百加

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10/30/2023, 4:11:58 AM

もう一つの物語


昔、高校の先生が、私はあの飛行機に乗るはずだったんだよ、と言った。先生の穏やかな口調に対して一瞬息を止めてしまった事を、私はよく覚えている。
あの高校に合格しなかったら、あの会社に入らなかったら、あの人に出会えなかったら。
いくつかの大きなif。そして日々の小さなifでは、あの電車に乗らなかったら、等々。
そこには必ずもう一つの可能性があって、その一つの選択で人生が変わっていたかもしれない。普段は意識しないその紙一重の重み、生きている幸運を、痛ましい事故のニュースなど聞くと先生の言葉を思い出し考えさせられる。

あの日、あの場所に私がいたら、もしくはいなかったら?
今ごろどんな物語が始まっていたのだろう。



#72

10/29/2023, 1:31:52 AM

暗がりの中で


最も暗い闇のなかにいるときこそ、光を見い出すことに集中しなければならない。
アリストテレス


すごくしんどかった時に、一日中聴いていたある歌手について、「この人の歌は暗いんじゃなくて、闇の中から光を求めてるように思う」というファンのコメントを見つけ、それがとても私の気持ちにぴたりと合っていました。ずっと心にかかっていたところ、この言葉に出会いました。
あきらめてないからこそ苦しい、それでいいから。と言ってもらった気がしました。



#71

10/28/2023, 9:58:06 AM

紅茶の香り


一区切りついたら、
今日はアールグレイを淹れよう。
丁寧にはできないから、
カップにティーパックを放り込み、
熱いお湯を注げば、
ふわりと華やかな香りが広がっていく。
大きく深呼吸して、胸いっぱいになるくらい、
その香りを吸い込んだ。
子どもの頃はこの強い香りが苦手だったけど、
今はこれでないと物足りなくなってしまった。
少し甘いものを摘んだりもする、
午後の密かな楽しみ。
そして一息ついたら、もう一仕事。
もうひと頑張り。



#70

10/27/2023, 2:14:35 AM

愛言葉


「ただいま、帰ったよ。ドアを開けて」
「合い言葉は!?」
「合い言葉って何? 早く開けてよ〜」
「この前決めた合い言葉を言って!」

 この前決めた……? 思い出せない。仕方なく、自分で鍵を開けようとすると、ドアチェーンがかかっている。娘の様子だと正解を言うまで開けてくれそうにない。
 困ったな、買い物を抱えて自宅のドアの前で立往生してしまう。合い言葉、何だったっけ? 

 こないだテレビで、固定電話にかかってきた電話からトラブルに巻き込まれるニュースを娘と見て、合い言葉を決めようとなった。それは覚えてるけど、いっぱい候補が上がって、結局……、そうだ思い出した!
「合い言葉言うよー、カピバラ!」
「当たりー!」
 カチャリとドアチェーンを外す音がする。ドアを開けると満面の笑顔。
「お母さん、覚えてたね!」

 あれから何年か経つのに、いまだに家に電話をかけるたびに、合い言葉を言わされる私です。



#69

10/26/2023, 9:56:44 AM

友達


元気かな、会いたいな。大好きだった友達。
大人になったら、あの頃のような友達ができなくなってしまった。
暮らし方が変わり、いつの間にか疎遠になってしまったけれど、あの頃の記憶は大事な思い出になっている。
でも、思い出のままにするんじゃなくて、
もう一度、連絡してみようか。



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