お題【誰よりも、ずっと】
タイトル【愛してる】
私には、ずっと好きな人がいたの。
彼は優しくて、かっこよくて、守ってくれる人だったの。
私はね、先週彼に告白したの。
「付き合ってください。」って。
彼はね、「いいよ。」って言ってくれたの。
私は、とっても嬉しかったわ。
それから彼といろんな場所に行ったわ。
とても楽しかった。
遊園地や水族館、映画を観に行ったこともあったわ。
でもね、彼の家に行った時だけは違ったの。
「この部屋には絶対に入らないで。」って彼は言ったわ。
でも私は好奇心に負けて覗いてしまったの。
彼にはバレなかったわ。
でもね、その部屋。
彼が入らないでって言った部屋。
とても暗くて、少し怖かったの。
あまり見えなかったけど、紐みたいなものがぶら下がってたわ。
その数日後にね、彼は死んだの。
首吊り自殺で。
とても悲しかったわ。
彼は部屋にあった紐で亡くなったの。
彼の気持ちをもっと考えればよかった。
そうずっと後悔したわ。
でもね、それほど悲しいってことは、
それほど彼を愛してたってことだと思うの。
だからね、今日も彼のお墓に話し掛けるの。
「誰よりも、ずっと愛してる。」って。
お題【これからも、ずっと】
タイトル【自殺】
私は人を殺しました。
誰も起きていない、深夜1時に。
彼女は、自由が好きでした。
小説や絵など、自由に書けるものが好きでした。
彼女は、束縛が嫌いでした。
勉強や学校など、何かに縛られるのが嫌いでした。
彼女は、とても優しかったです。
自分が悪いと思って、「ごめんなさい」が口癖になっていました。
彼女は、自由に生きていました。
それはとても楽しそうに。
そんな彼女を、殺しました。
彼女の好きな自由を取り壊し、
好きな絵も、小説も、何もかも壊しました。
彼女は泣きました。
それはとても辛そうに。
私は自由だった自分を殺しました。
全てを自分の手で壊し、辛くて泣きました。
このままずっと自由だと、いつか限界が来てしまう。
ただでさえ、人間関係でストレスが多かった。
家族から「勉強しろ」と言われ、普通のことだけど辛かった。
だから死んでしまう前に自分で殺した。
自由な私は、消えてしまった。
これからも、ずっと自由な私は現れないのだろう。
できれば、自由な人生を送りたかった。
4月9日 1時04分 私は私を殺しました。
お題【沈む夕陽】
タイトル【言いたかったこと。】
いつもの屋上。
いつもの景色。
いつもの二人。
変わらない日常に飽きていると理解したのは、
随分と前の事だった。
いつも通り朝6:30に起きて、
朝ごはんを食べて、
みんなと同じ制服を着て、
みんなと同じスクールバックを持って。
世間に合わせて、嫌われないように、置いてかれないように。
俺は別に嫌われてもよかった。
ただ、世間の集団圧力に負けて、つまらない日々を送っている。
でも、今はつまらないとはあまり思わない。
だって二人がいるから。
部活をサボり、いつもの集合場所へ行く。
いつバレるかわからない緊張感もありながら、非常階段をかけのぼる。
時計は五時を差していた。
沈む夕陽を横目に見ながら屋上へ行った。
そこにはいつもの二人が楽しそうに笑っている。
『あぁ、いいなぁ』
いつバレるかわからない緊張感、日常からはみ出て、自由になったような解放感。
こんなこと考えているのは俺だけだろう。
二人には秘密にしておこう。
────鮮やかな橙色の光が僕達を照らす。
こんな綺麗な夕陽なら、二人に言えるかもしれない。
ずっと前から言いたかったことを。
勇気を振り絞って、二人を見た。
『俺をつまらない日々から助けてくれてありがとう。』
そう沈む夕陽を眺めながら微笑む二人に言った。
お題【君の目を見つめると】
タイトル【君のわがまま】
好きだった。
君のことが。
だから君の想いを知ってしまった時、
僕は君を見たんだ。
君はクラスの人気者。
僕なんか釣り合わないことはわかっているつもりだった。
周りからも、『諦めろ』『夢にも程がある』と馬鹿にされた。
でも僕に優しくしてくれた君を忘れることなど、
弱い僕には到底できない行為だった。
君への想いを拗らせていた時、君が声を掛けてくれた。
「放課後、教室に残ってくれない?」
何か言われるのだろうか。
それとも何かを押し付けられるのだろうか。
こんな僕に話し掛ける用途など、それくらいしか思い付かない。
でも、もしかしたら。
その『もし』に賭けることにした。
放課後。
クラスの奴等は部活へ向かった。
