スランプななめくじ

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8/16/2024, 5:39:47 PM

僕は誰かの一番になりたかった。
僕は一番なんだと誇りたかった。
勿論好意的なものであって欲しかったけれど、
誰も僕を一番にはしてくれなかった。
どんな理由でも、ね。

もう選り好みはしないって誓ったんだ。
一番になれるなら、どんな事だっていいよ。
一番不細工だとか、一番空気が読めないとか、
それでもいいんだ。誰かの唯一になれるなら。



やっぱり一番にはなれなかった。してくれなかった。
何をするにも中途半端な僕は、一番になれなかった。

もう誰かに期待をするのはやめた。
誰かじゃなくて、僕にしよう。
僕の一番に、僕がなればいい。

大切な物を壊して、大事な人を傷付けた。
一番になるために、僕は躊躇わなかった。



鏡を見る。僕の全てを壊した奴の顔が映っている。

今僕はとても誇らしいよ。
この瞬間、僕は一番になったんだ。

唯一無二で、僕だけの一番。
この世で一番、僕自身が大嫌いだ。



おかしいな。これが僕の誇らしさ?
全然嬉しくないや。

8/15/2024, 5:17:20 PM

今日は、特段綺麗な形の月じゃなかった。
満月でも三日月でもない。中途半端で歪な月。
それでも何故か、目が離せなくて。
夜の海に浮かぶ孤独な月を、抱き締めたくなった。

誰もいない浜辺をゆっくりと歩いてみる。
夏とはいえ、夜の海辺は肌寒かった。
街の喧騒も、煌めきも、ここには何も無い。
あるのは打ち寄せる波の音と、月明かりだけ。
ひとりぼっちの海は、ただただ広かった。

足先を海に浸した。冷たい。
一歩、もう一歩。
揺らめく月に誘われて、身体は冷たく重くなっていく。
感覚が鈍くなってきた。でも不思議と怖くはなかった。

別に死のうと思って来たんじゃない。
ただ、月を眺めていた。それだけだったのに。
口に海水が入る。塩辛い。
涙と同じ味がした。

気が付けば泣いていた。
大声で泣きじゃくった。
誰もいない海の中で、気の済むまで泣き叫んだ。
理由なんてない。なのに、涙は止まらなかった。

泣き止まないまま、月明かりを求めて手を伸ばす。
届いた光をそっと抱き寄せた。微かに暖かかった。

8/9/2024, 7:12:23 PM

上手くいかなくたっていい。
その一言で、きっと私は救われたのに。

貴方の口から出てくる言葉は、
いつも私を責めて、貶して、嘲笑っている。
こんなことも出来ないのかと、蔑んでいる。

私に完璧を強要し、勝手に期待して、
結果に落胆し、出来損ないだと罵る。
この世の不条理を煮詰めたような言葉で、
いつだって私を傷付けるのだ。

私の心を引き裂く貴方から、一刻も早く離れたいのに。
不意に発せられる私への賞賛が、
思わず涙ぐむほどに嬉しくて。

貴方の言葉は、私を苦しめながらも、縛り付けている。

貴方は本当にずるい人だ。
どうせ、全てわかってやっているのでしょう?

8/4/2024, 5:31:39 PM

つまらないことでも、笑って聞いていて欲しい。
くだらないことでも、隣で楽しんでいて欲しい。
抱き締めて欲しいとか、慰めて欲しいとか、
恋人でもない君に望むのはおかしな事かな。
私は君のことが好きなのかな。

人肌恋しい時に君の顔が思い浮かぶのは、
つい君のことを目で追ってしまうのは、
君が隣に居てくれると落ち着くのは、
私が君のことを好きだから、なのかな。



恋って、こんなに淡白で冷たいものだったのか。
誰でもいい訳じゃないけど、君じゃなくても良いんだ。

純粋な愛情じゃない。邪な思惑で穢れている。
あわよくば、なんて言葉で詰まっている。
今だって君と手を繋ぎたいし、その胴に腕を回したい。
その頬に口付けたいし、今すぐ押し倒してしまいたい。
間違っても恋や愛と一緒くたにしていい感情では無い。

言い切ってしまおうか。
君は私にとって都合のいい人間だったんだ。
強気に出れば丸め込めそうで。
一線を超えても後腐れがなさそうで。
いざとなったらすぐにでも縁を切れそうで。

最低な思考だということは自認している。
それでも、君といる時が一番楽しくて。
私を晒け出せるのは、君の前だけだったから。

純愛とは程遠いけれど、呆れるほどに欲深いけれど、
私なりに君を好いているんだ。きっとね。

8/3/2024, 5:18:04 PM

君の目が伏せられた瞬間、
止められなかった思いが溢れた。

今日はいつもに増して辛かったんだ。
思い通りにいかなかった。許せないことがあった。
慰めて欲しかった。僕は悪くないと認めて欲しかった。
こんな僕の浅ましさを、君には知られたくなかった。

きっと君は優しく頭を撫でてくれるだろう。
柔く微笑んで僕を受け入れてくれるだろう。
知っているよ。誰よりも知っている。
そんな君だから、好きになれたんだ。
そんな君だから、知られたくないんだ。

君の目が覚めるまでには、いつもの僕に戻るから。
どうにか立ち直るから。この汚い涙痕を隠すから。
どうかその瞳に、こんな無様な姿を映さないで欲しい。
どうか今だけは、君の寝顔に縋ることを許して欲しい。

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