うずき

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《透明》

「なんかさー、透明マントとか欲しくない?」
彼女は突然訳の分からないことを言い始めた。
「どーしたんですか。まだ酒飲んでないですよ?」
「ここ研究室だから飲むわけないじゃん。ここが家なら多分飲んでるわw」
彼女―研究室の先輩な訳だがすごくゆるい。テキトーだ。それでもここまでやってこれてるのはこの人はものすごく頭がいいからだ。
「いや〜、透明マント欲しくないの?色んな所行けるよ?」
「色んな所って例えば…?」
「うーん、女子風呂とか?」
「おじさんみたいなこと言わないでくださいよ…捕まりますって」
「ということは…後輩君、その欲望があるんだね?」
…この人はいつもこんな具合でダル絡みしてくる。

「はぁ…もうそれでいいですよ、それで」
「つれないねぇ…まだまだ時間ある訳だよ?しょーもない会話で盛り上がろうよ」
「僕、帰りたいんですけど」
「え?私をここに置いてくわけ?」
「先輩も一旦帰ったらどうですか?経過観察といえどずっと見ておく訳じゃないですから」

僕らのやってる研究はずっと貼り付いてる必要はない。なのでふつーに帰りたい。

「まぁ…とりあえず帰りますね、さよーならー」
「え?置いてっちゃうの?待ってよ?!」

あの人と喋るの疲れるなぁと思いながらさっさと研究室を出てった。

5/21/2024, 12:39:38 PM