしあの子が辞めたいと言ったのに、国が許さないなら私は国を呪ってやるわ。
死んだって死霊として化けて出るぐらいできるわよ。
あの子相当大変みたい。
今日も夢で会ったけど、もうあの頃の純粋なあの子はもういないみたい。
勇者になって、色んな人の裏の顔ってものを見たんでしょうね。
だらか私は言ってやったの、もう辞めても良いわよ。
ってね。
あの子は言ったわ。
もう辞めたいって。私、旦那、女の子、街の皆に会いたいって。
私のささやきがようやく役に立ったのね。
嬉しいけど。悲しいわ。
だって私達に会いに来るって事はあの子は死ぬってことだもの。
私、その事に気がついて、ささやいていたことを後悔したわ。
それに、死んだからって私達全員に会えると限らないもの。だって私、死んだのにあの人とまだ会えていないから。
ここは何処なのかしら。
天国?地獄?それとも、あの子の記憶のなか?
記憶のなかならあの子が死んだら私も消えるのかしら
消えるならあの人に会ってからがいいわ。
あの子が国王に言ったみたい。
勇者を辞めたいって。
でもあのクズ、許さないかったんだって。
私はあのクズが許せないわ。
勇者だって自由に生きたいのよ。
でも感謝、してるわ。
あの子に生きるための理由を与えてくれたから。
私だって辞めたら良いなんて言ったけど、あの子に
死んでなんかほしくないわ。私みたいに苦しい思いをさせたくないもの。
私は化けて出ようと思うわ。
最初は、あの国王を呪ってやろうと思ったんだけど。
あの子と現世で会いたいのよ。
それに、あの子にだって仲間が居るみたいだし、
その子達にも会いたいわ。
ふと思ったのだけど、現世に霊として行けるってことはここは記憶の中ではないわよね。
...分かったかもしれない。もしかしたら私はこの世に
息子っていう未練あったから、浮遊霊ってものになったのかもしれないわ。
あの子と会ったわ。
大変そうだけど、楽しそうだったわ。
あの子の仲間だって皆が皆、優しそうで仲が良さそうだった。
あの子が死のうとしてると思っていたけど、大丈夫そうだわ。
きっと仲間の皆があの子を支えてくれるわよね。
だから私もいい加減成仏しないとね。
もう会えなくなってしまうけど。
私はあの子と一緒に居たかった。
あの子と生きたかった。
あの子と行きたかった。
あの子より先に逝けてよかった。
あの子を見送るなんて私にはできない。
..もう私も逝こうかしら。
またね。早く会いに来ちゃダメよ。
ここは何処なのかしら。
明るくて暖かい。
後ろから肩を叩かれたわ。
少し痛い。でも何だか懐かしい。
..あぁ会いに来て、よかった。
久しぶり。愛しの貴方。
「星明かり」
輝いていますか?
誰よりも。
貴方が見つけてくれるまで。
貴方が飽きるまで。
輝き続けていたいのです。
あの日からどれほどの月日がたったかな。
あの日、私たちの街を怪獣が襲いました。
朝、何かの音が聞こえて目を覚ましました。
遠くから怪獣の足音のような大きな音が近づいて来ていました。
怪獣が足を踏み出す度に、大きな揺れが起きました。
怪獣が通り過ぎたかのように辺りがしんとしました。
ミシミシ家がきしむ音がしました。
私は急いで家を後にしました。
正直に言うと家の外に出なければよかった、と思いました。
その日、私達の街は、家は建物は私達の当たり前だと思っていた日常と言うものは、跡形もなく消え去っていました。ここが何処か分からなくなりました。
でもここは私の街だ。そう思いました。
近所の老夫婦が飼っていたベッキーとランが、飼い主を探していました。
何だか焦げ臭くて辺りを見渡すと、近くの家が燃えていました。
逃げなくては。本能的に感じました。
声がしました。助けてと言う声が。
ベッキー、ランと呼んでいました。
どうやら燃えている家は老夫婦の家のようでした。
ベッキーとランは老夫婦の所へ駆け寄っていました。
このままではベッキー達も助からない。
私はそう思いました。本当に危ない状況でこそ冷静になると私は始めて知りました。
私は意を決して、ベッキー達を抱えて老夫婦のもとから離れました。
走って離れましたが老夫婦が行かないで、助けて、だとか言っている声が頭に響きました。
避難所にベッキー達と一緒に駆け込みました。
そこには人がいっぱいで、いつかの大地震を思い出させました。教科書でしかみたことのない光景が目の前にひろがりました。
一つ気になっている事がありました。
恋人の事です。
彼は、無事に避難できたのでしょうか。
それともあの老夫婦のように..
