Machi

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6/8/2024, 2:39:18 PM

「お前が決めて良い。…嫌なら断れ。」
私は今、間違いなく人生の岐路に立っている。
両親の反対、世間の反対。家柄。
そのすべてが障害になっている私達の人生。
貴方は私に、駆け落ちしようと言った。
私を見る貴方の熱っぽい目は、懇願するようにも見える。
頷けばずっと隠れて生きなくてはならない。断ればずっと鳥籠の中で生きなくてはならない。
その2つを比較した時、どっちが良いかなんて明白だった。
私は貴方の腕を強く引いて抱き締める。
「貴方と行くわ。絶対に離れない。絶対に貴方から離れたりしない。」
私がそう告げると、貴方は目を見開いたあと、強く抱きしめ返してくる。
「…ああ…。ずっと一緒だ。死んでも離さない。」
貴方の大きな手と私の小さな手を離れないようしっかり繋いで、夜の街に飛び出した。

6/8/2024, 5:55:32 AM

絶望的な状況の中。
美しく輝く星の光が眩しくて、目を細めながら俺は君に言った。
「世界の終わりに、君と二人で話したかった」

6/6/2024, 11:17:20 AM

「最悪」
今日は間違いなく人生で最悪の日だ。断言する。
私は私以外には聞こえないような声で気怠く適当に呟いた。
上司の尻拭いで取引先に土下座して疲れて帰ったのに帰ったら別の上司にブチギレられて、後輩は仕事押し付けてきて先に帰るし、先輩が勝手に私のデスクにおいてあったチョコを食べた。楽しみにしてたのに。
帰る途中人身事故で電車が遅延して仕方なく外に出たけどどこかで鍵を落としたしスマホも充電切れた。更に運の悪いことに普段キャッシュレスだから持ち金200円。
コンビニでコーヒーを飲みながら深い深いため息をつく。
お母さんとお父さんへの仕送りまだできてないしプレゼン資料も完成してない。あ、パソコン会社に忘れてきた。道理でカバン軽いわー。
さっき車に轢かれかけたし歩きスマホしてるやつにぶつかられて舌打ちされたし。
「あー最っ悪」
はぁ〜〜〜〜〜〜………と全身の力を抜くようにため息をついた。
次の瞬間、隣にコトリと音がした。
「…、?」
「やっほ。げんきー?」
私はそいつの姿を認識して、破顔したと同時に心底憎らしいと言いたげに睨んだ。
「…最悪!」
「え〜ひどくない?」
私の横に図々しくも座ってケラケラと笑うのは
「元カレに対して辛辣すぎ〜」
私の元カレ。
「なんでいんの?くそっ」
「ほんとに酷いね。ここ俺んちの近くだよ?」
私はハッとして外を見る。
そういえば疲れでボーっとする頭でもなんとなく何がどこにおいてあるか分かった。
私が今居るコンビニは、この元カレの家から徒歩3分だ。
「あ〜〜〜くそ〜〜〜〜〜〜」
「なにがあったのー。どしたん話聞こか?」
ヘラヘラした顔がうざくてちょっと肩を殴った。
「いたぁ…優しさで聞いてあげてるんじゃん」
「つ〜〜かれたぁ〜〜〜〜〜」
気づかないふりをして伸びをすると、無視?と悲しそうな顔をしてくる。
「はぁ………私の愚痴を聞け」
「いいよ〜」
澄まし顔で持ってきたミルクティーを飲む姿を見て少し顔をしかめてから私は一息で話した。
「上司の尻拭いで取引先で土下座して帰ったら別の上司に怒鳴られて後輩は仕事押し付けて先に帰るし先輩が勝手に私のチョコ食べたししかも帰る途中人身事故で電車遅延して仕方なく外出たけど鍵どっかに落としたしスマホも充電切れたから持ち金200円だしお母さんとお父さんへの仕送りまだできてないしプレゼン資料も完成してない上パソコン会社に忘れてきた!」
「壮絶〜」
再度深いため息を付いてから聞いた。
「あんたは?」
「俺は今日も楽しかったよ。いいデザイン思いついたから。元カノにも久々に会えたしね。」
胡散臭い顔で笑うコイツは建築家で、ずっと家に籠もって線引くのが仕事。楽しいらしいし天職だって言ってるけど全然良さはわからなかった。
「もーやだ。家帰れないし会社行きたくないとりあえず部署の人間全員凌遅刑」
「こっわ。日本にないよそれ。」
コーヒーを飲みおわって、とうとう頭を抱えた。
「……んー、実はさ」
「なに…」
あんたは少しうつむきがちになりながら言った。
「俺引っ越したんだよね。〇〇町方面に。本社自体が移動でさ」
「…は?」
その口から出てきた町の名前は、ここから往復1時間はかかる場所だった。
「じゃあ何でここいんの?女の家?」
「違う違う。………ほら、かわいー元カノの会社とここ割と近いでしょ?…会えるかなぁ〜…と」
明後日向きながら言われて、私は口をぽかんと開けた。
「………は、え。……なんで、」
「そりゃ…まだ好きたがらでしょ。あの時は仕事死ぬほど忙しかったけど今は落ち着いたし、最近になって。」
会える確率ほぼ0%でも信じて、毎日片道三十分かかるコンビニに来てた。
馬鹿馬鹿しすぎて、吹き出した。
「ぷっ……あははっ!馬鹿!何してんの!」
「純情を弄ばないでもらえますー?」
肩をばしばし叩きながら言っても、特に何も言わないから変わってないんだなと思う。
「で、そこで提案!」
「えー?」
笑い過ぎの涙を拭きながら顔を向けた。
「1つ目。タワマンに引っ越したから同棲しない?2つ目、うちの会社事務の子一人辞めちゃったから急募中。3つ目、付き合おう。」
徐々に私は笑顔を消した。
そして、5分以上しっかりと考えてから答えを出した。
「またあんたの彼女とは、最悪だなー」
笑って言いながら立ち上がった。
「お、乗り気じゃん。それじゃ早速帰ろっか」
あんたも追随して立ち上がって、紙コップを捨ててコンビニを出た。
「もう流石に家片付いてるよね?タワマンなんだから」
「……。」
「おいおいマジか」
「片付け手伝って♡」
「やだ〜♡」
「おねが〜い♡」
「あんたの彼女最悪だね。毎日片付け地獄」
「でもその最悪がお好きでしょ?」
「…はいはい、お好きだよ。あんたと付き合ったあの最悪の日からずっと!」

