だから、一人でいたい
なんでもかんでも、事件は予想しない時に予想しない方向からやってくる。
私はそれが苦手。
臨機応変に対応ができないってわけじゃない。
むしろ、そんな時にしか役に立たないかもしれない。
だが、そんなに事件なんか起こらない。
事件って言っても、ほとんどが予測不能なところからやってくるだけで、ほとんどが大した問題じゃないが解決しないと面倒が膨らむ事。
そんな事件は、大抵が巻き込まれる事によるものだ。
家族、親族、大切な友人なんかからやってくる。
自分が事件の本人なんて事は、予測できるし、交通事故みたいなどうしようもない事なんか滅多に起こらない。
自分の事で精一杯!ってときに、事件はやってくるもんだ。
だから、なるべく大切な人は少ない方がいい。
歳をとって、あいよっ!って腰軽く動けなくなる時がくる。
だから、今から先はなるべく一人でいたい。
神様が降りてきてこう言った
「生きてもいいし、死んでもいいよ」
死にたいばかり考えていた私は『死んでもいいんだ』って許してもらえて嬉しくて
「じゃあ、死にたいで!」
って即決。
「そうか、わかった。じゃあ生きないんだね」
って神様
「うん!死にたい!」
って笑顔で応えた
「そーかそーか。すまないね。生かしたのも私だ。お詫びと言っては何だけど、死ぬ前に何か叶えたい望みはある?」
って神様が聞いてきた。お腹空いてるから、好きなものがお腹いっぱい食べたいし、叩かれたり、閉じ込められたりしないで、お母さんとお喋りしたい。お風呂に入っていい匂いの自分になりたいし、同級生の子が着てる綺麗な服や、筆箱も欲しい。ふかふかのお布団も憧れてるし、通学路以外の外の世界も知りたいなぁ
って考えて
「何もいらなから、死にたい」
って答える。
「本当に?今しか願いは叶えてあげられないよ?」
って神様が言う。
「うん!私ね、お母さんから『産むんじゃなかった』『死ねばいいのに』って言われるの。だからお母さんに笑って幸せになって欲しいから、死にたい!」
だから産まれなかった事にしてほしい。
でも、産まれちゃったから、私の願いの分はお母さんにあげたいなぁ。無理ならいいんだけど。
花咲いて
花散里
存在したかはわからないけれど、凄く人生を名前で表してる。
家のための子、だが不美人。欲を表さずして洋裁などを学び、信頼を得て光源氏に安心を与えた姫様
花の咲き誇った時期は、きっと幼少期。それを過ぎ、枯れるものかと頑張って、大勢晩期を勝ちとる凄さ。花は散っても里になる。かっこいい。
そのあとの世に
花の命は短くて、苦しき事より多かりき
って林芙美子って人が言ってる。
林芙美子の言葉には続きがあって
風も吹くなり、雲も光るなり
って。
人生一度くらいは花咲き乱れるような幸せな時間もある。まぁ人生色々だから、頑張ったり耐えたりする時間の方が長く感じるよねー。な言葉なんじゃないかな。
幼少期に
かぼちゃの種巻いて、芽が出て、膨らんで、花が咲いたらーって幼児期に聞くやつ。あれって先人の教えじゃない?咲いた後が忍者がどうこうしておちゃらけた感じで結末を言わない感じ。日本人っぽい美徳じゃない?
なーんてなんて、私の花の時代はいつだろう?
芽が出て、花咲いて…花咲く時期は一度だけしかない?
二回あってもいいじゃない?
二回花を咲かせるように頑張る自分、素敵じゃない?
一度だけじゃ勿体ないくらい長寿になってるんだしさ!
