ストック

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1/27/2024, 1:34:05 PM

Theme:優しさ

貴方はいつも優しい。
でも、その優しさが私を苦しめる。

貴方は誰にも分け隔てなく、惜しみなく手を差し伸べる。
優しい笑顔と一緒に。

貴方の優しさが他人に向けられているのを見ると胸が痛む。
誰にでも優しい貴方。
その優しさが、その笑顔が向けられる先が、私だけならどれだけいいだろう。

今日も貴方の優しさが私の胸を切り裂く。

1/26/2024, 9:43:45 AM

Theme:安心と不安

不安なことがひとつ片付いて安心に変わると、また新たな不安が生まれてしまう。
私の人生には常に不安が纏わりついていた。

どうやら私の不安は「予期不安」というらしい。
予期不安とは、何も起こっていないときでも「悪いことが起こるのではないか」「失敗するのではないか」と過剰に心配してしまうことらしい。

なるほど、それならいつまで経っても不安が消えないわけだ。
納得する一方で、また新たな予期不安が訪れた。
「じゃあ、私は一生安心することはできないのか?」
私だけではないと思うが、不安を抱えているとそれだけでも疲弊してしまう。
この無駄な疲弊と付き合っていかなければならないとするなら、私にとっては凶報だ。

一方、友人の考えは少し違うらしい。
「それってリスクを認識できてるってことじゃない?生物としてはその方が生存に有利に働くんじゃないかな。私は行き当たりばったりだからトラブルの予想なんて出来ないし、予想が出来ないからそれに対する備えもできないよ」

予期や準備はできるが、常に不安に付きまとわれること。
安心した状態ではあるが、常に予想外に振り回されること。

どちらがより幸せなのだろうか。正解は恐らくないのだろう。
ただ、持っている性質を変えることは、難しいことだが出来ないことではない。
私と友人が互いの姿勢を学び合えば、きっとちょうどいい塩梅になるのではないだろうか。

1/23/2024, 11:38:27 AM

Theme:こんな夢を見た

じゃあ次は俺が話そう。
俺がゼミのメンバーと飲み会に行ったときの話だ。

話の流れは覚えてないけど、同級生の一人が「毎晩同じ夢を見る」って俺に話しかけてきたんだ。
そいつとは別に仲がいいって訳じゃない。どっちかというと俺は苦手だったな。勉強熱心だけど暗いやつでさ。でも、その日は酒の勢いもあったんだろうな。いきなり俺に話しかけて来たんだよ。
で、俺も酒が入ってたからそいつの話を聞いたんだ。
それはこんな夢だそうだ。

俺の通ってる大学の学食の裏に欅の大木があるんだけどさ、そこでいつも首を吊ろうとしている女性に会うんだってさ。
その女性は見た感じ俺たちと同じ大学生って感じで、そいつ曰く結構かわいいんだってよ。
そいつは慌てて女性を止めて、何故そんなことをしようかって聞いたんだと。
女性は泣きながら口を開くんだけど…そこでいつも目が覚めるらしい。
女性が何て言ってるかはわからないそうだ。

俺はその時に酒が入ってて、夢占いのサイトを検索してみたんだ。
見つけたサイトでは同じ人と何度も会う夢は「その相手に対して強い思い入れがある」とのことだった。
俺がからかうと、そいつは真顔で「知らない女性だ」って否定するんだよ。
「その女の子をどっかで見かけて無意識に惚れてるんじゃねぇの?」
俺がそう言ったら、そいつは真剣に考え込んじまった。それからは話しかけても上の空の返事が返ってくるだけ。俺はそいつと話すのに飽きて、別のゼミ生のところに行ったんだ。

それからだ。そいつがゼミにも他の講義にも出席しなくなったのは。真面目なやつだったからな。教授も他のゼミ生も心配していたんだ。連絡もつかないそうで、ちょっとした騒ぎになったんだ。後の騒ぎに比べたら、静かなもんだったけどよ。

飲み会から1ヶ月後、そいつは逮捕されたんだ。
死体遺棄容疑。学食の裏の欅の木の下から女子学生の死体が発見されたそうだ。
女子学生の友人からは「最近、ストーカー被害に遭っていると本人が言っていた」という証言もあったそうで、そいつの容疑に殺人罪が加わりそうなんだと。

そいつの執念にゾッとする一方で、俺は罪悪感が消えねぇんだ。
こんな集まりに参加してるけど、俺は正直言ってスピリチュアルとかオカルトとか信じちゃいない。
そいつの見てた夢は予知夢だったと思うより、俺が変に夢に意味をつけちまったせいで、あいつは犯罪に走ったと考える方がしっくりきちまうんだよ。
今だけは、あれは予知夢みたいな理屈じゃ説明できないものであってほしいよ。

じゃあ、次の奴にバトンタッチだ。

1/21/2024, 12:52:57 PM

Theme:特別な夜

今から思えば、あの夜は特別な夜だった。

なんのことはない、いつもの夜。
仕事を終えて同僚と飲みに行って、いつもの居酒屋でどうでもいい噂話で盛り上がって、飲み過ぎた後輩をタクシーに乗せてやって。
何ら変わりのないいつもの夜。

でも、それが最後の飲み会になるって誰が思う?

次の日から世界は変わってしまった。
俺は今、職務として市民を必死に警察署へ誘導している。
殺到する市民は皆着の身着のままで、我先へと安全であろう場所へ逃げ込もうとしている。俺の声も届いているのか怪しいものだ。
一緒に誘導していた同僚の姿は、いつの間にか見えなくなってしまった。

なぜ、どうしてこんなことになったんだろう?
パニックホラー映画じゃあるまいし、これが現実だなんて信じられない。
昨日の夜が特別な夜だったなんて信じたくない。

でも受け入れなければいけない。そうでないと、次は自分の番だろう。
今日から人間は食物連鎖の頂点から転落してしまったのだから。

1/20/2024, 10:16:02 AM

Theme:海の底

一説によると、海底は宇宙よりも辿り着くのが難しいそうだ。
ということは、海の底とは宇宙よりも遠い場所なのだろうか。
こうして砂浜に座って寄せては返す波を眺めていると、とてもそうは思えない。

この波が、海の底に繋がってると思っていると信じていたかったから。
君の眠る海の底がそんなに遠いところだなんて、信じたくなかったから。
海に投げた花束の、花弁くらいは届いているんだと信じているから。

君が本当にいる場所は、宇宙よりも海の底よりも遠いんだろう。
もしかしたら、ずっと近いかもしれない。
この声も想いも、届いているのかな。
どうか、届いていますように。

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