よしだ

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7/11/2025, 5:23:35 PM

ここ数日の記憶が無い
あるのは鈍く痛む頭と
鉛のように重たい身体だけ

思い返そうとしてみても
するりと軽く躱されて
本当にそこには何もないみたいだ

霧が隠しているよう、
なんていうけれど
ここにはその霧さえない

けれど、
確かに冷蔵庫の中身は減っていて
洗濯物が増えていて
カレンダーの日付は進んでいる

写真を見た

きっと置いてきたのだ
私の心、私の記憶
私の一部を

やむにやまれぬことだったのかもしれないし
愛ゆえに誰かにあげたのかもしれない
もしかしたら、ただのうっかりかもしれない

ただ、私にはその記憶さえないから
ぽっかり空いた空白の私を想って
影とと共に踊りながら
少しの寂しさと晴れやかさと、
切り取られた痛みを棺に入れて
ささやかな弔いをすることにしたのだ

再会は望めないことを知ったから
再会を望まない心を見つけたから

「心だけ、逃避行」

7/9/2025, 10:57:42 PM

この手紙が
あなたに届いてほしいとも、
ずっと届かずにいてほしいとも
思いながら投函する

この言葉が
あなたの心に伝わってほしいとも、
けして伝わらずにいてほしいとも
思いながら告げる

それは恋の臆病から来るものでもあり
それは愛の許容から来るものでもある

それは現実の否定をすることでもあり
それは恐れからの逃避をすることでもある

そして、
それは離別を否認するものでもあるかもしれない

この手紙が返ってきたとき、
そこにはきっと、喪失のみが残されている

「届いて……」

7/8/2025, 12:27:28 PM

あの日、私が目にしたすべては
既に記憶の地平線を越え
遥か彼方にある

思い出そうとすれば浮かぶのは
一枚の写真のようなイメージ

それは真実
私の瞳に映った景色ではなくて、
過去の囁きが輪郭を描き
今なお残る感情が色をつけたもの

私は、過去の私を
額縁を通して見ている

あの景色は、
私の記憶と感情が作り出した
私の未練のスケッチなのだ

「あの日の景色」

7/7/2025, 3:30:51 PM

なにかを願えるだけの
希望と余裕があること
それが続いてゆくこと

「願い事」

7/6/2025, 7:33:52 PM

彼女たちは星よりも大きくて、
宇宙を海のように泳ぎ歌う

無限にも思えるその生を
ほほ笑みを浮かべ独り生きる

そして時折、
遠く離れた同胞に、
歌う鯨のように話しかけるのだ

白い彫刻のような姿の彼女
瞳をとじて、夢見る少女のように漂う

そして一等彼女たちが愛するもの、
それはラジオ
気に入ったラジオを放送する星の周りを
ぐるぐる回って、そして
同胞に中経するくらいには好き

色んな歌と、色んな夢をみられるから
色んな命と、色んな世界を知れるから
ソラにはそんなくじらたちがいるのだ

「空恋」

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