ここ数日の記憶が無い
あるのは鈍く痛む頭と
鉛のように重たい身体だけ
思い返そうとしてみても
するりと軽く躱されて
本当にそこには何もないみたいだ
霧が隠しているよう、
なんていうけれど
ここにはその霧さえない
けれど、
確かに冷蔵庫の中身は減っていて
洗濯物が増えていて
カレンダーの日付は進んでいる
写真を見た
きっと置いてきたのだ
私の心、私の記憶
私の一部を
やむにやまれぬことだったのかもしれないし
愛ゆえに誰かにあげたのかもしれない
もしかしたら、ただのうっかりかもしれない
ただ、私にはその記憶さえないから
ぽっかり空いた空白の私を想って
影とと共に踊りながら
少しの寂しさと晴れやかさと、
切り取られた痛みを棺に入れて
ささやかな弔いをすることにしたのだ
再会は望めないことを知ったから
再会を望まない心を見つけたから
「心だけ、逃避行」
7/11/2025, 5:23:35 PM