みみかゆい

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8/23/2023, 10:58:23 AM

いつからだろうか。

海へ行くのが面倒に感じるようになったのは。

子どもの頃はあんなにも夏が待ち遠しかったのに。

億劫になりながらもビーチパラソルを広げていると、

目の前を金髪のお姉さんが通り過ぎていって、

来年もまたここに来ることを決意した。

8/22/2023, 10:50:24 AM

裏返しになった世界。
ここでは全てが逆さまになる。

「着席!休め!ありがとうございました!起立!」

「はい、それでは授業を終わります。教科書の136ページを開かないでください」

「今日の内容は特に重要ではないので、みなさんしっかりと聞き流してくださいね。期末試験は0点目指して頑張りましょう」

「いいえ〜」

「…はい、ここまでの内容で何か質問がある方は手を下げてください。下げてくれた子から順番に先生が聞いて回りませんので」

「それでは授業を終わります。あと、次回も宿題をやってきた人は放課後追試をさせますよ。みなさん宿題はちゃんと忘れてきてくださいね」

「着席!休め!よろしくお願いします!」

8/21/2023, 12:38:28 PM

突如上空から舞い降りた白い円盤。

円盤から溢れ出した数多の黒い影は、瞬く間に青空を覆い尽くし大地に大きな影を作った。

奴らの名は鳥人族。
背に生えた大きな翼で鳥のように空を飛び、人間よりも高い知能を持つ。

鳥人族たちは高度1000メートルまで降下すると、そこから温度1000℃の光線銃を放つ。
あっという間に大地は火の海となり、この星は鳥人族のものとなった。

それからしばらく月日は流れ、やがて夏になった。

鳥人族たちは地上の至る所に大きな施設を建造し、かつてこの星に住んでいたいくつかの生き物たちを養殖することにした。

この星の生態系に最低限必要な生き物だけが地上に住むことを許され、あとは全て処分された。

養殖される生き物たちは最初こそ抵抗していたが、やがて自らが生き物であることを忘れ、いつしか養殖物として自覚するようになった。

そんなある日、飛んでいた鳥人族たちが落下して命を落とす事故が何件も発生した。

鳥人族が体の一部である翼の扱いを間違えるなんてことは、魚が泳ぎ方を忘れるくらいあり得ないことだ。

しかし、救急のため地上から駆けつけた鳥人族たちも次々と命を落としていく。

何かこの星特有の伝染病があるのでは無いかと、医療に長けた鳥人族たちが原因解明を急ぐが、病原体は見つけられずいつしか彼らも命を落としていった。

次々と倒れていく鳥人族たちはその理由を見つけられず、
とうとう、彼らは絶滅してしまった。

この星で唯一生き残ったのは、鳥人族の食料として施設で育てられた養殖物たちだった。
彼らの施設は常に快適な温度に保つように設定されており、この星の夏の厳しい暑さを乗り越えることができたのだ。

夏バテには気をつけよう。

8/20/2023, 2:14:20 PM

さよならを言う前に、
貴方に今までの感謝を伝えたいと思います。

私がまだ18歳の頃、
当時大学生だった私は日々の生活費を稼ぐため、とあるチェーンの飲食店でアルバイトをしておりました。

深夜の1時まで営業するその店で私は連日のように閉店まで働き、心も体も疲弊しきったある日曜の閉店5分前に貴方はぞろぞろと十数名の客を連れて現れました。

店内は私と店長の2人きりで、あの時どれだけ大変だったかは貴方もよく理解しているでしょう。
絶望や怒りなど通り越して、涙が溢れてきたことだけは今でも覚えています。

最後に会計をしてくれた時、貴方は「ありがとう」とニッコリと笑っていましたが、私がどんな顔をしていたかは今ではもう覚えておりません。

その日を境に貴方は毎週のように来てくれるようになりました。
毎度、同じ人数を引き連れて。

そんな出会いだった私と貴方が、今では同じ会社で勤める上司と部下の関係になっているだなんて、当時の私は夢にも思っていなかったでしょう。

因縁じみた出会いだったからこそ、別れることに名残惜しさも感じています。

今まで、本当にお世話になりました。

さようなら

8/19/2023, 3:14:34 PM


もう夜も更けたというのに、
アイツの空模様はまるで快晴だった。

「よし、次はあそこ行ってみようぜ」

街のネオンに誘われてふらふらと歩く様子は、街頭に集まる蛾のそれだ。
さっきから石油王もドン引きしそうな額の領収を何度も切っているのだが、本当に大丈夫なのだろうか。

「心配すんなって」

不安になる私をよそに、アイツは次の店に吸い込まれていく。
このまま先に帰ろうかとも考えたが、流石に置いていくのはバツが悪く、渋々後を追う。

『いらっしゃいませ!』

店に入ると、煌びやかな格好をした女性たちが笑顔で迎え入れてくれ、全員がテレビにも滅多に見たことのないくらい美しかった。

俺はあまりにも突然の出来事に空いた口が塞がらなかった。
何故ならその女性たちの中に紛れて、際どい格好のアイツが出迎えてくれていたからだ。

『お誕生日、おめでとうございます!!』

灰色だった俺の空模様は、一気に快晴となった。

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