_君と出会った最後の日_
君と初めて会ったのは、登下校使用の電車の中だった。
沢山の人の流れができている中で、すれ違った見覚えのある制服は、自分が通っている高校そのものだった。
制服からして、年下か?
同い年にこんな人いたっけ…?
それにしても、可愛いな…
彼女は、いつも同じ席に座っていて、人々は皆スマホに夢中になっている中、彼女だけが静かに小説を読んでいた。
俺はそんな彼女がいつしか目が離せなくなっていた。
彼女の趣味と合わせるためにか、いつのまにか俺も電車の中で本を読むようにしていた。
桜が咲き始めた三月。とうとう明日は俺ら三年生の卒業の日だ。
電車の中で彼女と言うものを見つけ、一目惚れして、ずっと話せないまま終わってしまう。
そんな感じで終わって良いのか…?そんな疑問が生まれても、俺は黙って何もできなかった。
あぁ、今日で本当に最後なんだ…。
そう実感して、諦めたその時。後ろから見知らぬ声が聞こえてきた。
「あ、のっ…先輩…今日で卒業ですよね、?その、良ければ、私がいつも読んでるこの本、受け取ってくれませんか…?きゅ、急にすみません…っ!」
彼女だった。
え、な、なんで、彼女から声かけられたんだ?
普通逆じゃないか…?
「えっあ、い、良いんですか…?」
「あっえっと、話した事ないのにすみませんっ…その、ずっと気になってて…読んでいる作家が同じだったので…、一度話して見たいな…って。」
嘘…。
彼女から、しかもずっと話して見たかった。なんて…
てか俺情けないな?!先輩の癖に年下の彼女が話しかけなければ俺らの関係一切無縁だったぞ?!
「あ…っお、俺もずっと話して見たかったんです…!その、貴方とは違う意味で…。な、なんてね、ははっ」
うぉぉ、何言ってんだ俺。
「…話しかけてくれてありがとう。すっごく嬉しい。でも、今日でもう、会うのが最後かも知れないから…遠慮なくその本、受け取っても良いかな…?」
「…!良いんですか…!これ、凄く面白いんですよ!」
それから、最後のときまでずっと雑談をしていた。この時間が終わる、最後まで。
プシューーーーーー……
「あ、、降りる駅…ですね。」
「そうだね、今日はありがとう。楽しかったよ。…受験生、頑張れ。」
俺は最後まで、彼女に笑顔を耐えさないで言葉を尽くした。
「はい…っ先輩…またお会いできたら…話しかけますね」
そう言う彼女は、嬉しそうに微笑んでいた。
「あぁ、でも今度は俺から話しかけさせて。」
一年後。それが、今からみて、彼女との最後の話。
四月、君が来るのを期待して良いんだよね。
受験、頑張れよ。
_日常_
俺は、毎日毎日必死に勉強をしている。
将来だとか、今後の成績の為だとか、そんな天才的考えなんかじゃない。
ただ単にやる事がないからだ。
毎日同じ時間を繰り返して、クラスメイトの馬鹿騒ぎを黙って聞いているだけの、そんな空き時間に何をするかって言ったら勉強でしかないだろ。
真面目かよ…俺クソ陰キャじゃん…。
まぁ、それなりに毎回テスト順位はトップの座に立っているが、別に一位を狙っているわけじゃない。
新学期になり、またいつもと変わらないクソ平凡な日常が幕を開けるのだ〜…そう思っていた矢先に、後ろから見覚えのある、可愛い?声が俺の名前を呼んだ。
「あ、あのっ…君、テストいっつもトップだよね…?その、もし良ければなんだけど…私に勉強法教えてくれないかな…?今、凄くヤバめで…ハハっ…ダメだったら別に良いんだけどっ…。」
え、あ、は?なになに何か急に話しかけられたんだけど?!
…は?嫌だよ。
屑な返しをするつもりが、コミュ障の性か全く言葉が回らなく、咄嗟に
「い、いい…ですヨ。」
…いや馬鹿じゃん!?ただでさえ話すの何年ぶりだよ!?まぁ先生とかグループ活動ではそれなりに一言二言話してますけど?!しかも相手考えてみろ!!