一度目は自分のため、二度目は後世のために花を咲かせる事ができれば、日本も捨てたもんじゃなくなるんじゃないかなー
今1番欲しいもの
ジーニーはアラジンに欲しい物を3つ与えました。
アラジンの善意によりジーニーは自由を得ることができました。
しかしながら、アラジンの1番欲しいものはジーニーの自由ではありませんでした。
ジーニーは、自由を手にしたらいいました。
「好きなところに行きたい」と。
ランプの中が天国なのか地獄なのかわかりません。
ランプの外が天国のように思ったからかかもしれません。
大人は言います
「施しをうけるのではなく、与える方になりなさい」
与えるために努力の続けられる人は幸いです。
アラジンの欲しかった2つのものをすでに持っているからです。
アラジンが富豪の家に生まれ育っているのと同じです。
ジーニーは人ではありません。
アラジンも架空の人物にすぎません。
赤ちゃんが無事に産まれてくれたら何もいらないと思い母は子を産みます。
それは、裕福であろうと貧しかろうと変わらないもの考えます。
お腹の中は見えないからです。
それでも母は願います。
この子が幸せになるならば、この子の不幸は私が全て背負っていく。
産まれてからも変わりません。
子供が巣立っても変わりません。
子供が年老いても変わりません。
子供を産んだ母の1番欲しいものは、自分ではなく、子が「あぁ幸せ」って思える一瞬です。
遠い日の記憶
「お母さん、寒いから、あったかいお蕎麦食べたい」
商売が上手くいかず、お父さんは生活費を持ち出すギャンブラー
お母さんは店番と、病弱な私のお姉ちゃんの看病。
お姉ちゃんが夜中に発作が出たら私は荷物持ちとして叩き起こされる。入院したら私は親戚の家に預けられる。
いつもお母さんの背中を見てた。
おばあちゃんに嫌な事いわれたり、お父さんがいなくてもお仕事したり。
忙しいお母さんに代わって、ご飯を炊く。洗濯をする。
お姉ちゃんは機嫌が悪いと私を叩く。
お姉ちゃんを怒らせたら発作が起きて、また病院代がかかる。
悲しくなったり、寂しくなったら元野良犬のペットの犬小屋に行く。
犬はいつも私の入れるスペースを空けてくれて、温かい。
お姉ちゃんが入院した日。珍しく私は預けられず、家に親戚が集まった。
大人の怖い顔から逃げたくて犬小屋にいた。
「お姉ちゃんは病弱で心配だから家で面倒みてあげるから」
「いや、お姉ちゃんは我が家で預かった方が病院が近い」
そんな親族の声が聞こえて、どうやらお姉ちゃんの取り合いをしてるみたい。
お姉ちゃんが貰われっ子になっちゃったら、寂しいけれど夜中に起こされたり叩かれたりしなくて済むし、お母さんもゆっくり休めるな。
病弱なお姉ちゃんはワガママだけど、色白でほっそりしていて目がパッチリでお人形さんみたいな可愛らしさ。
2つ年下の私は健康だけが取り柄で、地黒でチビで不細工だ。お姉ちゃんはいつかお金持ちのお医者さんと結婚するって。私は家業を継ぐ為にお婿さん貰うんだって言ってたから、お姉ちゃんはいつか家を出て行かなきゃならない。結婚できる歳まではまだまだあるけどちょっと早まるだけなのかもしれない。
お父さんのいない親族会議にお母さんの親族はいない。
お母さんの親族はうんと遠くに住んでいるから、去年に私だけで何か月か預けられたきりだから、お母さんはもううんと長い間会っていないのかもしれない。
翌日、お母さんとお姉ちゃんのお見舞いに行った帰りにお母さんは海に連れてってくれた。
海水浴とかの海じゃなくて大きな船が泊まってる海。
海水浴の季節じゃなくて、新年を迎えたばかりの寒い日。
お母さんは珍しく私と手を繋いでくれてる。
2人の手は手袋もしてなくて、骨っぽいお母さんの手も私の手もアカギレが目立つ。
お母さんは海に飛び込んで死にたいって思っている。
私を一緒に連れていこうとしてる。
お母さんが決意をする前に、何か言わなきゃっていっぱい考えた。
だから
「お母さん、寒いから、あったかいお蕎麦食べたい」
生まれて初めてワガママを言った。
『死にたくないよ』
お母さんは、そうだね。って言って、近所のお蕎麦屋さんに連れてってくれて、かけ蕎麦をひとつ頼んでくれた。