《あの頃の私へ》
なんか、もう疲れた。だから自殺しよっかなって思う。会社ってどんな感じなんだろう…と思って働いてみたら理不尽ばっかり。マジで休日もほぼないし、給料も少ない。もうやってられない。
あの頃の私へ。あなたの会社選択は間違ってる。今すぐにでも蹴った方が良い。こうなりたくなければ…
んじゃ、サヨナラ。ここから飛び降りたら確実に死ねるだろうね。会社の人間はどう思うだろうね。
…ホントに現実世界おもんな。
《逃れられない》
はぁ…また彼が浮気した。何度目だろうか。数えることもやめた。それなら別れてしまえばいい?
確かにそうなのだが私は彼に弱みを握られている。
あぁ…イライラする。いっそのことメンヘラとかいうやつになりきってやろうか。
「メンヘラになる…それが1番良さそうだわ。是が非でも彼が私に固執しきるまで…やってやるわ…」
もう私も彼も今の関係から逃れられない。
《また明日》
「この会社をやめさせていただきます」
今日俺は会社に辞職届を提出した。辞める理由は簡単だ。
―この会社がブラックだからだ。
最初は他の会社もこんなもんだと思っていた。しかし、日が立つにつれ違和感を感じ始めた。
この会社、働かせすぎ…?
何度か体調を崩しても出勤させられたり、深夜まで会社に残ったり、会社で寝泊まりしたり…
もう限界だ。何度仕事から逃れて死んでやろうかと思ったことか。
それも今日でおしまいだ。残った有給をたっぷり使ってやめてやる。軽い足取りで部長のいる部屋を出ようとしてなぜか、思わず口からこんな言葉が滑り出ていた。
「では、また明日」
明日はないはずなのに。何を言ってるんだろう。そう思うと笑いが止まらなかった。
《透明》
「なんかさー、透明マントとか欲しくない?」
彼女は突然訳の分からないことを言い始めた。
「どーしたんですか。まだ酒飲んでないですよ?」
「ここ研究室だから飲むわけないじゃん。ここが家なら多分飲んでるわw」
彼女―研究室の先輩な訳だがすごくゆるい。テキトーだ。それでもここまでやってこれてるのはこの人はものすごく頭がいいからだ。
「いや〜、透明マント欲しくないの?色んな所行けるよ?」
「色んな所って例えば…?」
「うーん、女子風呂とか?」
「おじさんみたいなこと言わないでくださいよ…捕まりますって」
「ということは…後輩君、その欲望があるんだね?」
…この人はいつもこんな具合でダル絡みしてくる。
「はぁ…もうそれでいいですよ、それで」
「つれないねぇ…まだまだ時間ある訳だよ?しょーもない会話で盛り上がろうよ」
「僕、帰りたいんですけど」
「え?私をここに置いてくわけ?」
「先輩も一旦帰ったらどうですか?経過観察といえどずっと見ておく訳じゃないですから」
僕らのやってる研究はずっと貼り付いてる必要はない。なのでふつーに帰りたい。
「まぁ…とりあえず帰りますね、さよーならー」
「え?置いてっちゃうの?待ってよ?!」
あの人と喋るの疲れるなぁと思いながらさっさと研究室を出てった。
《理想のあなた》
(※昨日と少し続いてます)
親友の萌夏を事故で無くした私はがむしゃらに仕事をして日々を過ごしていた。あれだけ決意はしたのだが人を失った悲しみは中々払拭されなかった。
―早く立ち直らないと。萌夏が悲しむでしょ。
自分の中で叱咤激励を毎日している。
そして、ある日のこと―
私は仕事中に倒れてしまった。原因はストレスと働き過ぎだった。
そのまま私はしばらく入院する羽目になってしまった。
会社の同僚が見舞いに来たりした。私はそこまでするほどの大事ではないのに。それだったら萌夏の時も行ってくれたら良かったのに。
次々と誰か来ては帰っていく。なんか仕事しているみたいだ。
思わず乾いた笑みがこぼれる。そんな中やってきた人は
―彼だった。
私の好きな人。あんなにも付き合いたいと願っていた人。でも私と彼の間では面識がなかったはず…?
「こんにちは。体調はどうですか?」
「え、ええ。おかげさまで良くなってます。あの、どうしてここに?私とあなたは面識がないと思うのですが…」
思わず聞いてしまった。
「そうですね…部長から頼まれて?ですかね」
「部長が…?」
「『あの子、あんたのこと好きらしいから行ってあげたら?』って言われました。」
…新手のセクハラみたいだなと思った。というかなぜそれを知ってるんだ。イライラしてきた。だがそれを表にだす訳にはいかないので
「へぇ~そうなんですか…」
と愛想笑いをして返しておいた。
それからとりとめのない会話をテキトーにして彼は帰っていった。
彼が立ち去って、私は
「やっぱり好きになれなくなっちゃった。真面目さがいいと思ってたのに想像以上に真面目だった。顔ばっかりしか見てなくて理想が上がってたのかも…」
そうして『理想のあなた』はあっけなく崩れ去ってしまった。さらに…あの映画のチケットもビリビリに破いて捨ててしまった。