蝶よ花よ、と愛でられるのは、いつだって、愛想のいい妹の方。
分かってる。自分にはないものだってことくらい。
妹に嫉妬なんて、姉失格、なんて思ってる?
でもね、好きな人が私じゃなくて、彼女に好意を持っていたら、したくもない嫉妬をしてしまうのは仕方ないじゃない?
なんで、いつも妹ばかり、って…。
こんな風に、思いたくもないことをつい頭を過ってしまうの。
その度に、私と妹は、姉妹としてではなく、全くの赤の他人同士としてだったらもう少し、この気持ちも、違うものになっていたのかな、なんてことも考える。
それでも、やっぱり彼女は、私の可愛い妹で。
結局、私は、妹を完全に突き放すことが出来なくて、甘やかしてしまうのだから、このぐちゃぐちゃな感情に振り回されるのは、自業自得なのよね…。
偶然、出逢って。
偶然、お互いに好意を持って。
そして、恋人同士となって。
でも、この偶然は、“偶然“なんかじゃない。
遥か昔から。最初から決まっていた。
そう知った君たちは、どんな反応をするのかな。
年々、太陽の照りつけが強くなってきている。
晴れの日は、外へ出れば、肌がヒリつくほどに。
だから、出来る限り、晴れの日は家に引き籠っていたい。
今日も、カーテンの向こうは、雲ひとつない、真っ青な空をしていた。
太陽も、相変わらず暑さを惜しみ無く、この地へと届けている。
天気予報では、一週間は晴れとなっていた。
つまり、このうだるような暑さを一週間も我慢しないといけないということ。
せめてその間、1日でもいいから、過ごしやすい曇りの日は来て欲しい…と、ベッドへと戻りながら願った。
鐘の音が、鳴り響く。
それは、新たに家族となる二人への祝福の音。
多くの招待客からの祝いの言葉を、照れながらも嬉しそうに受けとる二人。
(あぁ…来るんじゃなかった…)
二人の結婚式を見れば、諦めがつくのではと思いながら来てはみたものの、そう簡単にこの気持ちを切り替えることは出来ないと知ってしまった。
「お、こんなところにいたのか。よく来てくれたな!」
「本当、返信がなかなか来なかったから、欠席するのかと」
「あぁ…まぁ忙しくて…ギリギリになったのは悪かった。それより、改めて、二人とも結婚おめでとう」
その言葉に、疑いも持たず、二人は笑顔で"ありがとう"と応えた。
教会に鳴り響く鐘の音は、この二人にとっては、祝福の音。
けれど、今の俺にとっては諦めろ、という残酷な現実を突き付けられた音にしか聴こえなかった。
夢を見ている。
大好きなあの人と、隣に並んで、幸せそうに会話を交わしながら歩いている自分。
分かっている。これは夢だと。
だって、そこにいるべきは自分ではない。
あの人には、大切な人がいると知っているから。
だから、せめて。もう少し、この短い幸せに浸らせて欲しい。そう、目が覚めるまでに。
それくらいのわがままは、許して欲しい。