梅のほころびも
葉ざくらのうつろひも
ほおずき市の夏のしらせも
ひぐらしの晩夏のしらべも
銀杏紅葉のうつろひも
冬のほしぞらも
こんなに粋な
四季の演出があったこと、
じつは、気付けたのは最近です。
町内には、
近しい年頃の友達が、たくさんいました。
みんなが揃うと、
遊びの内容は日めくりです。
自転車で知らない街を目指す、
小さな冒険の日もありました。
この日、目指すは、
未だ見果てぬ、駄菓子屋さん。
途中、瓶のコーラで、喉を潤します。
坂が急であればあるほど、
わたしたちの闘志に火がつきます。
途中の貯水池や、草むらは、誘惑だらけ。
財宝がたくさん眠っているはずです。
小さな冒険家たちは、
朝夕問わず、道の先を目指します。
あの頃に見た景色を見たくて、
実家を訪ねた時に、足を伸ばしますが。
あれは、
夢の中の世界だったのでしょうか?
なかなか、辿り着けそうにありません。
子どもの頃、
夏休みを利用して、
家族で祖父の家に行くのが好きでした。
玄関は、昔ながらの木の引き戸。
最初に入る応接間の、毛足の長いソファー。
寝転がって、よく本を読んでいたものです。
書斎には、分厚い背表紙の古書がいくつも並んでました。
カチッカチッと、時間を刻む振り子時計。
ウエストミンスターのチャイム音が、
より一層、夢見心地をくすぐります。
寝床がある2階が、
小さな私には、特に大好きな場所でした。
夜には、花火が見えることもあります。
スターマインが、
幻想的な夏の一夜を彩ります。
朝、窓を開けた先に松林。
松林の向こうの海を目に浮かべ、大きく深呼吸。
今でも、
窓の向こうの景色には、
あの頃の景色と出会える日を夢みる、
わたしなのです。
記憶の中の原風景を訪ねる時
季節は夏を選ぶことが多い気がします
大切な人たちが
今も変わらず、笑顔で迎えてくれるから
いつかの夏休み
ラジオ体操、
せみしぐれ、
母とわたしと、近所の子供、
台所で冷たい麦茶
また、みんなに、会えるね
あの日の入道雲が
今年の空を覆うとき、
わたしの夏が始まります。
深い深い霧の立ち込めた泉のほとり
いま、私はそこにいます。
ねぇ。
すぐそこに、石が見えるでしょう。
あれは、飛び石。
霧で見えない、ずっとずっと、先まで続いてるの。
一つ飛び越えたら、
あなたは1年前に戻れるわ。
5つ目まで飛べたら、5年前。
10つ目まで飛べたら、10年前。
ただし、2つ条件があります。
ひとたび、先に進んだら、今に戻ってくることはできないわ。
あと、
足を滑らせて落ちるような事があったら。。
その瞬間、今のあなたの時間も終わるわ。
どう?
それでも、飛び越えてみたい?
きっと、私は、4つ目まで飛ぶ事を選ぶでしょう。
そう。
伝えられなかったありがとうを
直接伝えるためだけに、
きっと、ね。