女子だぞ?!クラスで人気そこそこのある、あの女!!
「やったぁ…っ!あ、私の名前分かるよね?ヒナだよ!…ふふ、そりゃあわかるか…へへ…。」
なんだなんだ、凄い話勝手に進めるじゃないか。
そういや名前…ヒナだったのか…。
「えぇっ…と…俺は何をすれば良いんですカ…。」
「ふふ、そんなに固くならなくてもいいよ〜、ええと、私にテスト勉強の仕方とか、教えて欲しくてね…。」
ただでさえこんなに目立つ人といたら俺、めっちゃ目立つやん…。
「な、なぁ、やっぱり、放課後とかでいいか…?」
「えっ…あ、うんっもちろんいいよ…!ありがとね。」
うぉ、褒められたんだけど…あんまし慣れないなこれ…。
放課後になり、2人でクラスに残り、勉強を広げた。
「…一つ聞いて良いか…?」
「ん?どーしたの?」
「…なんで、俺に勉強法を聞くんだ…?他の頭いい奴に聞けばいいのでは…。」
ずっと疑問に思っていた事だ。なにせ、こんなド陰キャに聞いたって話しずらいだけだろうに…。
「…ただ単に君に教えて欲しかったってだけだよ…?」
?!なんだその意味深な表情は…そうだ、絶対からかっているんだ、陰キャ乙〜みたいに。
「…ねぇ、勉強会終わった後って暇?…最近人気のカフェ屋がオープンしてさ…っ!帰りそこ寄らない?…うん賛成!」
待て待て待て…俺はまだ何も言っていない…。
というか、これって…放課後デートってやつか…?いやいや、今日話したばかりのやつとそれはないって…距離感保つってのないのかコイツは…。
「ってもうこんな時間なんだ…っ!カフェ屋閉まっちゃう!一緒に行こう!」
「え、えちょちょ、まってよ…ちょぉぉぉっ!!」
「アハハっwそんな大声出せるんだぁ〜w」
しまったっ…!何してんだ俺ぇぇ明日放送で全校に流されるぅぅ。
「ふふ、これは私しか知らない事だよね…?」
「ん…?ま、まぁ、そうだけど…。」
どう言う事なんだよ…っ。
で、その後無理やりそのカフェに連れて行かれ、今一緒にレジに並んでいるところですね。
「…俺らって一切関わりなかったよな…?なんでこんな急接近してくるわけ…。」
明らかに呆れてる調子で言ってみたら、彼女の表情が雲がかかった。
「あ、…ごめんね…今日、君の話とか聞かずに勝手に進めちゃって…。」
その通りだわ…、
でも、そうなんだけど…なぜかすごく楽しいと思えた。
「…俺さ、ずっと教室の隅で勉強してる真面目陰キャだけど…本当は、こんな感じで…放課後誰かと遊んだり…雑談して笑い合ったり…そんな事が…一度でもいいからしてみたかった…。だから…っ今日、一日ちょっとだけ…た、楽しかった…んだと思う…。」
絞り出すように言うと、彼女はポカンとしたような表情をして、口を微かに開けたままにしていた。
「ごめん…こんな話されても、ウザいだけだよね…。」
そう謝り、彼女の顔を見ると、少し頬が赤みが刈っていた。
「わっわわ、えぇっとね!あ、うんっそうなんだ…!!」
「え、なになに…ふっ…。」
あ、やべ、笑っちゃった…。
「えっ…ふふ…今日一日で嫌われたかも〜って思ってたから…良かったぁ…。君は一人ぼっちが怖いんだよね?…その解決方法、私知ってるよ。」
俺に嫌われると良くないことがあるのか…?不幸とか気にしてんのかな…
「…そりゃあ、君人気有り余りすぎてヤバいもんな…」
「そ、そこはいいの!……それもそれで、大変何だよ…」
彼女が最後の方ボソッと何かを言ったが俺の耳には全く聞こえなかった。
