脳裏
「じゃあね」
そんな彼女の言葉が脳裏をよぎった。
あの言葉に意味はあるのかそれとも単なる別れの言葉か、それをひたすら考えては眠れなくなってしまった。
明日にはいつもの彼女があたかも当たり前かのように現れてくれるのか、それとも…
自身の感情達が討論を重ねに重ねやがてその討論は行き着く先を知らず感情達はごちゃ混ぜになる。
それは不安となって、自身を蝕む。自身の感情に自分が蝕まれるなんてとても滑稽なことだ。彼女がそんな私を見ればきっとバカだなと言うだろう。けれど今その彼女はいない。
放課後
授業が終わってそれぞれが部活に取り組んでいる。けど私は帰宅部だからそんな景色を見ずにそそくさと帰るのが日課だった。ただ今日は学校でしないといけない課題があったから、初めて放課後に居残りをすることになった。初めて居残った放課後はとても静かに感じた。もっと部活の音で慌ただしく騒がしいものだと思ってた。以外にも外から聞こえてくるのは多少の掛け声と吹奏楽と軽音楽の演奏だけ。外の音がなければこの教室は時間が止まったように静かになるに違いない。
カーテンを開けているから、夕方の日差しが私を明るく照らす。外の世界は幻想的だ。何事も視点を変えれば全てのものが異世界のように変化する。人は不思議だ、ひとつの景色をいくつもの新たな世界に変えてしまうのだから。私は最近流行りの曲を聴きながら、課題と向き合った。
奇跡をもう一度
神様、お願い。私の友達を助けて…
私の友達は死にかけの私を助けるために自分自身を生贄に私を助けた。そのせいで友達は目を覚まさなくなった。もう10日は目を覚ましていない。ご飯も何も食べてないから、このままじゃ友達が死んでしまうかもしれない。
なんで、なんで、私なんかを助けたの。自分が死ぬかもしれないのに。それに、私が助かっても、君がいなきゃ本末転倒だよ。だからお願い目を覚まして。
一緒に生きようよ。好きなことしようってこれからも一緒って約束したじゃん。こんな風に約束破るのは反則だよ。だから目を覚まして……
お願い神様、私の友達を助けて。
たそがれ
世界をつまらなく思っている私は世界からどんな風に見えているのか。つまらない人間か、傲慢な人間か、ワガママな人間か……まあどう見られていても私にとってはどうでもいい事だ。学校の先生も友達もみんなみんな頭がおかしい。こんなつまらない世界を楽しいなんて頭がおかしいよ。実はみんな、本当はつまらないと思っているけど行動に起こせないから楽しいって言っているのか
それか本当に楽しんでいるのか、それもまあどうでもいいことだ。世界がつまらないのはただ何も起きてないからつまらないだけじゃない。みんながみんな誰かの思い通りに動いているのがつまらないのだ。だからきっと外れている人を見れば私は少しでも世界が変わって見えるかもしれない。けど日本ではやっぱりそんな人ほとんど居ない。みんながみんな誰かの手のひらの上で踊ってる。気持ち悪い、反吐が出る。いつも思う、英語の授業で先生の英語を全員でオウム返しをする。これは普通に受けていたらきっと気にはならないと思う。けど、不意に読むのを辞めた時違和感を覚える。みんながみんな同じ言葉を繰り返し全員で合わせて読む。良く考えれば気持ち悪いことだ。だからそんな世界が嫌だ。つまらない。
いっその事この川に落ちてみれば世界が変わるかな?
そう思い柵に手をかけたその時。自分の目に光が差し込んできた。光が落ち着いてきた時見てみると、そこには世界の美しい姿が形を表した。これを人は黄昏と言うのだろう。オレンジ色の太陽と青い色の空が重なり合い美しいグラデーションを生み出していた。これほどまでに美しい景色を私は初めて見た。ああ、まだこの世界にはこんなにも楽しいものがあったのか。この世界のほとんどがつまらない。けれど自然が生み出したこの世界は人の世界とは比べ物にならない美しさがあった、さらに私が人の世界で求めている自由もあった。自然の世界はどんな事があっても不思議では無い世界。
この美しい景色を思い出す度にこの世界が少し楽しく感じた。
きっと明日も
もし、またこの世界に緑が戻ってきたら、世界はもっと鮮やかになるはず。だから私は探しに行きたい。家族のために、未来の子供たちのために、今を生きる私たちのために。世界が鮮やかになれる世界を見つけに行く。明日が続く限り私たちには生きる資格もこの世界で明るく暮らす資格も全てある。そう信じているから。私は行く。何年かかるか分からない。それでも必ず見つけて、これからの未来を明るく鮮やかに変えてみせる。世の中に絶望した人、次々に眠りにつく人たちのために、明るく未来のある世界を作ってみせる。きっと明日も、世界は青一色で染まっている、けれど、諦めたりはしない。きっとこの世界のどこかで生命を輝かせ続けているそう信じる。待っててね、未来の私。