スランプななめくじ

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7/29/2024, 6:06:14 PM

君は心の強い人間だね。
初めて君という存在を認知した時、そう思ったよ。
どんな人間にも、何度だって手を差し伸べる。
助けを必要としている者を決して見逃さない。
誰かを救うためには自己犠牲をも惜しまない。
誰にも真似出来ない強さが、君にはあった。

そして君は、僕にもその手を伸ばした。
現状に絶望していた僕に君は笑顔を向けたんだ。
屈託のない笑み。飾らない綺麗事。
全てが眩しくて、暖かかった。

きっと僕でなければ、泣き崩れ感謝しただろう。
君という人間を、神か仏かと錯覚したかもしれない。
僕でなければ、心が穢れている僕でなければ、
君のその強い心に憎しみなど覚えなかったはずだ。

君の眩さに目を焼かれ、君の温もりに心を抉られた。
君の善意を、悪意と憎悪で返してしまった。
それでも君は、嬉しそうに受け取ったんだ。
それがまるで光り輝く宝石のように。
大事に大事に、何よりも大切だと言わんばかりに。



君は、たとえ嵐が来ようとも、
逃げも隠れもせずに立ち向かうのだろう。
その暴風雨を一身に受け止めるのだろう。
誰も傷付かないよう、自らを犠牲にして。
慈愛の笑みを、自然の脅威に向けながら。
そんな姿を見た全ての者は救われるのだ。
ただ一人、君から目を背けた僕を除いて。

7/24/2024, 1:48:23 PM

浮かない顔で微笑む君に、僕の手を伸ばした。

君は何時でも彼の顔を覗いている。
自分と合わない目線に傷付き、
彼の口から発される知らない女の名前に嫉妬する。
実に生きづらそうで、可哀想。
そんな君が、本当に可愛くて。

君の視界に僕が居ないことは分かっていた。
君が僕を彼と重ねて見ていたことも。

それでもいいんだ。それでいいんだ。
君の横に居られるなら、それでいい。
彼を好いている限りは、それでいい。

疲れた時には頭を撫でて慰めてあげるから。
辛い時は思いっきり抱き締めてあげるから。
僕を彼だと思って接していたっていいから。
友愛を超えるまでは、何をしてもいいから。

僕をなんとも思っていない、
彼を愛している君が好きだ。

僕達の関係性は友情でいい。
それ以上は望んでないから。

7/21/2024, 9:10:26 AM

ずっと私は自分の名前が嫌いだった。
私の名前の後には、いつも悪口が続くから。
私は頭が悪いとか、気が触れているだとか、
私の事を何も知らないくせに、私の名前を呼んでくる。
他人に呼ばれる自分の名前が大嫌いだった。

君は初対面なのに私の名前を呼んだ。
普通は苗字で呼ぶものでしょう?
馴れ馴れしくて感じが悪かった。
ただでさえ名前を呼ばれる事が嫌いなのに。

でも君は明るい声で、眩しい笑顔で私の名前を呼んだ。
私の名前の後にはいつも、私を慕う言葉が続いていた。
素直に嬉しかった。私の名前が輝いて聞こえた。
君が呼ぶ私の名前だけは、大好きになれた。



君が話せなくなった。
喉の癌だった。声帯を取ったらしい。

二度と君の口から音が出ることはなく、
二度と私の名前を呼ぶこともない。
それでも君はいつものように笑っていた。
私に向かって、とびきりの笑顔を見せるのだ。

君は泣いていないのに、笑っているのに、
どうしても涙を止めることが出来なかった。

君は呆れたように笑いながら、白紙に何かを書いた。
私に宛てたその紙には、大きく書かれた私の名前が。

それは、私の名前かわからないほど綺麗で。
見蕩れてしまうほど美しくて。
君の声で、君の手で、君の目で呼ぶ私は、
この世界の何よりも幸せだと思えたんだ。

今でも大切に仕舞っている。
どんな宝石よりも輝いている、私の名前を。

7/18/2024, 5:50:49 PM

傷付いた貴方しか愛せない私を許して。
私だけの貴方しか愛せない私を愛して。

貴方が血を流していいのは私の目の前でだけ。
貴方が涙を流していいのも私の目の前でだけ。
貴方に降り注ぐ全ての不幸の元凶が私であるために。
貴方の全てを否定し、痛め付ける存在であるために。

貴方を傷付けるのは、抗う意思を失わせるため。
貴方の頭を撫でるのは、私から逃がさないため。
貴方をずっと、私だけのものにするため。

傷付けられたら、喉を枯らして泣き叫んで。
責められたら、諦めたような瞳で見つめて。
優しくされたら、困惑しながらも微笑んで。
貴方の見せる表情の全てが、私だけのもの。

7/15/2024, 10:44:39 AM

「終わりにしよう。」

その一言で私と貴方の関係が消え去った。
この瞬間に私と貴方は赤の他人となった。
そんな恐ろしい話はないでしょう。
私は認めない。認めてたまるもんですか。

貴方との、辛く幸せで長く短かったあの日々が、
過去のものにされるなんて許せなかった。

終わらせましょう。
何時までも貴方を想い続けることを。
貴方と共に居られないこの人生を。

もちろん、貴方を連れて。

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