「…ん?なんて言った…?」
「い、いやぁなんでもないよっで、この解決方法何だけどね!」
「う、うん。?」
そこで、言葉を溜めて太陽のような、優しい笑顔を俺に精一杯向けて言った。
「…今日から私の友達になること…!」
「………は…?」
それからと言うこと、彼女は毎日のように俺に話しかけてきた。LINE交換したりして、度々遊びに出かけたり、やたらと彼女の接近が早かった。俺はいつの間にか彼女と打ち解けていた。
今日はヒナにショッピングに行きたいー!と言われて、言われるままについていくことにした。
「お待たせ〜!待った…?」
「ん?いや、別に…。」
ショッピングモールを自由に歩き回っている所でずっと疑問に思っていた事を彼女に言った。
「なぁ、ずっと気になってたんだけどさ…なんでこんな俺と仲良くしてくれるんだ?」
「えっ…それは、君と仲良くしたかったから…ってだけ!これだけ!以上!!」
「急に大声だすなよ、wまぁ、そっか。…ありがとな。本当に。」
「っ!…あの時、話しかけてよかった…うん…私も、仲良くしてくれてありがとう。」
珍しく彼女の割には静かで優しいトーンで話していた。
「…らしくな。w」
「もう!なによ〜」
月日が経ち…彼女から告白を受けた俺は今、超絶悩んでいる。
彼女が恋人なら、大丈夫だろうと思っている。
じゃあなんで悩むかって言うと、
彼女の事をそんな風に思ったことは一度もなかったからだ。ボッチo n恋愛経験0だぞ?
彼女は、俺の最初の友達だちでもある。その関係を壊したくないと、心の奥底で思っていた。
そもそも彼女からそんな感情を抱かれているなんて全く思ってもいなかった。しかも、ずっと前からだなんて…。
今思えば、俺に対して急接近していたのも、全て計画通りだったのかもしれない。俺と仲良くなるために、そう思えば辻褄があう。
彼女のおかげで、俺の日常は変化されていった。彼女は俺にとって大切な存在だ。
今じゃあ6年ほど付き合っている。そろそろだな。
プロポーズ、今度は俺の番だな。
❤︎エレナって言う人の小説本当に大好きです!○*・
_好きな色_
__私はね、ピンク色が好き!
小学生の頃は、ピンクは可愛いイメージでとっても大好きだった。
ある日、トイレ待ちしている女子がやたら笑談していたので、わざとトイレから出ずドア越しから聞いていたら。
「ねーねー。ピンクってさ、ぶりっ子って感じしないー?」
「それなー、私ピンクもピンク好きな子も嫌ーい。」
「あーそういやあいつもピンク好きじゃなかったっけ?笑」
え…。
…私、結構皆にピンク好きって話た…よね?
…その日から、自分の好きな色を隠し続けていた。
「ねね!好きな色なにー?」
「…黄色が好きかな〜。」
「じゃあ今度の誕プレ黄色のキーホルダー買ってくるね〜」
別にピンク以外も好きだった。でも、過去の話を思い出すとどうも心が刺すような感覚がして、また馬鹿にされるんじゃないかって。
最愛で、大好きな人にもこの事を隠し続けていた。
「そう言えば、貴方は何色が好きなんですか?俺は緑が好きです。」
そういう彼は、笑顔で教えてくれた。
「私は…。」
あぁ、思い出しちゃった。分からない、この人は本当の私を知って嫌になるのかな?考えすぎなんかじゃない、私には、あんな過去のせいで…。
「私はっ…青色が好きかなぁ〜」
「そうなんですか。…嘘じゃないですよね?」
「えっ」
え、なに言ってるの…?嘘って、なに、?
