【わぁ!】
ちょっとした癖がある
自動ドアだ
その昔
自動ドアの中には
なかなか開かなかったり
開くのが超ゆっくりだったりで
足止めを食らう物も少なくなかった
開くつもりで進むと
開かなかったり
開くのが遅かったりで
ポケットに手を入れたまま
ドアに激突したりもした
体重に反応して開くものもあり
子供や小柄な人が
動かない自動ドアの前で
ぴょんぴょんと跳ねる姿が微笑ましかった
そのうち
センサーで開くタイプが増えたけど
体重タイプと混在してたり
反応が悪かったりで
やはり足止めを食らっていた
そのストレスを緩和する為
いつの間にか身に付いた癖
ドアの前で先に手を出すのだ
左前に伸ばした手を
右にサッと払う
これにより
視野の狭いセンサーにもアピール出来
体の到着より先にドアが開き出す
開きの遅いドアでも止まらなくてすむ
体重タイプだったとしても
事前に察知する事が出来
激突を回避出来る
そのうち
手強いセンサーと出くわした経験から
いつしか両手を伸ばして開く最終形が身に付いた
無敵だった
油断もあったのだろう
親戚達と食事に出かけた
立派なお店
いつものように
自動ドアが開く
いらっし!
いや
いらっまでだったかも知れない
両手を広げ
どこぞのスターのように現れた凡夫に
バイトのお姉さんは
職務を放棄し
隠すことなく笑っていた
止まった時間の中で
お姉さんの笑い声と
閉じようとするも人を感知し元に戻るドアの音が
うぃんうぃんと響いていた
【終わらない物語】
ハッピーエンドのその先が
ハッピーとは限らない
主人公とヒロインが
数々の試練を乗り越え結ばれる
その後
やってくる生活の中で
ケンカが増え
いがみ合う
なんてのはあまり想像したくない
きっと幸せに暮らしてる事だと思いたい
もし
そこで幕が降りなかったら
こちらの想像とは違う
その先が描かれるかも知れない
見たかった事も見たくなかった事も
だけど
物語が
何十年先まで描かれたらどうだろう
床に伏す主人公の走馬灯だったら
見たかった事も
見たくなかった事も
辛かった事
楽しかった事
悲しかった事
嬉しかった事
怒りに震えた事
愛しかった事
全て物語を形作るのに必要な事のように思えてくる
区切るところで全て変わってしまう
だからきっと
我々の物語には
幕が用意されてないのだ
今に一喜一憂しようとも
物語は続いていく
悲劇だったのか
喜劇だったのか
それがわかるのは
幕ではなく
最後に瞼が降りる時
そんな風に思って以来
少し頑張れてる気がする
【やさしい嘘】
それは相手を思っての事なのか
自分のためなのか
本人も気付いてなかったりするから
相手はなおの事だろう
俺の用いるそれは
ほぼ後者だと思う
もともと嘘があまり得意じゃない
善人ぶってるのではなくて
器用さが足りない
瞬発的に説得力のある話を生み出せない
数手先の矛盾に辻褄を合わせられない
なんなら気付かない
予想外の質問に答えられない
事前に練習が必要だ
ある程度
自分の中で確信が持てるストーリー
想定可能な質問に対する答え
いつも通りの所作と言い回し
そんな事やってる間に機を逃す
結局
なるべくそ~ゆ~状況にならないように
普段を作っていく方が
楽ちんなのだ
今のところ
それでなんとかなってるから
性に合うんだろう
嫌なことを嫌と言わない方が楽な時もある
それは相手を思ってではなく
今後の自分を思ってなのだ
【瞳をとじて】
片足をあげる
数秒と立ってられない
本日
また一つ
大人の階段を登る
【あなたへの贈り物】
ちょっと喜びそうな物に
少しありがた迷惑ないたずらを添えて