「ごめんね」
貴方は言った。
直後、横から物凄い速さで電車が通過する。
貴方は貴方じゃなくなって、貴方がいなくなって私も私じゃなくなった。
貴方はずっと優しかった。いじめられてたんだよね。私とのことで。珍しいからって、いじめられてたんだよね。
不安と悲しみと怒りでいっぱいだっただろうに、貴方はずっと私に優しくしてくれた。
けどそれも、限界だったのかな。
貴方はこの世界から消えて、私は貴方のお母さんに打たれて、お母さんから残念なものを見るような目で見られた。
クラスメイトにも、嘲られた。
貴方が受けていた仕打ちを、今は私が受けている。
私は崖の先端に立つ。この狭苦しい世界で、唯一私と貴方だけのものだった場所。
「…ごめんね」
私は一歩を踏み出した。
5/29/2024, 12:14:58 PM