Theme:幸せとは
「貴方は幸せですか?」
道を歩いていたら、突然声をかけられた。
声の主は中年くらいの女性だ。手にはパンフレットのようなものを持っている。
宗教か何かの勧誘だろうか。答えてしまったらしばらくこの寒空の下で足止めされることになるだろう。
私は「すみません、急いでますので」と会釈をしてそこから足早に立ち去った。
お目当てのカフェに着いて、ホットミルクを注文する。
温かいマグカップを両手に持って、少し奥まった席に座る。
お気に入りの文庫本を取り出して、ホットミルクを口にする。体の芯から優しく暖まるようだ。
「幸せだなぁ」
思わずそんな言葉が口をついて出た。
ふと、先程の「貴方は幸せですか」という言葉を思い出した。
ホットミルクと文庫本で幸せを感じられるなら、私の幸せはなんて安上がりなのだろうか。
思わず苦笑いが零れる。
でも、私が最近幸せを感じた瞬間はあっただろうか?
何か私が幸せを感じるようなことはあるだろうか?
…考えてみるが、何も思い付かない。
こうして一人で静かに時を過ごすこと。きっとこれが私の幸せなのだろう。
でも、そうでない時間を知っているからこそ、今が幸せだと思うのかもしれない。
そう考えると、幸せって相対的なものなのかもしれないな。
とりとめのない思考に身を任せていると、いつの間にかミルクは冷めてしまっていた。文庫本もどこまで読んだかわからなくなってしまった。
ささやかな幸せは、ほんのちょっとしたことで壊れてしまった。
でも、幸せについて考えるなんて滅多にないことだ。こんなことに思考を巡らせる時間もなかなか幸せだ。
幸せは壊れやすいが案外たくさん落ちているのかもしれない。
そんなことを考えながら、ホットミルクのお代わりを注文しにレジに向かった。
Theme:今年の抱負
私事ではあるが、今年の抱負のひとつに「表現力を磨く」がある。
書籍やネットの記事、この他の方が書かれた文章、友人からのちょっとしたLINEのやり取りでも「こんな言葉がすっと出てくると素敵だな」と思う表現によく出会う。
どう書けば情景がより鮮明に浮かぶだろうか。どう書けば想いが伝わるだろうか。
考えて考えて文に落としてみたところで、自分でも今一つ納得がいかなかったりする。
表現力を向上させるのは一朝一夕にはいかないだろうけど、いろいろな文や作品、日常生活の場面に触れて、コツコツと積み上げていこうと思う。
今年の年の瀬に振り返ったときに「あの文章/作品は我ながら上手く書けたなぁ」とまずは自画自賛でもいいからそう思える言葉で表現すること。
まずはそれを目標に、これからも文章を書いていきたい。
Theme:1年間を振り返る
今年ももう終わりだね。
1年間、本当にお疲れ様。
貴方にとってこの1年はどんな年だった?
嬉しかったこと、努力が実を結んだこともあったかもしれない。
悲しかったこと、悔しかったこと、もしかしたら絶望に叩き落とされることもあったかもしれない。
貴方がどんな気持ちでこの1年を生き抜いたかはわからないけど、私から伝えたいことがある。
貴方にとって良い思い出が多い年であったにせよ、そうでない思い出が多かったにせよ、貴方はきっと一生懸命頑張ってきたんだろう。
もしかしたら成果には結び付かなかったと思っているかもしれないけれど、一歩ずつ着実に歩を進めているのは事実だと思う。
だから、些細なことでも良い。どうか、この1年を頑張って頑張って生き抜いた貴方自身を労ってあげて欲しい。
1年の振り返りと来年のことは、どうか年と年の狭間の今日は一旦脇に置いて、とにかく自分を癒してあげて欲しい。
元気だからこそ、できるようになることもあるかもしれないから。
1年間、お疲れ様でした。
今は本当にそれだけを伝えたい。
Theme:みかん
「桃栗三年柿八年」という諺には続きがあることを最近知った。
地域によって違うらしいのだが、私が聞いた続きはこんなものだった。
「桃栗三年柿八年、梅は酸い酸い十三年、梨はゆるゆる十五年、柚子の大馬鹿十八年、みかんのマヌケは二十年」
果樹が実を結ぶまでは時間がかかるのだなと思いつつ、言葉がだんだんと辛辣になっていくのが気になってしまう。
「柿八年」までは「知識や技術は一朝一夕で身に付くものではない。年月をかけて努力することが大切だ」という意味で人を励ましたりすることにも使われている。
しかし、柚子以降はただの悪口ではないか。
冬はこたつでみかん、晩夏から秋は秋刀魚に青いみかんと、1年の半分をみかんを楽しみに過ごしている私には「何で柑橘類はそこまで言われなきゃいけないんだ」と少々不服を覚えてしまう。
少し悔しかったので、みかんの収穫までにはどの程度の時間がかかるか調べてみた。
みかんは種から育てるのではなく、苗木から育てるらしい。品種によって収穫までにかかる時間は様々だが、温州みかんであれば5年目以降から実がなるようになり、収穫と呼べるくらい実がつくのは10年程度かかるという。
あの諺ができた頃には、みかんの収穫は20年規模の一大プロジェクトだったのだろうか。
人生の3割程度(あるいはそれ以上?)の時を費やし、ようやく実を結ぶ。
あまりの長さに馬鹿馬鹿しいと投げ出したくなってしまうかも知れないが、それでも諦めなければいつかはきっとたくさんの実を結ぶ。
みかんの収穫には今は20年もかからないようだが、そこまでの品種改良にも時間がかかったことだろう。
先人の偉業に感謝しつつ、今日も食べきってしまったみかんのストックを買いに行く。
Theme:プレゼント
クリスマスに合わせて甥っ子にプレゼントを贈ることにした。
会う機会はほとんどないけれど、たまには叔母らしいことをしてみよう。
と思い立ったはいいものの、小さな子どもと接する機会がほとんどない私には、何を贈ればいいのか思い付かない。
男の子が好きそうなミニカーとかプラレール?
今流行っているアニメのキャラクターグッズ?
いっそ妹に子どものおもちゃが掲載されてるギフトカタログを送ってしまおうか?
…どれもいまいちしっくり来ない。
さんざん悩んだ末に、私はいつも出かけるボードゲーム専門店に出かけた。
今の流行りや小さい子が喜ぶものはわからないけど、ボードゲームならちょっと自信がある。
家族みんなで楽しめるボードゲームを探してみよう。
1時間ほどショップを歩き回って、私は小さな子でも楽しめそうなボードゲームを購入した。
ラッピングしてもらい、クリスマスに届くよう配達を依頼する。
妹夫婦はボードゲームをあまり遊んだこともないので、メッセージカードと一緒に遊び方を簡単にまとめて同封した。
果たして、喜んでくれるだろうか。
そして迎えたクリスマスイブ当日、妹から動画が贈られてきた。
甥っ子と旦那さんが2人でボードゲームで遊んでいる。甥っ子のはしゃいだ声に旦那さんの穏やかな声が聞こえる。
どうやら、楽しんでもらえたようだ。
「ボードゲーム初めてだったけど面白いね、ありがとう!」
という妹のメッセージが動画に添えられていた。
甥の笑顔が、私への最高のクリスマスプレゼントになった。