「影絵」
「ねぇ、あの子の絵綺麗じゃない?」
「本当だ!みよ見よ!」
絵を描くのが好きだった。でも、正直自分でも思うくらいには下手。僕とは別の子は上手くていいなぁと嫉妬してしまう。いっぱい褒められて、賞なんかも貰っちゃったりして。
影がひとつかかる。
将来、絵を仕事にしたい。小さい頃よくそう謳っていた。僕は世界一の画家になるんだって。いつのまにか言えなくなっていった。現実的じゃないから。それに僕、才能だってないし。
影がまた増える。
絵を描いていて馬鹿にされたことがある。気色悪いとか下手くそとか。まぁ、実際その通りだから僕は何も言い返せない。なんだか申し訳なくなっていく。
影が、ふえる。
中学生の作品コンクール。とは言っても小さなコンクールだから応募したら必ず展示される。僕の絵も例外ではなかった。
「ねぇあの子の絵、なんか汚くない?」
「なんと言うか、暗いと言うか…。」
僕の絵に指が刺さる。指の影がかかる。暗くなる。
小さな頃の絵は色彩豊かだった。でも気づけば暗くてもやがかかるようになった。それは、僕の心に影がかかるたび増えていった。影のように付き纏って、離れなくて、飲み込まれた様。
あの子の方が綺麗と呼ばれた絵を見た。綺麗で確かに輝いていた。
まるで彼方だけスポットライトが当たったかのように。僕の絵はスポットライトの影のように。
「ひとひら」
今から遊びに行こう。と夜遅くに届いたメッセージにあった人気のない公園に着くと私の親友が桜の花びらの絨毯に寝転んでいた。
「葵。なにしてるの?」
「んー?地面に落ちた桜の花びら数えてるの。」
桜の花びらは絨毯と先ほど述べたように、数えきれないほど散らばっており、数えるには無謀な数に思えた。何故数えているのか。そう尋ねようとしたところ、葵が遮った。
「桜の花びらってさ、流れ星みたいだよね。よく言うじゃん。地面に落ちる前に手にした桜の花びらは願いが叶うとか。」
「でも実際、流れ星って宇宙の塵とからしいね。それが大気圏に入ろうとしてー燃えてーみたいな?要は塵に私たちは願いを託してるんだってねー。そう思うと馬鹿馬鹿しいや。」
葵はそう言った後、数えていたたくさんの花びらを私に思いっきり浴びせた。突然のことでびっくりする。
「でも、桜の花びら。要は地球の方の流れ星は残り続けてくれるし、流れ星としての短い役割を終えた後も輝き続ける。ましてや塵でもないしね。こっちの方がずっと良くない?」
「なにそれ。…。でもまぁ確かにその通りなのかもね。」
私の体に塗れた夜桜たちは月に照らされ、本当に星のように輝いた。自然と涙が溢れる。
「…宇宙飛行士はやっぱりだめだった?」
「…うん。」
私は実は宇宙飛行士になりたかった。でも、学費の関係で親に諦めて欲しいと言われた。私も親に負担はかけたく無かった。だから、やめた。私は地球で遠い星を見るしか無かった。今日、葵が私を呼んだのも、こんな話をしてくれたのも全部私を慰めようとしてくれていたのだ。
私は落ちてくる桜の花びらを手に乗せた。この桜の花びらは夢として選ばれた。人間で言う勝ち組の人だ。私は落ちた方。でも、ここなら輝き続けるられる。
ひとひら。ふたひら…。
私の夢が流れ星のように選ばれる日はもうこないから。宇宙の流れ星にはなれないから。地球の落ちた星として輝き続けなければならないのだ。
「遠い約束」
「あー、あー。聞こえますか?」
「うん。聞こえるよ。」
受話器から聞こえてるくる鼻を摘んだ時のような霞んだ声。どこかで聞き覚えのある声だ。
「えー、こちら冥王星より。今日もこちらは快晴です!どうぞ。」
「こちら地球。こちらはただいま雨でございます。どうぞ。」
相手は冥王星に住んでいる。私たちは星と星で交信しているのだ。今日は初めて繋がった日。
「さっそくで申し訳ないのだがお願いがございます!今度、冥王星に来て地球にあるキャンディを持ってきてくれないか?どうぞ。」
「いいけど遠いよ?行けるかな。」
何年後になるのかな。
「何年でも私は待つよ。そうだなぁ、5年後とかは?まぁでも、絶対、何年先でも会いにきてね。約束だよ。」
