伊藤透雪

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12/30/2025, 5:10:05 AM

静かな終わり


お互いの目が合った
久々の仲間とパーティで
冗談に笑っていたとき
食事をし再び杯が上がったとき
さざめく人々の向こう
と何度も目に入る目

解散のそぞろ歩き、またねと呼ぶ声
駅へ向かう私の後ろから足音高い人
並んだ時に彼だと分かった

「たくさん目が合ったね」
「ちょっと話さないか」

こっちをしっかり見る目が光っている
いつの間にかワクワクしだして
そうね、と口から出たあと
派手なライトが光る街で
手を繋ぐでもなく歩く
*
彼の胸を撫でながら
いつから、いつまで、訊く事は
天井のライトに滲み
やがて駆け上がる血液、弾む身体
荒いため息の後
に仰向けで衝動のあとをなぞる
口づけひとつ
ふたつ、みっつ
その後を思い返すほど長くはない

後向きでストッキングを履く時に
背中に掛かる声が甘い
ここから始まる恋が
長く続くと思うほど若くはない
明日ではないけれど
静かに去っていくひとが浮かぶ
でも

素敵だ、のひと言に
今は夢中になっていたい



12/29/2025, 7:25:04 AM

心の旅路


私はできる。
やる事がいっぱいあって、
全然眠くない。
夢中に無心にやっていこう。
何だか心が元気に満ちあふれてる
楽しい毎日。

今日も明日も
昨日より今が一番大切なの
何がいけないの、
ちゃんとやってるじゃない!!

あれもこれもいつも
出来ていた筈なのに
何故出来なくなってるの
私ってこんなにできなかったっけ。
眠くてだるくて力が抜けてく
今はできないの、
昨日もできなかった。

*

できなくなって何年経っただろう
まだ寝付きは悪いし
ずっと薬は要るし
人生真っ逆さま
出来ていたあの頃と正反対の
日常はこんなにも無愛想
生きている、が薄く張り付いていて
自分を抱きしめても
今しか分からない
昨日のことも明日のことも
陰っていて見えない



12/28/2025, 5:06:43 AM

凍てつく鏡


凍りついた世界の
森は木々が白く包まれ
白銀には獣の足跡が見えているのみ
大きな角を持ち逞しい体躯の大鹿
がゆっくりと歩いている

かんじきを踏みしめ新雪を進んでいくと
目の前で大きく跳ねた大鹿に驚いた先
には大きく開けた静かな空が見え

風が吹いてめくれた雪の下
足元が固いのに気づいて見ると
ブラックアイスバーンだ
沼もチリチリと凍ったのだろう
私の影が映り込む
映る空の色も青く輝いて
凍る世界に光を反射している

頭を上げれば向こう岸に
白樺と松の森が見えた
みっしりと高く伸びている木々
が行き止まりの暗がりを成している
沼の雪が吹かれ、
表面は空の色を映していて綺麗だ
罠を見回るのもひと休みして
背嚢からスキットルのウィスキー
を取り出し一口含む

獲物もよく捕れた
今日は気分が晴れやかだ

12/27/2025, 1:44:55 AM

雪明りの夜


軋む雪道を歩く
鼻を突き上げる寒さを
両手袋で覆いながら

私は今日家族と別れ
ひとり街に出る
新しい生活を作り
前へ進むために

見上げる空に三日月
が煌々と光り
早々と暗くなった雪国を
見下ろしている細い目
足元が微かに白く浮かび
足跡をくっきりと見せる

後悔しないか
出ていく寂しさを置いていく心
の隙間に明日を埋めよう
顔を上げて白い息をはいた

12/26/2025, 2:31:46 AM

祈りを捧げて


ヒトは祈る
上手く行きますように
鎮まり給え
御守り給え

ありがとうございます
の祈りは少ない

時間は進むのに
過去に怖れ
災いの元を決めたがる

今日も生かせていただきありがとうございます
の時代が来るのを
祈る人々が増えますように
ヒトは時間にも祈る
できないことは後回し

祈りが永遠の文明になるには
ヒトの進化を待つしかない
祈らずに
重ね合う思いやりの上に築く
気の遠くなりそうな時間の先に
世界に
後回しせずに祈りを捧げよう

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