暗がりの中で
最も暗い闇のなかにいるときこそ、光を見い出すことに集中しなければならない。
アリストテレス
すごくしんどかった時に、一日中聴いていたある歌手について、「この人の歌は暗いんじゃなくて、闇の中から光を求めてるように思う」というファンのコメントを見つけ、それがとても私の気持ちにぴたりと合っていました。ずっと心にかかっていたところ、この言葉に出会いました。
あきらめてないからこそ苦しい、それでいいから。と言ってもらった気がしました。
#71
紅茶の香り
一区切りついたら、
今日はアールグレイを淹れよう。
丁寧にはできないから、
カップにティーパックを放り込み、
熱いお湯を注げば、
ふわりと華やかな香りが広がっていく。
大きく深呼吸して、胸いっぱいになるくらい、
その香りを吸い込んだ。
子どもの頃はこの強い香りが苦手だったけど、
今はこれでないと物足りなくなってしまった。
少し甘いものを摘んだりもする、
午後の密かな楽しみ。
そして一息ついたら、もう一仕事。
もうひと頑張り。
#70
愛言葉
「ただいま、帰ったよ。ドアを開けて」
「合い言葉は!?」
「合い言葉って何? 早く開けてよ〜」
「この前決めた合い言葉を言って!」
この前決めた……? 思い出せない。仕方なく、自分で鍵を開けようとすると、ドアチェーンがかかっている。娘の様子だと正解を言うまで開けてくれそうにない。
困ったな、買い物を抱えて自宅のドアの前で立往生してしまう。合い言葉、何だったっけ?
こないだテレビで、固定電話にかかってきた電話からトラブルに巻き込まれるニュースを娘と見て、合い言葉を決めようとなった。それは覚えてるけど、いっぱい候補が上がって、結局……、そうだ思い出した!
「合い言葉言うよー、カピバラ!」
「当たりー!」
カチャリとドアチェーンを外す音がする。ドアを開けると満面の笑顔。
「お母さん、覚えてたね!」
あれから何年か経つのに、いまだに家に電話をかけるたびに、合い言葉を言わされる私です。
#69
友達
元気かな、会いたいな。大好きだった友達。
大人になったら、あの頃のような友達ができなくなってしまった。
暮らし方が変わり、いつの間にか疎遠になってしまったけれど、あの頃の記憶は大事な思い出になっている。
でも、思い出のままにするんじゃなくて、
もう一度、連絡してみようか。
行かないで
「行かないで」
きっといつもそう言いたかったよね。
朝も早くて、お迎えも一番遅かった。
保育園の事務室で、大抵一人でおもちゃで遊びながら、待ってくれてたっけ。
あの頃、何も言わなかったね。
この子は大丈夫だと思ってた。
朝行く前には、必ずぎゅっと抱きしめていたけど、それくらいしか寄り添うようなことはできてなかった。
最近になって、先生にむちゃくちゃ怒られて怖かったとか、最後になるのが嫌だったとか教えてくれるようになり、小さなあなたがどれだけ耐えて頑張ってくれていたのか知って胸が痛くなる。
あの時、それを言わせなかった自分の余裕のなさが情けない。
でも、のんびりと元気に育ってくれた。あなたが頑張ってくれたから、今まで仕事を続けることができました。ありがとう。
#67