6/5/2024, 12:30:40 PM

「誰にも言えない秘密があるの」
君はそう言った。
街灯が一つだけの、真っ暗な公園。僕の隣のブランコに座る君は独り言のように呟いた。
「…言えない、秘密?言わないじゃなくて?」
僕はしょっちゅうこの公園で遅くまで居るけど、君が来るのは今日が初めてだ。
それと関係していることなのかと一瞬思ったが、考えてもわからないことだから諦めた。
「言えないの。」
君はいつもとは比べ物にならないほど弱々しい声で言う。
教室で、僕と君が話すことはほとんどない。
君は華やかで、しっかりもので、勉強も運動も気配りもできて、でもそれを鼻にかけたりしない。
それに対して僕は、いつも暗くて、優柔不断で、勉強も運動も気配りも上手くできなくて、頼りない人間だ。
自然にじゃなくとも話す機会なんてほぼないだろう。
そう、こわいくらいに完璧な君が夜遊びをしてるなんてそれこそ信じられなかった。
「…秘密って?」
僕は、聞くべきじゃないとわかっているのに聞いてしまった。
言えない秘密があるのなら、それは僕になんて言ってくれるはずがないのに。
「………疲れたの」
取り消そうとした僕より先に、君は囁くような声で言った。
「…つかれた?」
笑顔しか見たことのない君が笑っていないことにやっと気づいて、言葉の理解に数秒かかった。
「……誰にも言わないでくれる?」
「…もちろん。」
静かに、君は語りだした。
「……………疲れたの。…勉強を押し付けてくる親も先生も、圧力をかけてくる塾の講師も、上っ面だけで何も見てくれない友達も…全部。」
僕は「疲れた」の中に、いつも楽しく笑い合っている君の友達すら含まれていることに少し驚いたけれど、何も話さず黙って聞いた。
「良い人のフリをするのも、作り笑顔を貼り付けるのも…全部、疲れた。」
君は少しだけブランコを揺らしながら、それきり黙った。
僕は頭の中で何か必死に考えていて、でもそれは何も考えていないのと同じくらい深いところで思考した。
そして数分経って、口を開いた。
「……いいんじゃないかな。」
君はなにを?と呟いて顔を僕に向ける。
「…良い人でいなくても。……反抗期くらいしたっていいよ。友達とも、無理につるまなくていい。正直、君の笑顔ちょっと胡散臭いし。」
君は怪訝な顔をしたあと、ぷっと吹き出した。
「…馬鹿だなあ。君のほうがよっぽど笑顔下手くそだよ。」
言い返されるとは思わなくて、少し面食らう。
「……反抗はしない。友達ともつるむ。」
君は僕のなけなしの提案とは真反対のことを行った。
やっぱ僕はろくなこと言えないなと目を伏せた次の瞬間、君はブランコから立ち上がった。
「でも」
ザッザッと砂を歩いた君は僕のブランコのチェーンを掴む。
顔と顔との距離が、5cm。
「…たまにここに、会いに来ても良い?」
君が物凄く切なそうな、懇願するような声を出すから。
僕は反射と言っていいほど早く、うなずいた。
「うん。いいよ、来て。」
君は何か言いかけたあと、チェーンから手を離す。
「…分かった!」
初めて君に、清廉な笑顔を向けられた。

6/4/2024, 1:06:25 PM

私は貴方のいない狭い部屋で、でもいつもより広く感じる部屋で、一人で考える。
貴方は変わってしまった。
貴方は相変わらず私を愛してくれたけど、何もかも変わってしまった。
豪華なタワーマンション、広いダブルベッド、シャンパンやワインや綺麗なドレス。
何でもくれるようになったけど、それは、私が求めていたものじゃない。
窮屈な狭い部屋、二人で身を寄せ合って寝たベッド、やっすいビール。
あっちのほうが、良かった。

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