たまに散歩をしているのだが、最近、猫3匹と連続であったことには驚いた。しかも逃げないで、ずっと目を合わせてくれた。あと、どこかの家から突然犬が出てきて後をつけられたことかな。さらに、散歩コースに少しばかり牧場を入れて歩いていたのだがいつもは居ない馬にも会った。
その日は想像するような秋らしい日で葉は色づき、夕暮れが赤っぽくて色んな家からの夕飯の匂いが漂ってくる。動物達にもこんなにあって、これから物語が始まるみたいと思った。
なんやかんや、秋の散歩が一番好き。今度はキンモクセイの匂いでも探しに行こうかな。そうしたら今度こそ物語でも始まるかもね。
「moonlight」
深夜2時頃、ようやく課題が一区切りついた。描いていたのは油絵。高校の美術科の生徒として展示会に絵をみんな出すことが決まった。
正直言えばこんな絵描きたくも展示されたくもない。
親の反対を押し切ってようやく入った美術科。最初の頃は毎日楽しかった。使ったこともないような画材に囲まれ、見たこともないような素晴らしい感性の同級生、それをひとまとめに確実な知識を与えてくれる先生。私がようやく美術の中で生きていることを実感出来た。みんなにならって素晴らしい作品をいくつも描いた。
でもそのうちぶつかるのは才能の壁。よくある。私の心は油絵の具のようにキャンバスに溶け込んでくれるわけもなく、ただただどす黒く渦巻いた。
正直、描ける描けないはどうでもよくて、周りの期待をキャンバスと同じように私がドロドロに塗り替えてくことが苦しかった。そんなことを思う時点で私は美術にはむいていないのだろうけど。
まだ入学して半年。自分には可能性があると思いながら展示用の作品を描くなんて吐き気がしてくる。
「あ…。」
ふっと部屋の明かりが消えた。電池切れだろうか。デスクライトでの光源を頼りに描いていたものだから暗くなって怖くなった。自分みたいに思えたから。
あーもう今日は寝ちゃおうかな。このまま描いてもな、また描き直すことになるだろうし。
ベットに向かうと部屋にまさに一筋の光が入った。光の方をみると昼頃から開けっぱなしにしていた窓から月明かりが差し込んでいたみたいだ。
光が当たる先は私のキャンバス。しかし、まるでアニメのように私の絵に光が差し込んでいるわけでもなく、キャンバスの背、イーゼルの方に光が当たっていて私の絵は影でなにも見えなかった。
作品が、完成したと思った。
そのキャンバスと月明かりはまさに私そのもので私の描きたかったものだと思った。だが、当たり前にこの光景を作品としては出せるわけない。
でも、描ける気がした。私はこのキャンバスにそのまま私の心を描けばいい。これをみてはっきり分かった。私が描きたいのは唯一向かい合い続けた私の鏡みたいなキャンバス。気まぐれな光ではない。
そんな気まぐれな、私とは別世界な光がキャンバスという名の私自身を背中から暖かく支えて続けてくれた。
タイトルは「moonlight」きっと、誰よりもいい作品になるだろう。
「既読がつかないメッセージ」
ある日突然、何気なく送っていた友へのメッセージに既読がつかなくなった。前までは割とすぐ、遅くても1時間で返ってきていたのにもう一日が過ぎた。
忙しいだけならいいけど、事故とか事件だったらと頭に不安がよぎる。最近物騒な事件も多いわけだし。そんな状態でスマホを眺めていると電話が鳴った。
「もしもし?ごめん。メッセージ見れてなくて。急な出張で返してる暇なかったわー。」
安堵した。とりあえず元気ならいいか。
「そっか。でもなんで電話?いつもメッセージで返してたでしょ?」
「あー。それなんだけどさ。今度から電話でいい?その方楽じゃん。」
「なんでさ。いっつも恋人とくらいしか電話してなかったのに。」
懐かしいな。こいつが恋人とラブラブだった頃はほんと話してもくれなかったのに。
「覚えてたんだ。じゃあメッセージにする必要はないでしょ?」
その日からもう「友」からは既読がつかなくなった。
「8月31日、午後5時」
公園に夕方のチャイムが鳴り響く。
「もう今日で夏終わりだね。明日からは学校かぁ。」
「ねぇねぇ。このまま家に帰らなかったらさ、まだ夏休み続くのかな。」
あのチャイムの音で帰っちゃうことで夏は終わるなら帰らなかったらきっと夏は終わらない。
「何バカ言ってんのさ。俺そろそろ帰んないとかーちゃんに怒られる。じゃあな、また明日。」
公園には私1人だけぽつんと残された。まだチャイムが鳴っている。地面には影が滲んで家の方向に向いている。
私だけ夏に取り残されてるみたい。
最近というかちょっと前に自分の誕生日だった。信じられないくらい酷い一日で終わっちゃったんだけどね。午前までは友達に祝ってもらえて幸せだったのになぁ。兄は帰ってこないし、母はそのせいで不機嫌だし。家族にまともに祝われずに1人寂しく寝た。まぁ友達に祝われただけマシではあるけどね。
何故か分からないが、私の誕生日の日は必ず酷い一日になる。夫婦喧嘩が起きたり、祖母がヒステリック気味になったり、父が出て行ったり。せめてその日だけでもみんな我慢してくれたらいいのにって毎年思ってしまう。同時に私が産まれたとかみんなどうでもいいんだなと思う。誕生日前に居なくなろうと思ったけど踏みとどまったのにな。誰も褒めてはくれないんだよな。
暗い話で申し訳ない。思い出してどうしても吐き出したくなってしまったもので…。でも最近は悪いことばかりではないですよ!珍しくやりたいゲームが出来て、買いに行く予定。店舗でわざわざ買いに行くなんて久しぶりでそれだけで楽しみになってます。