純粋で甘ったるいホワイトチョコレート。
嫉妬や独占欲で苦いビターチョコレート。
隠し味には恋に恋する盲目のブランデー。
ビターチョコを多めに入れて、白と黒を混ぜ合わせる。
黒が強いマーブルチョコ、貴方への想いにぴったり。
私は、誰かを愛したことも、
誰かを妬んだこともなかったのに。
貴方に出会ってから変わってしまった。
それなのに、分かってくれないなんて不公平よ。
苦くて苦しくて、それでも少しの甘さに酔わされる。
ああ、本当に貴方にぴったり。
今日だけは、私の愛を味わって。
過去は、霞んでいく。
飛び跳ねてしまうほど嬉しいことがあっても、
死んでしまいたいほど苦しいことがあっても、
いつの日か、鮮明に思い出せなくなる。
青春時代の切ない恋心も、
貴方と出会った時の気持ちも、
その時に得た激しく強い感情は、霞んでしまった。
過去に生じた確執なんて、今の私は覚えてない。
昔愛していた人だって、今更なんとも思わない。
私が表現出来る感情は、全て今の思いだ。
今食べているものがそこまで口に合わないこと。
今聞いている音楽が最近のお気に入り曲なこと。
今、ふと見た貴方の横顔に惚れ直したこと。
私が伝えたいことは、今の気持ち。
今までと同じ思いかはわからない。
これからのことなんてわからない。
それでも私は今、貴方を愛してる。
初めて君を知ったのは、花が咲き乱れる公園だった。
色とりどりの薔薇に囲まれた君は、
どんな花より美しく映っていて。
一目で心を奪われた。
それから何度か公園で会い、話しかけて、
気付けばピクニックをする仲になった。
君が案外笑い上戸な事、涙脆いこと。
知れば知るほどに、心が惹かれていくのがわかった。
何度目かもわからない、約束の日。
君との待ち合わせ場所に向かう途中で、
ふと目に留まった花屋。
店先に並んでいた真っ白な薔薇を見た時、
笑顔の君が頭に浮かんだ。
花を手に取るのに、それ以上の理由は要らなかった。
君は初めて知った時と同じように、
鮮やかな薔薇に囲まれて、僕を待っていた。
こちらに気付いて微笑む君に、
駆け寄りたい衝動を抑える。
震える手を押えて、君の前に白薔薇を差し出す。
花束なんて大層なものは、買えなかったけど。
この一輪に全ての想いを込めたから。
「好きです。出会った瞬間から、ずっと。」
どうか、この想いが届きますように。
最初はわからなかった。
君と目が合った時のこの感情の名前を。
ただ、顔に熱がこもって、胸が暴れ出す。
ろくに口も開けなくなるこの感情を、知らなかった。
君を知っていくうちに、分かってきた自分の想い。
君とずっと話していたい。君の1番になりたい。
だんだんと欲張りになっていく自分が、
ちょっと嫌いになりそうだった。
ようやく知った君への愛は、最初の頃より重たくて。
いっその事君を、どこかに閉じ込めてしまいたい。
恋慕はいずれ、執着に変わっていく。
つい、溢れ出てしまった気持ち。
「私だけを見てよ」
ため息とともに出た言葉は、
君の耳に入るには小さ過ぎて。
互いの息が混じり合う距離、唇には程遠く。
もの欲しげに伏せられた瞳は、僕の心を焦がす。
心臓の音までも伝わりそうな距離、吐息が聞こえる。
ぷくりと赤い君の唇に、そっと口付けた。
1度目は優しく、触れるだけのキスを。
2度目は力強く、紅が移るほどに。
3度目は、お互いの愛を確認し合うように。
指輪を嵌める前に、細い薬指に小さくキスをした。