氷室凛

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10/10/2024, 2:43:53 AM

(下書きとして一時保存)


20241009.NO.76「ココロオドル」

10/8/2024, 11:55:31 AM

 かろうじてすれ違えるくらいの細い道を、歩く、歩く。

 もうどれくらい進んだだろうか。山中のトンネルのようなこの道に地上の光は届かず、時間の経過がわかりづらい。数歩おきに照明魔法陣が敷かれてはいるものの、魔法の光量は常に一定だ。もうかなり歩いたような気もするし、まだ入ってすぐなような気もしてくる。
 くねくねとした道は幅だけでなく高さもない。少しだけ腰を屈めないとぶつかる天井に、イルはもう大分辟易していた。

 狭い道幅。薄暗い通路。くねくねと上がったり下がったりする道のり。
 珍しくイルの方から休憩を提案しようとした矢先、

「……! わぁ……!」

 前方を歩いていたロキが感嘆の声をあげた。
 なんとか自分を鼓舞し後ろからそれを覗き込んだイルも、

「これは……。スゲェな」

 今までの疲れも忘れ息を呑んだ。

 目の前に広がるのはここまでの道のりが嘘のような広い空間だ。面積はもちろんのこと、高さも貴族の屋敷がみっつは積み重ねられそうなくらいある。

 そして、なにより。
 突如現れたその空間は街になっていた。黒い岩肌がくり抜かれ家となり、地上ではそこかしこで絨毯を敷いた露店が開かれ活気がここまで伝わってくる。
 人の歩かない場所には天然なのか人工なのかカラフルな鉱石が生えていて、淡く黄緑色に光るコケを反射してキラキラと眩く輝いていた。

「山ン中なハズなのに……思ってたよりずっと広ェ。それに、住人もこンなに……。ヘタな他の都市より活気があるぞコリャ」
「ね、ね、すごいでしょ。都市の内部はヒカリゴケが自生してて、それを鉱石が反射して魔法がいらないくらい明るいんだって! 話に聞いてた通りだ! 洞穴都市、またの名を迷宮都市。ずっと行ってみたかったんだけど、まさか本当に来れるなんて……!」

 輝く鉱石の光がロキの目に映る。イルはその頭にポンと手を置いた。

「よし。休憩がてら少し街を見て回るか」
「え? でも……。僕たち、観光に来たんじゃないんだよ」
「そりゃそうだ。だが常に気を張ってたら大事なときにバテちまう。思えばせっかく各都市を回ってるってのに、今までロクに街並みも見ちゃいねェ。……洞穴都市なンてそう何度も行ける場所でもねェしな。ここで街を見とかねェと、いつか後悔しそうだ」

 重心を右に左に移動させながら聞いていたロキは、

「……そ、そういうことなら……」

 とモゴモゴと言うやいなや、パッと顔を上げた。

「早く行こう、イルさん! ここは鉱石を模した見た目のスイーツが有名なんだって! あと色とりどりの鉱石に囲まれた滝壺ってのも見たいし、唯一太陽が差し込むって場所も気になるし、迷宮都市の名の由来の細い路地も探検したいし……早く行こう!」
「落ち着け、走るな危ねェぞ! ──ははは、あーはは!」
「……こっわ、なにいきなり笑ってんの?」
「なンでもねェよ! あー腰痛ェ!」




出演:「ライラプス王国記」より イル、ロキ
20241008.NO.75「束の間の休息」

10/8/2024, 3:10:55 AM

(下書きとして一時保存)


20241008.NO74.「力を込めて」

10/6/2024, 4:35:40 PM

「きみは過去にとらわれすぎているんじゃないかい?」

 イルの話を一通り聞き終えたアルコルはそう言って両手で持った白湯を静かにすすった。
 イルはほとんど反射で睨みつける。

「ア? 全部忘れろってのか? 魔人に村をぶち壊されたことも、両親もダチもみんないっぺんに殺されちまったことも、忘れて生きていけってか? ざけンじゃねェ」

 手元のホットミルクが跳ねる。アルコルはそんな彼の姿に意味ありげに目を細めた。

「忘れろ、までは言わないけどさぁ。きみの頭の中にはそのことしかないじゃないか。後ろ向きに歩いてるようなもんだ。立ち止まっていい、振り返っていい、時に泣いて喚いたっていい。それでも最後は、前に向かって歩き出さなきゃあいけないよ」
「……のために魔王を倒すっつってンだ」
「あはぁ、それを後ろ向きに歩いてるって言ってるんだ。そんなのただの復讐だろう? 復讐するのは勝手だけど、相手は選んだ方がいい。それとも死に場所を探しているのかい? ──なら、おれが殺してあげようか」

 真っ青な瞳が怪しく光る。イルはその視線を真っ直ぐに受け止めた。
 数秒の睨み合いの末、「あはぁ、冗談だ」とアルコルはまた白湯をすすった。

「けど、身の振り方はもう少し考えていいと思うよ? 親が死んでも、親に捨てられても。故郷がなくなっても、故郷を捨てても。きみは幸せになっていい」
「……ンなこと。──そンなこと、できっかよ」

 絞り出すように答えたイルに「あはぁ、そうかい」と軽く手を振り、アルコルは立ち去った。

 その背を、自分とは全く違う濃い金髪の後ろ姿を見ながら考える。
 彼の言った言葉。

 親に捨てられても。故郷を捨てても。幸せになっていい。

「……ンなの、自分に言い聞かせてるみてェじゃねェか」




出演:「ライラプス王国記」より アルコル、イル
20241006.NO.73.「過ぎた日を思う」

10/5/2024, 3:00:53 PM

星座の成り立ちにまつわるギリシャ神話の本を読み漁ったり

宇宙の図鑑を誕生日に買ってもらったり

宇宙を目指すベンチャー企業に入ったり(クソブラックだった)

キャラに星の名前をつけ始めたあたりで、

ようやく自分は夜空に瞬く星たちが好きなのかもしれないって、気付いたりした



20241005.NO72.「星座」

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