桃色の衣が良く似合う君
おちゃめで、悪戯好きで、人が好き
そしてなりよりも、あいらしい
みんなそんな君のことが
大好きだった
僕たちの世界には、
君の足跡でいっぱいだ
触れるたびに、
君の後ろ姿が
うれしそうに笑う姿が
揺れる薄布越しに見えるようだ
最後の夜
妖精のようにうつくしい君が
「花嫁衣裳」の純白に包まれて
花と散った夜
今でも、風に吹かれる薄桃色を見ると思い出す
君の理由はあの夜に教えてもらったけれど
君の心は最後までわからなかった
いつか僕たちは君の遺志を乗せて
終点へとたどり着くだろう
その時までに、どうか
君の願いが成就しますように
僕たちの宿願が果たせますように
「風のいたずら」
朝焼けが海の肌を炎のように照らす日に
私は生まれて初めて太陽と空
そして風を知った
ちらちらと光る水面が、
徐々に空へと昇ってゆく太陽が
本当にほんとうに綺麗だった
私はひとり、
海に抱かれながら
夕暮れが来て、
そして星が輝く頃まで
じっとその模様を見ていた
帰る時、悲しくて悔しくて
まっくらやみの海の底に落ちながら
私は泣いたの
なんだか胸が潰れるような気持ちがしたから
しばらくして、私は恋をした
特別美しいわけでも、
頭が良いわけでもなかったけれど、
かわりにあたたかい心があって
とても優しいひとだった
でも、私には恋をする自由がなかった
ひどく父に怒られた夜
宮を飛び出して、
そのまま流星のように海を昇った
ざばんと顔を出して、
身も世もなく泣いた
きらきら光る星が憎たらしくて
涙に滲んだ空はぼやけていった
その時初めて知ったのだ
涙の味と、その色を
あれから、どれくらい経ったのでしょうね
初めて海の外を見にゆく孫娘を
精一杯飾り付けてやって
彼女がどんな顔をして帰ってくるのだろうと
手を振り送りながら思う
そして、叶うなら
どうかすてきな恋をして欲しいと思うのだ
「透明な涙」
今度こそ、
きっと間違えずに貴方のもとにゆくから
今度こそ、
きっと貴方を抱きしめてみせるから
あの夜までは分からなかった
あの夜までは知らなかった
あの夜までは見ないふりをしていた!
そうして、永遠が訪れた
けれど今、ふたたび時が動き出した
今度こそ間違えはしない
帰る場所はそこだった
貴方のもとへ
あなたのもとへ
「あなたのもとへ」
そっとねこを置く
「そっと」
まだ見ぬ景色より、
かつて見た景色に焦がれるのは
人の性なのだろうか
つまらぬ感傷だと知っていても
焼き付いて消えない記憶の欠片
後ろを向いて歩くのだ
あなたを見つめて歩くのだ
「まだ見ぬ景色」