よしだ

Open App
9/7/2025, 5:12:10 PM

カーテンも閉まっていないのに
幽体の水に沈没したかのような
薄暗い部屋の中

いつもおしゃべりな口を
真一文字に結んで
雨の音に沈む君

リビングのソファに身を投げ出して
時々眉をしかめながら
瞳を閉じて晴れを待つ

まるで冬の蛹のように

火のついていない暖炉が
滲むようにつめたくて

ああ空よ早く
君のために晴れてくれと

「雨と君」

8/30/2025, 6:00:14 PM

ふたりって、
人が二人いるってこと

だのに、とっても特別な響きがするのは
きっとたくさんのロマンチックと
たくさんのドラマがあったからなんでしょね

もしかしたら、
人はふたりからはじまるのかもね
それも、ずっとずっとむかしから

「ふたり」

8/13/2025, 3:12:59 PM

言葉にならないものは
文字にもならぬのです。

けれどそれじゃあ味気がないから
それらそれらの輪郭の
小さいかけらと砂粒を
ぺっとここに置いておきます。

例えば
寝入る前の夢が染み出す心地

例えば
痛みと不快感のあいだの頭痛

例えば
抱きしめられた時の熱の波動

例えば
どうにもならない不安の痒さ

例えば
本当に美味しいものの美味さ

例えることは出来るかもしれませんね。

けれど本当に伝えたいことは
これじゃあ伝わらないのです。


「言葉にならないもの」

7/26/2025, 2:47:47 PM

私に勇気があれば、
とっくのとうに
あの世にいるはずなので
これはまだなんとか私が生きている
弱虫の証なのです

「涙の跡」

7/16/2025, 5:42:17 PM

私と同じ顔で、私と同じ性別で、
私と同じような年頃のひとが、

見知らぬ家で、見知らぬ人と微笑みあって、
見知らぬ赤子を抱いているのを見た

空に舞うほこりが
光を受けてきらきら輝く

まるで
スノードームの中の世界のような
そこが

過去にも未来にも、そして
平行世界のようにも見えた

西日の光で目が覚めた
狭いワンルームの小さなソファで

夢の中の彼女をおもう

私の胎に宿ることのない命をもつあのひと
私の隣には居ない人と暮らすあのひと

幸せそうだった

でも、うらやましいとはちっとも思わなかった

「真昼の夢」

Next