君の奏でる音楽は、今や世界で認知されるようになった。
独特なメロディと世界観が唯一無二だなんて言われているけれど、
俺には、そんな風には聴けなくて、
ただ新曲が出る度に、負けられるかって今日も踠いてる。
上手くいかなくたっていい。
誰にだって失敗はあります。
コンピュータだってミスをするんです。
失敗を悔やむのを恐れて何もしないより、思いっきり失敗してたくさん学んでやりましょう。
そうやって少しずつでも成長していく貴方がいれば、周りの野次なんて気にしなくたっていいんです。
『______と、私は思ってます』
『はいっ、という訳で、ラジオネーム左手にペンチさん、お悩み相談ありがとうございました。私の言葉が少しでもペンチさんの力になれば嬉しく思います。さて、続いてのコーナーは……』
赤と青の2本の線と、進む秒針の針。
高層ビル十六階の大広間、閉じ込められた三百七十四の命。
震える左手で握った緑色のラジオペンチ。
上手くいかなくたっていい。
ラジオのお姉さん、ありがとう。
貴方に勇気と力を貰いました。
私と貴方を繋ぐ赤い糸を信じて、私は青い線を切断することにします。
そして青い線に当てたペンチの刃を、ゆっくりと閉じた。
すべて最初から決まっていた。
この町で生まれ、この家で暮らし、この学校で、この人たちと…全て予定調和、私の人生なんて真っ直ぐ敷かれた一本レールみたいなものだ。
「それは驕りだよ」
崖から海辺を眺めていると、背後から何者かに声を掛けられた。
ここは滅多に人が来ない場所なのに、相変わらず自分はツイてないなと思ったが、見届け人がいるのも悪くはない。
私が海へ飛び込もうとすると、それを引き止めるように男は喋り出す。
「今君は、過去選択した結果の連続でそこに立っている」
「過去とはあくまで結果でしか無いのだから、振り返ると一本なのは当たり前だ」
「君の人生がつまらないのは、後ろばっか見てるからじゃあないのかい」
「は?」
見知らぬ男に説教をされた私はついカッとなって男に殴りかかってしまった。
男はしたり顔でそれをあしらい私を返り討ちにすると、どこかへ去っていった。
#最初から決まっていた
僕らの太陽は無くなった。
突如始まった都市開発。
一本、また一本と高層ビルが増える度に、町を走る車の数は増えていった。
やがて渋滞を無くす為、町の上にビルをなぞるように造られた道路は次第に拡大していって、いつしか巨大な迷路のようになっていった。
その迷路の上にコンビニや娯楽施設ができる頃には、僕らの住んでいた場所はすっかり迷路の下敷きになってしまって、一年中夜の町だ。
マンションに住むお金持ちは増えたが、元より住んでいた僕らは相変わらず貧しいまま、
僕らの町には太陽も、希望の光も無くなってしまった。
夜寝る前にダウンロードを開始させ、目が覚めるまでに完了させる。
そうすれば明日の休日は朝から心気なく新作ゲームを堪能することができる。
なんて天才的な閃きなんだ。
忙しい現代社会に於いて、もはや睡眠中さえ無駄なく活動できるようになった私を、みんなも是非参考にして欲しい。
などとうとうとしながら考えていると、気がつくと朝になっていた。