先輩は今何しているだろうか。
僕は毎日夜になると先輩のことを思い浮かべてしまう。
それも無理は無いのかもしれない、何せ先輩と初めて会ったのが夜だったのだから。
ーー10年前ーー
先輩と出会ったのは僕が小学生の時、両親と喧嘩して家を出た時だった。あのときの僕は近所で噂のガキ大将だった。そんな僕だったから先輩に声をかけられた時も暴言を吐き散らしてしまった。
けど、先輩はそんな僕でも優しく声をかけてくれた。
それが先輩と僕の初めての会話だ。
あまりにも最悪で普通の人なら嫌ったり逃げたりしたのだろうけど先輩は僕と目を合わせてしっかり話を聞いてくれた。
それから僕たちは毎日のように話すようになった。ただ不思議だったのは夜にしか会うことができないということだけだ。
それに関して僕は特に何も聞かなかった。いや聞けなかった。
あのいつも明るく優しい笑顔の先輩がたまにどこを見つめているのか分からない表情で夜空を見つめていたから……
それから先輩は高校を卒業して東京の大学に行くことになったのを境に会う回数が減って行った。
そして先輩がとうとう一人暮らしをすることになり、この地域にはほとんど戻って来れないと聞いた僕は急いで先輩の元へ向かった。
向かった先には高校の子供らしさの残った姿から完全に大人に生まれ変わった先輩がいた。
あまりの綺麗さに僕は言葉を失った。
先輩はそんな僕を少し笑って、綺麗かと尋ねてきた。
僕はもちろん綺麗だと答えた。
少し先輩と話をしたあとそろそろ帰ろうとする時先輩は僕の名前を呼び目の前に何かを差し出してきた。
目の前に差し出されたのはネックレスにされた光った小さな石だった。
これは何と尋ねると。
先輩はお守りだよと言った。
じゃあこの石は?
そう僕が尋ねると
君を守るために私がおまじないをかけた石だよ。
そう笑顔で言って見せた。
僕は不思議に思いながらもその石を握りしめた。
そんな僕を見た先輩は安心したような顔で
,,おやすみなさい,,
と言った。
僕もオウム返しのように挨拶をかわし帰路をたった。
ーー現在ーーー
あの時の石は僕の手元にまだある。
貰った日から不安を感じたりした時いつも握っていた。
まるで本当の御守りのように先輩がすぐ近くにいるような感じがした。
もう一度会いたい。あって沢山今までの事を話したい。
それから……謝らなきゃいけないことがある
僕はあの時先輩のバッグの中にたくさんの石を入れたんだなぜ入れたのかは分からないただ入れなきゃと思った。先輩に何かを大切にして欲しかった。今もそれが何か分からない。
先輩怒ってるかな、それとも呆れちゃったかな?
だからまた会いたい。
ごめんなさいってちゃんと目を合わせて初めてであった時のようにしっかり目を合わせて。
今夜も月が先輩とぼくの石を照らしている。その光は月よりも美しく太陽のように情熱的だ。
星のカケラ
1/10/2025, 9:39:06 AM