正直な話、何もかもめんどくさい。
優しくするのも、真面目にするのも、正しくあるのも全部。
全てがめんどくさい。
でもそれを人に見せたことがないからこそ、余計めんどくさい。見せるのもめんどくさい。逃げ場がない。
正直に話すのもめんどくさい。

梅雨の季節になると、俺は傘を学校に持っていかない。
そうすれば君が、仕方ないなあと笑って傘に入れてくれるから。

日本では自殺は罪に問われない。
自殺は悪いことじゃないはずなのに、窃盗は悪いはずなのに、自殺も窃盗も等しく止められる。なんなら自殺のほうが強く止められる。
この終わりなき旅をいつ、どう終わらせるかは自分次第なんだから。自分が好きに生きて、好きなタイミングに死んだって良いでしょ。
轢き殺されるのは乗り物の運転手にトラウマを植え付けることになる。
首吊りは事故物件になるから不動産の人に迷惑がかかる。
飛び降り、入水は警察に後始末をさせなくちゃならなくなる。
お葬式をする場合は家族にも負担をかけることになる。
人に迷惑をかけないで死ぬ方法なんて存在しない。
罪じゃない、でも止められる。罪じゃない、でも迷惑がかかる。
自殺というのは歪んだ法律や人の気持ちが生んだ、人類の最後の希望に思われがちだけど本当は、迷惑がかかる行為でしかない。生きていてもそれは同じ。
自分の心にかかる迷惑が、周囲の人にかかる迷惑より多いから自殺する。
それすら周囲の人に迷惑がかかるという気遣いで自分の心に迷惑をかけることになる。
やりきれない。

「ごめんね」
貴方は言った。
直後、横から物凄い速さで電車が通過する。
貴方は貴方じゃなくなって、貴方がいなくなって私も私じゃなくなった。
貴方はずっと優しかった。いじめられてたんだよね。私とのことで。珍しいからって、いじめられてたんだよね。
不安と悲しみと怒りでいっぱいだっただろうに、貴方はずっと私に優しくしてくれた。
けどそれも、限界だったのかな。
貴方はこの世界から消えて、私は貴方のお母さんに打たれて、お母さんから残念なものを見るような目で見られた。
クラスメイトにも、嘲られた。
貴方が受けていた仕打ちを、今は私が受けている。
私は崖の先端に立つ。この狭苦しい世界で、唯一私と貴方だけのものだった場所。
「…ごめんね」
私は一歩を踏み出した。

いつ、半袖にしようか。
梅雨の時期になるといつも思う。制服を、いつ半袖にしようか迷うのだ。
教室内でも半袖の生徒は何人か見かける。基本は暑いだが、梅雨というのもあり少し肌寒い。
今年はいつから半袖にしようか。