つながった、叶った、報われた。
告白した時の相手の反応で、そう確信していた。
だが、1週間が経ち、2週間が過ぎ、連絡のない失われた時間の後、一文だけ連絡。
なんだろう、このとてつもない喪失感は。
私は何年も相手のなにを見てきたのだろう。
何年も何も気づけなかった失われた時間は本当に無意味だったのか、まだわからない。
お題『失われた時間』
今日はよく頑張った。
朝から今まで、よく仕事した。
うん。私、よくやった。
三連休前の今日は、23時まで晩御飯も食べずに、全部仕事を終わらせた。
と自分に褒めたところで、何も意味はない気がするんだが、とりあえず、壮絶なる腹ペコをおさめるために、何か食べに行きたい。
が、しかし、この時間、開いている店も少なよね。
お酒を出す店、おもにBARしか思いつかない私の辞書に問題がある。
あきらめてコンビニでなんか買って帰るか。
そう思いつつ、横断歩道で空を見上げた。
こんな都会じゃ、星もあまり見えないが、今、流れ星に願いをするなら、いつもより美味しいご飯をお願いするなぁ。
「よう、こんな時間に散歩か?」
「流れ星がいたのかなぁ?」
「なに訳わからん事いっているのかなあ。君。」
飲食関連の雑誌編集者が私のことを酔っ払いか?いや、働きすぎておかしくなったか?どっちだ?とか言っているが、彼が神に見える。
これから、何かお願い事が空を見上げよう。うん、それがいい。
お題『流れ星に願いを』
「もう、こうやって会うのはやめよう」
私が言おうとしていた言葉を彼が先に告げてくれた。
彼は次を見つけたんだろう。
私は、心が欲しくなったから。
「私もそのつもりで、今日ここに来たよ」
体だけの関係上の暗黙のルールに従っただけ。
ただ、それだけのことだ。
お題『ルール』
ここにくると色々な人を見られる。
今日はアチラ。私からは左前方に見える位置に男女がいます。
こちらから、男性の表情は伺えませんが、男性と対峙している女性の表情はよく見えます。
とてつもないほど、恐ろしく、暗い表情です。
「ねー店長、アレ修羅場?」
目の前にいた、このバーの主は真面目な顔で、
「それ、誰かわかっています?」
ん?私の知っている人?もう一度左前方を見るが、誰かはわからない。私が首を傾げると、
「ま、もう終わるでしょう。終わったら、男性はあなたの隣に座りますよ。」
ん?修羅場後に隣に来ても気まずいだけじゃないか?
そう思いつつ、私はロックグラスを傾けた。
ドサッ。
突然左前方から、大きな物音がしたと思ったら、女性が1人で店を出て行った。
私が女性を目で追っている間に、隣に誰かが座った。
「終わりましたか?修羅場?」
ドサッと茶封筒が机に乱暴に置かれ、
「誰が修羅場だよ。」
この声は、右を向かずともわかる。まずい、今日の心模様が真っ白になった後真っ黒になった。
「そうか、君が修羅場と言ったんだね?ただの業務連絡を。ふーん。」
月曜日からは会いたくない男だ。酒を水のように飲む友人と月曜日から飲みたくない。潰される。
逃げたい。この場から今すぐ。
お題『今日の心模様』
雨を跳ね上げながら走る車の音
遠くで鳴る雷の音
非常階段に落ちる甲高い雨の音
ベッドに丸まりながらそれらの音を聞く。
「こんな夜は嫌いだ」
1人呟いたところで何も変わらない。
いらぬ記憶が脳裏から離れない。
思い出さされる記憶が心から消えない。
目から落ちる雫が全て無くなっても、記憶は消せない。
あの人はもう戻ってこない。
お題『雫』