3/30/2024, 5:19:29 AM
お互い老い先がさほど長くないわけだが、果たして死んだくらいで手放してもらえるだろうか。行く先が天国だろうが地獄だろうが、構わず追いかけて来るのではないか。隣で眠っているこの人に引っ捕まえられたまま、寝起きの頭でそんなことを考えていた。これでは寝返りが打てないだろうに。おまけに体温が高いからこっちは眠くて仕方ない。カーテンの隙間から差す光を無視し、その胸に顔を埋めて二度寝を決め込んだ。
(題:ハッピーエンド)
3/29/2024, 1:31:34 AM
何かを強く訴えたいとき、この人は必ず真正面から目を合わせる。職場での説教もそう。意思の強い瞳は少し苦手だったが、この人らしい部分でもある。それが今は何だ、恋人を前に随分とやに下がってみっともない。そして嫌いどころか好ましく感じるのだから、恋愛というものは始末に負えない。何をそんなに強く望んでいるのか。欲しいものは知っている。だからあまりこっちを見ないで。視線に溶かされ消えてしまいそうだ。
(題:見つめられると)
3/28/2024, 1:43:29 AM
「死んだかと思った」嘯くその顔はいつも通りの仏頂面。彼なりの冗談だと理解しないわけではない。それでも相変わらずわかりにくいものだから、確認のためその体を腕の中に収めてみる。熱やら心音やらを確かめる前に、脈が速すぎませんか、などと文句を言われて思わず笑うしかなかった。
(題:My Heart)