「うん。…守るよ。じゃあ、またその日に。」
今日はその約束を果たす日。
私はあの日病院にいた。小学生3年くらいかな。大きな病気にかかって手術の日が近づいていた。
正直な話をすると冥王星と交信したなんて当たり前に違くて。私の親友からの電話だった。
私は正直手術は失敗で死ぬんだ。と、希望なんてなくて。数年後、生きてる自分が想像出来なかった。そんな私を知っていたからあんな電話をかけてきたのだ。子供っぽくて、馬鹿らしくて、直接じゃない遠回り。でも、約束は守らないとね。
ピンポーン
自分の家の隣の家。チャイムを押すと親友が出てきて驚いた表情をした。
「なんだか道に迷っちゃったみたいで冥王星まで随分時間、かかっちゃったね。…どうぞ?」
親友は笑って、涙を流し始めた。その手に星型のキャンディを握らす。
私達の近くで、でもとっても遠い約束は今日叶ったのだ。
「小さな幸せ」
テーマとはあまり関係ないし、ただの自分語りで楽しくない話です。気分ではなかったら飛ばしてね。
私はなにかと自分の出来ないことに絶望する。何もできない自分が悔しい。その度、自分は必要か考える。
自由に書いていい作文の課題。コンクールかなんかに出されるものだった。私は物語を書いた。いじめについて訴える内容だった。先生に出すと苦笑いされたのをよく覚えている。結局ほとんどがコンクールに出されているところ、私は出してもらえなかった。
次の年も同じ課題があった。私は諦めがつかなくて、きっと文章力がまだ未熟だったのだと思い、自分なりに調べて、何度も考え直して書き上げた。友達に見せて欲しいと言われたので見せたら笑われた。自分の文章が恥ずかしくなった。でも提出しなければならないので出すと、文章を直せと言われた。でもあえての表現でこのように書いてるのだと訴えるとまた苦笑いで。またコンクールに出してもらうことは叶わなかった。
これに関しては素直に直さなかった自分が悪い。私は被害者というわけでもない。というか、結局は自分の実力不足。それが分からされてしまったのが辛かった。
弁論大会に出たときはもっと辛かったな。私の時だけ拍手が小さく感じた。結果は参加賞みたいなもので付き添いの先生は慰めの言葉も、がんばったねの言葉も一切かけてくれなくて。期待した私が悪いのですがね。
他にも、書ききれないくらいいろんなことがあってだんだんと文章を書くことも、自分の思ったことを表現するのも億劫になっていった。文章を最初から上手く書ける人なんていないし、みんな馬鹿にされながらも努力したから今の小説家さんたちは文章でお金を稼いでいるのだと思う。こんなことで挫ける私は馬鹿みたいだ。
両親からも小説家はやめろと言われ、貴方はまともな文章書けないでしょと言われ、その夢は諦めたと言ってしまった。
…でも結局今ここで文章を書いてしまっているんだよなぁ。文才も何もないくせに。諦めは結局つかなかったみたい。ここだと気が楽。いつもみなさんからのもっと読みたいが楽しみ。こういうことを小さな幸せっていうのかなって思う。
夜この辺りの時間に書けば辛いのが幾分か減るし、腕を切るのも、しぬのも今じゃなくていいかなとも思える。今も書いていてそうだ。書き始めの時はボロ泣きでしたもん。もう少しだけ文章を書くことに依存してみることにする。
いつも本当にありがとうございます。重い話でごめんね。みんなもこの時期の不調にはお気をつけて。たいして有名人でもなんでもない私だけどみなさんの小さなどころではない大きな幸せ、願っています。
またね。
「春爛漫」
春爛漫ってなんだか寂しくなる言葉だね。私はこの言葉を見た時別れを感じる。
親友でも、彼氏でも、ただのクラスメイトも、別れの時が来てお互い泣いて、でもにこやかに桜の元、春の木漏れ日の中で手をふって別れていく。また合うのかも分からないまま。そんな情景が思い浮かぶ。
私も最近別れがあって、思い出すとやはり、春爛漫と言う言葉が似合う。
本当は大好きな言葉だったから物語を書こうと思ったけど自分の別れ達ばかり思いついて結局書けなかったや。
これも春爛漫かな。