うずき

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《理想のあなた》

(※昨日と少し続いてます)

親友の萌夏を事故で無くした私はがむしゃらに仕事をして日々を過ごしていた。あれだけ決意はしたのだが人を失った悲しみは中々払拭されなかった。

―早く立ち直らないと。萌夏が悲しむでしょ。

自分の中で叱咤激励を毎日している。


そして、ある日のこと―

私は仕事中に倒れてしまった。原因はストレスと働き過ぎだった。
そのまま私はしばらく入院する羽目になってしまった。

会社の同僚が見舞いに来たりした。私はそこまでするほどの大事ではないのに。それだったら萌夏の時も行ってくれたら良かったのに。

次々と誰か来ては帰っていく。なんか仕事しているみたいだ。
思わず乾いた笑みがこぼれる。そんな中やってきた人は

―彼だった。

私の好きな人。あんなにも付き合いたいと願っていた人。でも私と彼の間では面識がなかったはず…?

「こんにちは。体調はどうですか?」
「え、ええ。おかげさまで良くなってます。あの、どうしてここに?私とあなたは面識がないと思うのですが…」
思わず聞いてしまった。
「そうですね…部長から頼まれて?ですかね」
「部長が…?」
「『あの子、あんたのこと好きらしいから行ってあげたら?』って言われました。」
…新手のセクハラみたいだなと思った。というかなぜそれを知ってるんだ。イライラしてきた。だがそれを表にだす訳にはいかないので
「へぇ~そうなんですか…」
と愛想笑いをして返しておいた。
それからとりとめのない会話をテキトーにして彼は帰っていった。

彼が立ち去って、私は
「やっぱり好きになれなくなっちゃった。真面目さがいいと思ってたのに想像以上に真面目だった。顔ばっかりしか見てなくて理想が上がってたのかも…」

そうして『理想のあなた』はあっけなく崩れ去ってしまった。さらに…あの映画のチケットもビリビリに破いて捨ててしまった。

5/20/2024, 12:27:39 PM