生粋

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【わぁ!】


ちょっとした癖がある

自動ドアだ


その昔

自動ドアの中には

なかなか開かなかったり

開くのが超ゆっくりだったりで

足止めを食らう物も少なくなかった


開くつもりで進むと

開かなかったり

開くのが遅かったりで

ポケットに手を入れたまま

ドアに激突したりもした


体重に反応して開くものもあり

子供や小柄な人が

動かない自動ドアの前で

ぴょんぴょんと跳ねる姿が微笑ましかった


そのうち

センサーで開くタイプが増えたけど

体重タイプと混在してたり

反応が悪かったりで

やはり足止めを食らっていた


そのストレスを緩和する為

いつの間にか身に付いた癖

ドアの前で先に手を出すのだ

左前に伸ばした手を

右にサッと払う

これにより

視野の狭いセンサーにもアピール出来

体の到着より先にドアが開き出す

開きの遅いドアでも止まらなくてすむ


体重タイプだったとしても

事前に察知する事が出来

激突を回避出来る


そのうち

手強いセンサーと出くわした経験から

いつしか両手を伸ばして開く最終形が身に付いた

無敵だった


油断もあったのだろう

親戚達と食事に出かけた

立派なお店


いつものように

自動ドアが開く

いらっし!

いや

いらっまでだったかも知れない

両手を広げ

どこぞのスターのように現れた凡夫に

バイトのお姉さんは

職務を放棄し

隠すことなく笑っていた


止まった時間の中で

お姉さんの笑い声と

閉じようとするも人を感知し元に戻るドアの音が

うぃんうぃんと響いていた

1/26/2025, 2:10:20 PM