スランプななめくじ

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空が紫色に変わる頃、彼に内緒で家を出た。
小道の水溜まりに映るのは、痩せこけた私の顔。
こんなだから、彼は浮気したのよ。
お洒落も流行も分からないこんな私が、
彼の1番なわけが無い。

分かってるのよ。私が悪いの。
それでも、傷付いてしまったの。
彼への愛が、欠けてしまいそうで。
何かから逃げ出すよう、静かに、慌てて、飛び出した。

見てしまったのは、彼の後ろ姿と、綺麗な女性の顔。
仲睦まじそうで、つい、お似合いだと感じてしまった。
そして、浮気されているのかと悟った。
責める気はない。止める気もない。
私に出来るのは、彼の邪魔にならないことだけ。

だから私は、自分から彼の元を離れた。

でも、だけど、これだけは許して欲しいの。
リビングの小さな円卓に置いた勿忘草。
彼はその花言葉を知らないでしょう。
そして、調べることもないでしょう。
だから置かせて欲しいの。
淡い青色の、小さな花を。



夏まででいい。私を忘れないで欲しいの。
貴方を心の底から愛していた、私の事を。

2/2/2024, 11:00:29 AM