「なんかその…いつも嘘ついている時の仕草に似ているなと思って…違いますか?」
…あぁ、そうだ。この人はそんな人じゃない。…私のこともしっかり見ていてくれる。
「…はは、そうだよ。黄色なんか、好きな色って思った事なんかないよ。」
「じゃあ、なんで嘘をつくんですか。」
___それから私は過去の嫌な思い出、隠すようになった事。全て彼に打ち解けた。
「…考えすぎって思ったよね。でも、私、私…っ」
「大丈夫です。」
彼はそっと私の頭を撫でてきた。
「俺もピンク色好きですよ。可愛いですし、それに貴方にとってもお似合いです。…俺は貴方の全てが好きですから。なにかあれば、俺にいつでも話して下さい…辛かったですよね、好きは人それぞれです。自分を追い込まないで下さい」
彼の優しい声と返しに一気に涙が溢れてきた。
これだ、私は、誰かに救われたかった。本当の自分を認めて欲しかった。
「…大丈夫ですよ。泣いても良いです。」
「…ありがとう…っ」
「…じゃあ今度、一緒にショッピングに行った時にピンク色の小物をプレゼントさせてください。貴方に本命で喜んで欲しいです。」
「うん…っ。ありがとう。」
私は彼にだけ、本当の自分でいようと決意した。
_あなたがいたから_
「ねぇ、貴方が居なくて、私が居なかったら私達今頃どうなってたんだろうね。」
「は?どゆこと?急にどうしたんw」
「ただちょっと考えただけ〜、」
「ん〜、…わからん。」
「え、なにそれ。本当にちゃんと考えてる?w」
「あぁ、考えてるよ。」
「じゃあちゃんと答えてよ。」
「俺の未来には、過去には、今お前がいない世界なんて考えられないから。」
「えっ…それって、つまり…どういこと?」
「…お前がいない。って事なんか考えた事ないから…。いないとか、会うはずもなかった。とか、絶対嫌だよ。」
「そ、そーなんだ…。貴方からそんな言葉が出るなんて考えもしなかったわ。」
「…それは酷くない?w」
「いやぁ〜?w…。ふふ、ありがとね。」
「…ん。」
_相合傘_
下校時刻、突然降り出した土砂降りの雨に私は呆然と突っ立っていた。
朝、お母さんから「今日、小雨だけど雨降るらしいよ〜、傘持っていけば?」って言われたけど、自転車通学だったし、小雨程度なら大丈夫だろうと、「ん〜、大丈夫。」で、流してしまった。折り畳み傘くらい持ってこればよかった。
雨宿りしようと雨が止むまで外をボーっと見ていると、ふと後ろから声が聞こえた。
「なにやってんの、ユキ。」
「んぇっあ、フユくんか。」
幼馴染のフユが私に声を掛けてきた。名前が"雪"と"冬"で、
初めて会った頃に似てるねって笑い合った時から徐々に仲良くなっていき、今じゃ親友と言ってもいい仲だった。
「いやぁ〜傘忘れちゃってね。」
「はぁ?天気予報観なかったのかよ。」
「えへへー…。」
フユくんは、呆れたように私を見ては、思いついたように言った。
「ったく、俺の傘入るか?」
「えっ、い、いいんですカ。…いやでもなんか悪いよ…。」
「なんだよ、まぁ嫌なら仕方ないな。じゃっ」
そう言って帰るそぶりをしたフユくんを私は全力で引き止めた。
「ま、まってまって、分かりました入れさせてください。」
「ふふーん、いいだろう。」
うぐ、うざいな。
「…はい、濡れたらごめん。」
「えっや、私が入れてもらってるんだから私が濡れなきゃいけないんだよ?」
「は、なに言ってんだよw」
最近、一緒にいる時間が少なくなったからちょっぴり照れくさいなぁ…。
「…最近一緒にいる数が減ったよな。だから、今話せてちょっと嬉しいかも。」
「えっ、私と同じ事考えてて笑うんだけど。」
「まじかw…なぁ、明日お前のクラス行くわ。」
「ん?まぁいいけど、私に会うためだけに?w」
「いや、そうだけど。」
「へ、あ、わかっ、りました…。」
なんか即答なのも、ちょっと照れるんだけどっ。
その後彼の傘で相合傘をしながら私の家まで送ってくれた。
…改めて優しい彼だなと思った。