考えるだけで頭がいたくなりました。
電話が一つありました。
繋がらないと分かっていても、家族、恋人に電話を掛けようとする人が集まって大きな列ができていました。
怪獣に襲われてから、長い月日が流れました。
まだ家には帰られていません。当たり前ですが。
手紙を持って恋人の両親が私のもとに訪れました。
ご両親は目が大きく腫れて、赤く痛々しい。
でも私の前で無理に笑っていました。
私はその時何だか、わかったのです。
彼は死んだんだって。
崩れ落ちた私をご両親は肩を、背中を撫でてくれました。貴方ではないのに手のひらの暖かみが貴方の大きな手の暖かみを思い出させるのです。
それから今日まで何年もたちました。
今日の私は笑っています。
いや、貴方が死んでから一度も泣いていません。
死んだら星になるという子供のための話を私は真に受けているのです。
あなたは私の笑顔が好きだと言ってくれたので。
貴方が私に飽きるまで貴方が私を見なくなるまでは私は泣きません。
貴方の記憶に残られるなら、笑った私が良いから。
恋だってたくさんします。
これからです。良い出会いがないだけですから。
だから心配しないで。
私は前を向いて歩きます。いや走ります。
なのでもう私から離れてください。
もう大丈夫ですから。
もう、消えてくれましたか?
ごめんなさい。やっぱり大丈夫じゃないです。
苦しいです。
今日ぐらい泣かせてください。
本当に本当に...さようなら。
「影絵」
僕は貴方が大好きです。
貴方は皆の光。
僕は誰がみても影のような存在です。
それでも僕は貴方が好きです。
僕が影になることで貴方がもっと輝くのなら僕は
喜んで影になります。
なのでそんな顔、しないでください。
貴方は笑って輝いてください。
僕も隣で笑っていますから。
この先一緒に居ますから。
貴方はこんな僕を好きだと言ってくれましたね。
僕だって貴方が僕を好きなぐらい、貴方が大好きです。
僕と貴方が一緒にいると釣り合わないだとか馬鹿にしてくる人が必ずいます。
でもその度にそんなことないって言ってくれて僕は
ものすごく救われました。
正直に言うと、やっぱり馬鹿にされると少しは腹が立つし、心が痛くて堪らなくなります。
だから、とっっても救われた気がしたんです。
いつの日か、僕は貴方にひどい事を言ってしまったと思います。
僕は貴方のように、輝けない。
いつも僕と居て僕を踏み台にするなって。
どうして僕と居るんだって。
もう会いたくないって。
そしたら貴方が僕に言ったんです。
私を馬鹿にするな。って
自分の事を目立たせるためだけに、好きな奴を踏み台になんかしないんだって。
それに、私なんかよりあんたの方が良いところがたくさんあって輝いているんだって。
泣きながら訴える貴方がを見ると胸が痛くてたまりませんでした。
僕は思っていた事を言っただけなのに、
自分の意見をこの先、後悔しないように惨めにならないように言っただけなのに、
こんなにも胸が痛くなるなんて、思ってもいませんでした。
最近、「影絵」と言うものを知りました。
小さい頃夢中になっていた事を思い出しました。
影絵は、黒一色の影が形をつくる。それだけの事なのに、人々を夢中にさせる。
これを知った時、僕はもしかしたら彼女のように影なりに輝けるのではないかと思いました。
そもそも影と言うものは光があるから形を表すことができます。
僕にぴったりではありませんか。
彼女と言う光が目の前にいる僕はいつだって影となって輝く事ができます。
僕は彼女のように輝けるのだ。
と思うと、嬉しくてたまりませんでした。
彼は、いつもいつも自分は影だと言う。
私が光だと言うし。
彼はきっと自分の魅力に気がついていないだけだ。
そもそも私が光で彼が影だと言うのなら、
どうして光である私が影を好きになると言うんだ。
彼は気がついていない。
