なめくじ

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2/12/2024, 4:28:45 PM

過去は、霞んでいく。
飛び跳ねてしまうほど嬉しいことがあっても、
死んでしまいたいほど苦しいことがあっても、
いつの日か、鮮明に思い出せなくなる。
青春時代の切ない恋心も、
貴方と出会った時の気持ちも、
その時に得た激しく強い感情は、霞んでしまった。

過去に生じた確執なんて、今の私は覚えてない。
昔愛していた人だって、今更なんとも思わない。

私が表現出来る感情は、全て今の思いだ。
今食べているものがそこまで口に合わないこと。
今聞いている音楽が最近のお気に入り曲なこと。

今、ふと見た貴方の横顔に惚れ直したこと。

私が伝えたいことは、今の気持ち。
今までと同じ思いかはわからない。
これからのことなんてわからない。

それでも私は今、貴方を愛してる。

2/9/2024, 11:15:13 AM

初めて君を知ったのは、花が咲いている公園だった。
色とりどりの薔薇に囲まれた君は、
どんな花より美しく映った。
正しく一目惚れだ。

それから何度か見かけて、話しかけて、
ピクニックをする仲になった。
君を知る度に好きになっていく。

君との待ち合わせ場所に向かっていたら、
ふと目に留まった花屋。
店先に出ていた真っ白な薔薇を見た時、
笑顔の君が頭に浮かんだ。
花を買うには十分な理由だった。

花束なんて大層なものは、買えなかったけど。
この一輪に想いを込めたから。

「好きです。出会った時からずっと。」

どうか、伝わって欲しい。

2/5/2024, 2:42:01 PM

最初はわからなかった。
君と目が合った時のこの感情の名前を。
ただ、顔に熱がこもって、胸が暴れ出す。
ろくに口も開けなくなるこの感情を、知らなかった。

君を知っていくうちに、分かってきた自分の想い。
君とずっと話していたい。君の1番になりたい。
だんだんと欲張りになっていく自分が、
ちょっと嫌いになりそうだった。

ようやく知った君への愛は、最初の頃より重たくて。
いっその事君を、どこかに閉じ込めてしまいたい。
恋慕はいずれ、執着に変わっていく。
つい、溢れ出てしまった気持ち。

「私だけを見てよ」

ため息とともに出た言葉は、
君の耳に入るには小さ過ぎて。

2/4/2024, 2:39:27 PM

互いの息が混じり合う距離、唇には程遠く。
もの欲しげに伏せられた瞳は、僕の心を焦がす。
心臓の音までも伝わりそうな距離、吐息が聞こえる。
ぷくりと赤い君の唇に、そっと口付けた。

1度目は優しく、触れるだけのキスを。
2度目は力強く、紅が移るほどに。

3度目は、お互いの愛を確認し合うように。
指輪を嵌める前に、細い薬指に小さくキスをした。

2/2/2024, 11:00:29 AM

空が紫色に変わる頃、彼に内緒で家を出た。
小道の水溜まりに映るのは、痩せこけた私の顔。
こんなだから、彼は浮気したのよ。
お洒落も流行も分からないこんな私が、
彼の1番なわけが無い。

分かってるのよ。私が悪いの。
それでも、傷付いてしまったの。
彼への愛が、欠けてしまいそうで。
何かから逃げ出すよう、静かに、慌てて、飛び出した。

見てしまったのは、彼の後ろ姿と、綺麗な女性の顔。
仲睦まじそうで、つい、お似合いだと感じてしまった。
そして、浮気されているのかと悟った。
責める気はない。止める気もない。
私に出来るのは、彼の邪魔にならないことだけ。

だから私は、自分から彼の元を離れた。

でも、だけど、これだけは許して欲しいの。
リビングの小さな円卓に置いた勿忘草。
彼はその花言葉を知らないでしょう。
そして、調べることもないでしょう。
だから置かせて欲しいの。
淡い青色の、小さな花を。



夏まででいい。私を忘れないで欲しいの。
貴方を心の底から愛していた、私の事を。

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