いつもの騒々しさのない教室には、ただ一人。
寂しさを纏った、男子生徒だけ居た。
嗚呼、やっぱり悪戯だったか。
好きな人に仕掛けられるなど、僕も不幸な者だ。
否、これは神様からのお告げなのかもしれない。
『お前には釣り合わない。諦めなさい。』
神様もそう言いたいのかもしれない。
神様にまで見捨てられるとは。
本当僕は不幸な者だ。
君にはもう『もし』なんて賭けたりしないよ。
僕の想いが枯れかけていたところだった。
「ごめん!私今日、日直だったからさ。」
遅れてごめんね!と僕に言った。
そして君は僕の前に来た。
少しの沈黙の後、君は言った。
「私ね、あと1ヶ月しか生きられないの。」
僕は驚いた。
ただ君は、そんな僕に目もくれず続けた。
「××病って言ってね。治る確率がとても低い病気なの。」
「...なんで僕にそのことを話したの?」
「わかんない。誰かにこの事知って欲しかったのかも。
余命がわかってたら、笑顔で...笑って送ってくれるかなって。」
彼女が言うにはこうだ。
自分が死ぬ時は笑顔で送ってほしい。
笑顔で送ってくれるほうが嬉しいから。
そして最後にこう言った。
「最後までわがままでも、笑顔で許してほしいから。」
その時、君は空を見ていた。
僕は君の目を見つめた。
よく見ると、涙がたまっていた。
それを見て、僕はこう言った。
「どんなにわがままな君でも許すよ」
君は死ぬのが本当は怖かったんだ。
でも周りを心配させない為に我慢してたんだ。
そんな君に掛ける言葉はあっていたか分からない。
でも、君のことは忘れないよ。
あの時、君が僕に笑いかけてくれたから。
優しい君のいる空に、今日も言った。
『どんな君でも愛してる。』
君は覚えてる?
あのとても暑い夏の夜。
沢山の綺麗な星が輝く夜。
星空の下で言ったことを。
夏と言うのにぴったりな、とても暑い日だった。
君は白いワンピースに麦わら帽子。
まるでアニメの主人公みたいな格好をしていた。
君は僕に言った。
「今日の夜、あの場所に来てね!」
君があまりにも急に言うものだから驚いたよ。
でもその癖はいつものことだ。
僕は驚いたことがばれないよう、少し間を開けて言った。
「...わかった。」
その時の君は、僕に向かってとても嬉しそうに微笑んだ。
あの場所とは、僕と君がいつも夜に会う公園のことだ。
向日葵が咲き誇る公園。
いつも賑わっている公園。
しかもこんな真夏の公園だから人が多い。
でも夜になると、昼とは違った公園が見える。
中学生の僕には、その公園がまるで裏の顔のように見えた。
夜になった。
公園は誰も居ない。
綺麗な星や月が、公園を静かに照らしていた。
数分後、君が来た。
昼に見た格好ではなかった。
雰囲気がいつもと違う。
いつもの笑顔じゃなかった。
先に口を開いたのは君だった。
「...ごめんね、こんな夜中に。」
「いや、大丈夫。」
君の声は、凄く冷たかった。
「今日はね、伝えたいことがあったの。」
心臓の鼓動が速く感じた。
とても嫌な気配がした。
君のその言葉の続きを聞きたくない。
「...。」
思わず黙ってしまった。
君から言われた言葉は、僕が想像していたもの。
まさにそれだった。
「ずっと前から好きだったんだ。」
その言葉が僕の頭の中で木霊する。
どういう意味か聞こうとした。
君はそれを遮った。
「付き合ってほしいとは言わない。
最後に伝えたかっただけだから。」
君はそう口早に言って、帰って行った。
それから数日後、君は死んだ。
死因は“自殺”だったらしい。
その知らせを聞いた時、僕は君が言ったことの意味がわかった。
君が言った“最後”って、この事だったんだ。
それを知っていたら、僕も伝えられたのに。
あの公園のように、君の裏を知っていたら。
「君が好きだ」って、言えたのに。
とても後悔した。
後悔しても、君は戻ってこない。
この想いは伝えられない。
そんなことわかっているのに。
嗚呼、僕っていつまでも引きずるような奴だったんだな。
君が死んでから十年も経ってるのに、未だに忘れられない。
君のことを。
愛していた君のことを。
僕を好きと言ってくれた君のことを。
世界は君を忘れた。
もう過去のこと。
そんな言葉にまとめてしまった。
でも僕は忘れない。君のことを。
そうすれば、君は僕の中で生き続けるから。
いつか君に、面と向かって言いたいことがあるから。
だから今日も君に届くかなって、君と居た公園の星空の下で呟いた。
『いつまでも好きだよ。君のことが。』
お題【星空の下で】
タイトル【今日もまた】