自分の魅力にも、自分がこんなにも愛されているんだということにも。
彼は私が彼を踏み台にしているといった。
そんなはずない。
本当にしているんだったら、彼が馬鹿にされている時にあんなにキレたりなんかしない。
彼を思って本気で泣いたりしない。
そして何よりも、こんなにも愛したりしない。
光は影があるから輝ける。
影は光があるから輝ける。
当たり前の事だけど、誰も気にしないし考えない。
この事を直接彼に言うことも考えたが、言わない事にした。
私が言っても意味がないと思ったから。
彼を一番に支えるのは自分が良いし、誰にも譲りたくない。
でも今はそんなこと言っている場合ではない。
これだけは彼が自分で気がつかないと意味がない。
彼が気が付くまで待つしかない。
でも私はずっとまっている。
愛する彼のために、彼を愛する私のために。
僕は知らないといけない。
彼女がずっと待ってくれているから。
まだよく分からない。
でも、僕を愛してくれている人のために考えよう。
彼女がずっと待ってくれているって信じているから。
考えて考えよう。
僕と彼女のために。
彼女とこの先一緒に居るために。
「物語の始まり」
彼女は美しかった。
今では、誰も知らない。
優しかったあの娘はもう居ないのに。
誰も泣かない、悲しまない。
僕が居たから彼女は脇役にしかなれなかった。
大好きだ。
あの娘が大好きだ。
何よりも世界よりも愛している。
ある日突然「魔王」と呼ばれる怪物が生まれました。
怪物と言っても家畜の突然変異です。
人に恨みを持った家畜が子を産むと恨みが呪いとなり
子が変異し、怪物が生まれるのです。
僕の両親は怪物に殺され、僕は一人になりました。
その時声をかけてきたのがあの娘。
あの娘は両親と弟が怪物に殺されたそうです。
亡くなった家族の事を涙を堪えながら教えてくれ
ました。
そんなあの娘を見ながら僕は最低ですが「綺麗」だと思いました。こんなにも美しい人は見たことがありませんでした。
この娘と出会えるなら魔王が現れよかった。
最低なことを僕は考えていました。
その後あの娘と僕は孤児になり同じ施設に入りました。
僕が16になった頃、施設に教会の方がやって来ました。
僕達は一列に並べられて、指に針を刺されました。
痛くて痛くて、施設の人が僕達を裏切ったのかと思いました。
その時僕の血が光り始めました。
みんな光りを見て綺麗だとか美しいっていっていました。
こんな血よりも美しい女の子がこんなにも近くにいるのに...僕はそう思いました。
それからは早かったです。
僕は勇者だと崇められ、知らない大人につれられ大きな教会に行きました。それから剣術.マナー.言葉使いたくさんの事を教わりました。
どうやら、18になると勇者として魔王を倒す旅にでるそうです。
教会に来て二年ほどがたった時、ふと思いました。
教会にきてから一度も教会の外にでていないな。
僕はあの娘に会いたく仕方がありませんでした。
僕はもう18歳でもうすぐ旅に出ます。
だから旅に出るまえにあの娘に行ってきますと言いたかったのです。
そこで神父様に聞きました。
今、町はどうなっているのか。
僕はいつ帰られるのか。
しかし、神父はなにも答えませんでした。
それから何日かたった日、国民に僕を紹介すると言って馬車に押し込まれました。
少し腹がたちましたが外にでられて嬉しかったのです。
馬車の中で景色を見ていると隣に座っていた神父様が
突然話し始めました。
内容は、簡単に言うと僕の町が怪物に襲われ、壊滅したと言うと話でした。
生存者はなし、襲われたのは1年前だそうです。
僕は怒りをなんとか抑え、馬車に揺られ続けました。
そしてようやく到着しました。
お祭りのように騒がしい中、中央にいき勇者だと紹介され、さらに歓声が高まった。
どうしてこんなにも喜んでいられるのでしょうか。
たくさんの人が死んだのに?
