酷く辛い目にあった時、理不尽に否定された時、
無性にあなたに会いたくなる。
弱い心があなたを求める。
あなたは優しいから、私を救い、支えてくれる。
何も言わず、私の頭を優しく叩くだけ。
何も聞かず、私の涙をそっと拭うだけ。
私はその優しさに、何度も救われました。
それでも、今日は、今日だけは。
私が悪かったのです。すべて私の所為だったのです。
慰めてもらう資格なんてなかった。
あなたに会いに行ったのが間違いだった。
だってあなたは全てを赦してくれる。
私の罪を、何も言わずに、何も聞かずに。
それがとても、苦しかった。
一言でよかったのです。
私を一言、罵倒してくれたら。
そしたらきっと、こんなに辛くはなかった。
あなたの優しさが、酷く沁みるのです。
愛する彼に振られた深夜2時。
夜の公園に呼び出され、放たれたのは別れ話。
彼の顔は、憑き物が落ちたように晴れやかだった。
虚しい。寂しい。悲しい。
月は私を煌々と照らす。いつもより眩しく感じた。
心がぽっかり空いたような、何かを失ったような気分。
無意識に足を進めた先は、家ではなく夜の街だった。
ふらふらと酒も飲んでいないのに千鳥足で彷徨う。
肩をぶつけ、怒鳴られ、荷物があたり、
よろけた先に居た見知らぬ男。
誰でもいい。なんでもいい。
心に空いた空洞を埋めて欲しかった。
彼じゃなくても良かった。
目配せで伝わる夜の雰囲気。
相手の顔なんてろくに見てない。
ただ、この切なさを紛らわすための相手。
それ以上でも以下でもない。
この一夜だけの関係が、心地良かった。
月明かりの届かない所まで、手を絡めて歩き出す。
深夜の闇に溶け込んで、心の傷を塞いで欲しい。
彼のことを忘れてしまえるように。
彼以外でも愛せてしまえるように。
小さな頃から写真を撮るのが大好きだった。
大人になってもそれは変わらず、
いつしかプロの写真家に。
君はいつも応援してくれて、モデルにもなってくれた。
デート中、カメラを手にしたって怒らないし、
一緒になって景色を撮ってくれる。
こんな素晴らしい人、なかなか出会えないって、
ちゃんと思ってた。
耐えられなかったんだ。自分の欲求に、衝動に。
写真より君の方が好きだけど、写真も君も愛してる。
だから、なんて言い訳は、言える訳もない。
君の泣き顔を、撮ってしまった。
太陽を背に、静かに泣く君が、酷く美しかった。
逆光で君の顔は写っていなかった。
とんでもない悪夢を見た。
君が僕の隣から居なくなる夢。
酷く恐ろしくて、冷や汗も涙も止まらない。
急いで飛び起きたら、いつも通り、君が隣で寝ていた。
安心と同時に、どうしても君の瞳が見たくなった。
すやすやと眠る君を起こすなんて、最低な事だけど、
こんな夢を見たんだって、泣きついてもいいかな。
どうか優しく、慰めて欲しいんだ。
タイムマシーンがあったなら、
貴方に再び会えるのでしょう。
それでも過去に戻りたいとは、
貴方にもう一度会いたいとは、
口が裂けても言えないのです。
初めて出会った時の胸の高鳴りも、
貴方と話していた時のなんとも言えない幸福も、
薄れてしまったのです。忘れてしまったのです。
私はこんなにも薄情な人間だったのです。
貴方に合わせる顔がない。
貴方の声も、もう思い出せないのです。
それでも貴方を愛していたのは確かです。
貴方に振られた時の胸の痛みも、
もう二度と会えないと知った時の絶望も、
全て、嫌に鮮明に、憶えているのです。
この苦しみを、貴方を愛していたという証明を、
大事に仕舞っておきます。
私はあなたを確かに愛していた。
けれど今は愛せるかわからない。
それならば、幸せで辛かったあの記憶のまま、
閉じ込めておきたいのです。