僕はいつも独りだった。
家族は僕が物心着いた頃には既にいなかった。
今の時代は子供が餓死するなんてことほとんどない。たとえ親がいなくとも児相に引き取ってもらえれば食べ物はある。けれど、僕は誰にも助けて貰えなかった。僕に対して向けられるのは嫌悪の眼差しだけだ。だから、彼女に向けられる好奇心の眼差しが僕にはとても新鮮に思えなおかつとても嬉しかった。ああ僕を嫌う目じゃない。僕が化け物かのように蔑む目じゃない。たったのそれだけで僕は彼女に落ちてしまった。
そんなこんなで彼女と共に生活をしてもうすぐで1年が経とうとしている。普通なら嬉しいはずだが僕の気持ちはそこまで嬉しくはなくむしろツラかった。
クリスマス
僕にとってクリスマスは憎い日だ。サンタは子供に笑顔と好きなものをくれるはずなのに僕の元には来なかった。いや来ていたかもしれないが与えてくれるのではなく奪っていってしまった。なぜなら、クリスマスは僕の誕生日だからだ。クリスマスは神様の子が生まれた神聖な日なのに僕にとっては最悪な人生が始まってしまった日。あの日から今日までずっと悪魔の子、サタンの生まれ変わり、なんていかにも不吉なものみたいに扱うか言葉を散々聞いてきた。けど今そんな言葉を言われても気にならないほど僕は幸せだ。だから、今日限りでこの最悪な日を終わらせる。だからぼくは玄関でお利口に座って彼女の帰りを今日も待つ。
どうすればいいの?
私が愛した人がいなくなった。
そこに彼女はもう居ない。私の生きる意味が生き続ける意味が消えてしまった。私には生きる価値はもうない
けれど彼女は去り際私に生きろと言った。そんなの無理だ、君がいない世界をどう生きろというのだ。それはあまりにもあまりにも残酷で残忍な呪いの言葉だったのだ。
ああ、神様
私はどうすればいいのですか。
彼女のいない世界に生き続けろとでも言うのですか。
私は一晩中泣いた。泣いて泣いて泣いて目がりんごのようにまたは桃色のように熟れていた。
脳裏
「じゃあね」
そんな彼女の言葉が脳裏をよぎった。
あの言葉に意味はあるのかそれとも単なる別れの言葉か、それをひたすら考えては眠れなくなってしまった。
明日にはいつもの彼女があたかも当たり前かのように現れてくれるのか、それとも…
自身の感情達が討論を重ねに重ねやがてその討論は行き着く先を知らず感情達はごちゃ混ぜになる。
それは不安となって、自身を蝕む。自身の感情に自分が蝕まれるなんてとても滑稽なことだ。彼女がそんな私を見ればきっとバカだなと言うだろう。けれど今その彼女はいない。
放課後
授業が終わってそれぞれが部活に取り組んでいる。けど私は帰宅部だからそんな景色を見ずにそそくさと帰るのが日課だった。ただ今日は学校でしないといけない課題があったから、初めて放課後に居残りをすることになった。初めて居残った放課後はとても静かに感じた。もっと部活の音で慌ただしく騒がしいものだと思ってた。以外にも外から聞こえてくるのは多少の掛け声と吹奏楽と軽音楽の演奏だけ。外の音がなければこの教室は時間が止まったように静かになるに違いない。
カーテンを開けているから、夕方の日差しが私を明るく照らす。外の世界は幻想的だ。何事も視点を変えれば全てのものが異世界のように変化する。人は不思議だ、ひとつの景色をいくつもの新たな世界に変えてしまうのだから。私は最近流行りの曲を聴きながら、課題と向き合った。
奇跡をもう一度
神様、お願い。私の友達を助けて…
私の友達は死にかけの私を助けるために自分自身を生贄に私を助けた。そのせいで友達は目を覚まさなくなった。もう10日は目を覚ましていない。ご飯も何も食べてないから、このままじゃ友達が死んでしまうかもしれない。
なんで、なんで、私なんかを助けたの。自分が死ぬかもしれないのに。それに、私が助かっても、君がいなきゃ本末転倒だよ。だからお願い目を覚まして。
一緒に生きようよ。好きなことしようってこれからも一緒って約束したじゃん。こんな風に約束破るのは反則だよ。だから目を覚まして……
お願い神様、私の友達を助けて。