よしだ

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7/3/2025, 4:18:38 PM

「どこか、遠くへ行きたい」
ぽつりと零れ落ちた
小さな祈り

「どこへ行きたいの?」
そう、あなたに尋ねてみても
瞳は茫洋として
空を見つめるばかり

たぶん、あなたは
そこに行きたいのではなく、
そして
遠くへ行きたいのでもないんだね

ここから逃げだして
そして
ここから遠い遠い地でならば
安寧を得られると信じたいんだね

だけどだめだ、
その祈りは届かず
その願いは叶わないだろうさ

だって、あなたの敵は
あなたの心にこそあるのだから

「遠くへ行きたい」

7/2/2025, 5:45:39 PM

月光の下、鈍く光を乱反射する
青く透明な記憶のかけら
その残響は虚しく響き
未来は未だ過去に囚われる

太陽を失った、私たちの世界
終わりは近く、祈りは絶えた

それでもまだ、
遠い夜明けを夢見て走る
あなたの松明のような光!
それは私たちの唯一の恒星だった

私は過去を夢みているのだろうか
それとも
未来を時の隙間から垣間見ているのか

蒼い蒼い月の海に
クリスタルでできた記憶の砂浜

私はひとり、波打ち際で
静かにその時を待っている

「クリスタル」

2/4/2025, 6:09:02 PM

たとえば、
地に落ちて
泥まみれの羽で
冷たい雨に打たれ震える時でも
綺麗な
綺麗な
綺麗な景色だけみていたい
目を見開いた先
灰色の空ばかりでも
目を閉じた時瞼に映るのは
鮮やかな
鮮やかな
鮮やかな永久の花園
そういう夢がいいの
そういう夢がいいの
そういう息を吐くの

「永遠の花束」

1/29/2025, 8:29:38 PM

日陰者って
わかってるんだよ。
言わなくたって
わかってる。
日向にあこがれて
でもみているだけの
日陰者。日陰者。
近づいたら
追い出されてしまうんだろな。
資格なんてないんだものね。
罪人だから。罪人だから。
見下ろした自分。
まっくろな自分。
顔を上げた先
白く輝く日向達。
いいないいな、
ここは寒いから
ねえ、仲間に入れてよ。
服を分けてよ。
拒まないでよ。
焼けてもいいよ。
焦げてもいいよ。
灰になっても
踊っていたかった。
夢を見ていた、
白い夢を。
生まれながらに
日陰者。日陰者。
白に焼かれた日陰者たち。

「日陰」

1/28/2025, 1:12:58 PM

まだ少し寒い晴れの日、
二人で海沿いを歩く。
少し先を歩くあなたの後ろ姿。
振り返って、今日、風が強いねと笑う。
太陽がまだ低くて、
朝の光がちらちらと波間に煌めく。

些細な日常が急に愛おしくなって
口元が緩んだ。

なんだか照れくさくなって
両手で帽子のつばを引き下ろして顔を隠した。
あなたが、どうしたの、という
なんでもないよといったけど、
不思議そうに見つめるあなたに
ああどうしよう、と思った。

風でワンピースのスカートが
バタバタとはためく。
波の音と、海のにおい。
すこし寝癖のついたあなた。
こんな日が続けばいいと
思ったいつかの日。

「帽子かぶって」

いやいやという
ちいさいあなたに
ちいさな麦わら帽子をかぶせた
いやなのね
すぐにとってしまって
あわれな帽子は床にたたきつけられた
制服着なきゃ、幼稚園に行かれない
20分後に出ないと間に合わないのに
あれもこれもまだ済んでないのに
ああ、ブレザーも脱いでしまった
おねがい、おねがいだから
帽子をかぶって!

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