ストック

Open App

Theme:特別な夜

今から思えば、あの夜は特別な夜だった。

なんのことはない、いつもの夜。
仕事を終えて同僚と飲みに行って、いつもの居酒屋でどうでもいい噂話で盛り上がって、飲み過ぎた後輩をタクシーに乗せてやって。
何ら変わりのないいつもの夜。

でも、それが最後の飲み会になるって誰が思う?

次の日から世界は変わってしまった。
俺は今、職務として市民を必死に警察署へ誘導している。
殺到する市民は皆着の身着のままで、我先へと安全であろう場所へ逃げ込もうとしている。俺の声も届いているのか怪しいものだ。
一緒に誘導していた同僚の姿は、いつの間にか見えなくなってしまった。

なぜ、どうしてこんなことになったんだろう?
パニックホラー映画じゃあるまいし、これが現実だなんて信じられない。
昨日の夜が特別な夜だったなんて信じたくない。

でも受け入れなければいけない。そうでないと、次は自分の番だろう。
今日から人間は食物連鎖の頂点から転落してしまったのだから。

1/21/2024, 12:52:57 PM