なによりもあの娘が死んだのに?
今日僕は旅にでます。
貴方を見捨てた狂った世界を救うため。
どんな物語でも、勇者は主役。
それ以外はただの脇役。
勇者が愛した人でも、何だって脇役だ。
僕、勇者は旅にでる。
愛した人に会うために。胸を張って会うために。
貴方に会えるなら死んでもいいか。
戦って死んだなら胸を張って会いに行ける。
でもその前に、両親とあの娘の敵を取りに行こう。
その過程で世界を救う事なっても。
悩んでいても仕方ない。
とにかく進もう。
早く会いに行くために。
ここから物語が始まるのだから。
「静かな情熱」
お帰りなさい。
貴方が世界で一番大好きです。
でも、この気持ちは誰にも伝えません。
迷惑をかけてまうので。
わがままですが私の事、忘れないでくださいね。
2103.4.18
初めてお会いしたのはいつでしたか?
確か、春でしたね。
もう二年と半年がたちました。
もう私たちは高校三年生。
青春だ。なんてふざけていられるほど余裕はありません。
貴方が、居たから私はここまで学校に通い続けていられました。
一年生の時、私は少しいじめられていました。
そんな私を助けてくれたのは貴方。
貴方が居たから生きていられたのです。
大袈裟だと思いますか?
でもね、それだけ私にとって貴方は大きな存在だったんですよ。でも、それにもちょっとした理由があるんです。
いつかはもう忘れてしまいましたが、確か一年生の夏頃、私は屋上に行ったんです。
特に理由はありません。
ただただ高い所に行きたかったんです。
ここで飛び降りたら、いじめっ子達が罪悪感を抱いて何かしら後悔するんじゃないかって思わなかったわけではありません。
でも自殺なんてするつもりはありませんでした。
屋上にいって思い出した事がありました。
小学校六年生の時。
私の学校である噂が流れ始めました。
隣の小学校で自ら屋上から飛び降りたら生徒がいて
その生徒が亡くなった。という噂です。
この噂を聞いた担任の先生が私たちに話をしてくれました。
内容は、簡単に言うと「死ぬな。」
生きたいと言ったら死ねって言われて、死にたいって言ったら生きて欲しいって言う不安定で手のひら返しが当たり前な世界に生まれた。
それは仕方がない事実。
でもそんな世界でも生きていて欲しいって泣きながら話す先生の姿が目に焼き付いていて、先生の事を思い出すと死ねなくなりました。
他にも、自殺をする時は死のうと決めて死ぬのではなくふと、死のうと思うそうです。
だから周りの人が助けてを求めているなら助けてあげないといけない。
でもね本人が生きたいって思わないといくら助けても意味がないのです。
でも、貴方は死にたかった私を助けてくれたのです。
感謝してもしきれないほどです。
それから一年がたったある日、貴方は病気にかかりました。
「来日病」症状は身体に白い毛のようなものが生えてきて、いつかは死に至る。
治療法は未だにわかっておらず、発症すると
コールドスリープで眠るしかありません。
貴方はコールドスリープが怖いと言っていましたが、私はなにもできませんでした。
結局貴方は私に行ってきますとだけ言って眠ってしまいました。
それから私は貴方を助けたいと言う想いだけで医学を
必死に学びました。
貴方がしてくれたことを返すために。
これも何十年も前の話。
そして私は今日海外に行きます。
治療法を探すために。
私はもう死ぬかもしれません。
紛争に巻き込まれるかもしれません。
何より私はもう年を取りました。
でも私は行きます。
貴方がくれた命。貴方のために使います。
貴方にお帰りなさいと言えない事が何よりも心残り
です。
いつかは貴方を救います。
私でも他の人でも。
少し寂しい。いえ、凄く寂しいです。
最後に手紙を書かせてください。
私のわがままですけどね。
そろそろ行きます。
行ってきます。