見下ろす夜景の汚らわしさに
耐えきれず、目を閉じた
見上げる夜空の神々しさに
耐えきれず、目を閉じた
こんな夢を見続けている
ちっぽけな勇気を食みながら
こんな夢を見続けている
ちっぽけな勇気を呪いながら
見下ろす夜景の汚らわしさに
耐えきれず、目を閉じた
ここから幾人が死んだろう
あのアスファルトは幾人の血を
その灰色に浴びてきたのだろう
見上げる夜空の神々しさに
耐えきれず、目を閉じた
ここから幾人が昇ったろう
あの星空は幾人の魂を
その漆黒に受け入れてきたのだろう
こんな夢を見続けている
ちっぽけな勇気を食みながら
こんな夢を見続けている
ちっぽけな勇気を呪いながら
熱に浮かされた夜の花畑は
この世のどんな場所より美しい
きらきら、ふわふわ、ひらひらと
微睡みと幻覚が私を誘う
熱が引いた夜、あの花畑は
一体どこに行ってしまうのだろう
消えてしまったのだろうか、そう思って
熱が引いたことを心底無念に思うのだけれど
月日が経って、熱を出して
あの花畑が、美しい花畑が
再び眼前に現れる
ああ、花畑は消えてなどいなかった!
あの花畑は、美しい花畑は
いつだって私の心の中に
どん、と音を立てて
曇天が、私の上に落ちてきた。
世界中の憂鬱を集めて空に浮かべた、
どこぞの神の気まぐれが、私の上に落ちてきた。
青空に浮かぶ雲は白く軽いのに
鈍色に揺れる雲は暗く重い。
重い雲が呼吸を妨げる。
もがけど、もがけど、息は止まる。
杞憂と笑うか?
杞憂と笑えるか?
この気の狂うような地獄を
本当に杞憂と笑えるのか?
どん、と音を立てて
曇天が私の上に落ちてきた。
風よ、私だけの風よ。
どうか、私をここから救い出して。
最後の会話
「じゃ、おやすみ」
「おう」
から、もう、一ヶ月も経つ
無言を貫くLINEの通知
その事実に焦っていないのだから
これは恋ではないんだろう
これは依存だ、醜い依存だ
あなたを愛するフリをしたんだ
恋とはなんだ? 美しいものか?
私にはわからない
愛とはなんだ? 素晴らしいものか?
私には理解できない
執拗に迫られたあの日の恐怖も
長い時を共に過ごした友人への想いも
同じ「恋」の生んだものか?
であれば私には恋はわからない
向けられたあれが恋だったのなら
私の、彼への想いは恋ではないのだろう
向けられたあれが執着だったのなら
私の、彼への想いは、あるいは……
恋とはなんだ? ありきたりなものか?
であれば私は正気じゃない
私はいつまで歩けばいいのだ
長すぎる、この道は。
私はいつまで笑えばいいのだ
下らなすぎる、この日々は。
私はいつまで嘆けばいいのだ
辛すぎる、この夜は。
この命が燃え尽きるまで
こうしていなければならないのか?
私はいつまで生きればいいのだ
酷すぎる、この世は。
私はいつまで死にたがっているのだ
弱すぎる、この私は。